それまでのタフなブリティッシュ・ロック路線から一転、ポップでカラフルな音作りを追求した前作『In Your Own Sweet Time』(2018年)には彼らも大きな手応えを感じていたに違いない。この6作目ではその前作で打ち出した方向性に、さらに50年代風とも60年代風とも言えるレトロなポップ・センスが加えられている。女性コーラスをフィーチャーしたフィル・スペクター・サウンド風の表題曲を1曲目に持ってきたところにバンドの自信が窺える。ストリングス、ホーン、ピアノの音色をふんだんに使いながら、ノーザン・ソウルを含め、フラテリスはビートルズ以前のポップスを現代に蘇らせようとしているかのようだ。勢いに頼らず持ち前のポップ・メロディーを輝かせた楽曲の数々にバンドの成熟を感じる。