2019年11月29日、東京文化会館小ホールで聴いた菊地裕介が弾くリスト編曲ピアノ独奏版“幻想交響曲”は衝撃的だった。特異な作品を一層特異に再創造した怪物を曲芸的にやらず、きめ細かく諸要素を解きほぐすアプローチが冴え、ベルリオーズとリストの〈仕掛け〉にベートーヴェンのエコーを感じるかと思えば、ワーグナーやドビュッシーへ繋がるものが浮かんできた。あれから約2年を経て、待ち望んだ同曲のセッション録音がリリース。タッチや音色の選択がより掘り下げられ、心揺さぶられる。リストの“「イデー・フィクス」~ベルリオーズの主題によるアンダンテ・アモローゾ”をカップリング。