パイソンズの究極箱は笑えぬ時勢下の妙薬、廻し出したら停められない。

 〈ゴルゴ・ビギナーはこれを読め!!〉の惹句に素直に導かれ、ワイド・ポケット版「ゴルゴ13 BEST OF 200 伝説の始まり」を先日買った。相前後して「空飛ぶモンティ・パイソン コンプリートBlu-ray BOX」の本稿依頼が舞い込んだ。遂に200巻を迎える前者の第1話掲載号は68年11月の発売、〈世界を変えたBBCの伝説番組〉である後者のスタートが翌年10月だから、いずれも読む/観る機会を逸してきたじぶん(ゲバゲバ90分!世代)にはコロナ禍での凡そ半世紀めの邂逅となった。

グレアム・チャップマン 『空飛ぶモンティ・パイソン コンプリート Blu-ray BOX』 ツイン(2020)

 待望の初Blu-ray化(HDリマスター)/2種類の日本語吹替&貴重なアウトテイクなど本邦未公開の映像特典を満載/120頁の特製ブックレット封入で〈究極・最終・完全版〉を謳うパイソンズの7枚組……気分は〈(半世紀)遅れてきた青年〉である還暦過ぎ初心者にとってこれ以上、垂涎のオトナ買い商品はない。締切までの制限時間内、BOX監修者の一人でパイソンズ関連書籍も数多もつ須田泰成氏の文献も可能な範囲で目を通し、沢山の教えを得た。フォークランド紛争下の救出時、相手魚雷の餌食で沈みゆく駆逐艦の乗組員らは映画「モンティ・パイソン/ライフ・オブ・ブライアン」の挿入歌を口ずさみ、いつも人生の明るいほうを見て生きていこう!(♪Always look on the bright side of life)と、自船と惜別した。「やっぱりイギリスの人間にとってのモンティ・パイソンは、掛け算の九九くらい基本なのかもしれない」とは、ヴォードヴィリアン・松尾貴史の至言だ。「生まれ変わったら今度はパイソンズのメンバーになりたい」とのレノン談は有名だが、昨年から朝日新聞紙上で訳:柴田元幸の「ガリバー旅行記」が始まり、ディケンズの半自伝小説を映画化した「どん底作家の人生に幸あれ!」も現在公開中。ブレイディみかこの推薦文には〈モンティ・パイソンが好きな人はきっと気に入るだろう〉とある。コロナ禍の五輪よりも〈英国のお家芸〉が妙薬か……パイソンズの作品集には人類社会の現在・過去・未来、その総てが描かれている(♪迷い道くねくね)。長く曲がりくねった笑い道、24,000円+税は破格だ!