コラム

サントリー芸術財団コンサート 〈作曲家の個展2014〉 川島素晴

川島素晴の作品は、ライヴで聴く/観るべきなのだ!

サントリー芸術財団コンサート 〈作曲家の個展2014〉 川島素晴

 シリアスの背中にもウィットが、笑いの背中にも真摯が――その表裏一体の高速回転を見る思いがする。現代音楽界を駆ける鬼才(にしてユーモアを愛してやまない)作曲家・川島素晴は、デビュー期から《演じる音楽》を提唱してきた。音楽は音をつなげるだけでなく、演奏行為のつながりでもある、という考えから、彼の作品では〈音〉と〈アクション〉が不可分のものであり続けてきた。しばしば、突拍子もない演技/演奏に笑いも起こるわけだが、〈真摯/笑い〉〈音/演技〉‥‥彼の作品は、ライヴで聴く/観るべきなのだ。

 今秋のサントリー芸術財団《作曲家の個展2014――川島素晴》コンサートは、過去の大作から近作・新作まで揃えた作品展。川島の創る音楽体験、その多彩な可能性(とそれを支える一貫したもの)を楽しめるだろう。‥‥そう、現代音楽には珍しく、川島の作品は「楽しめる」。容赦ない特殊奏法に溢れた演奏至難な作品ばかりだが、先鋭的な語法もそれと感じさせない。こちらが眉間に皺を寄せて構えていても、思わず表情を崩される仕掛けの説得力は凄い。知的でしなやかな冒険心と、卓抜な筆致。今回の個展でも再演される《Manic-Depressive III》(1999年/芥川作曲賞受賞記念委嘱作品)など、ショパンからメシアンに至るまで近現代のピアノ協奏曲からの断片が渦巻き、凝縮されてゆく過程だけでもう可笑しいが、多彩な変容がひきだされ、躁と鬱の双極を混ぜてゆく時間‥‥菊地裕介竹島悟史と現代作品に理解深い独奏陣を迎え、才気煥発の作品が蘇る。

 1972年生まれの川島素晴は、東京藝術大学の在学中から鬼才ぶりを発揮。自在奔放なアイディアが教授陣を面食らわせる一方で、国内外で多くの作曲賞を受け、鮮やかに意表を突いて来るユニークな創作の数々は現代音楽界に風穴をあけてきた。

 その彼が追究して来た《演じる音楽》では、〈音〉と〈演技〉が一体になった表現の多彩がみられる。作品には冗談のようなアクションや突拍子もない音も組み込まれるが、その〈笑い〉は、作曲家が綿密に仕組むコンセプトに、聴き手がすっぽりはまってゆくための、滑り台のようなものだ。明快な仕掛けで聴き手をつかみ、〈演奏する〉という行為そのものに、耳(と意識)を引き込んでゆく。音楽の根幹にある〈聴取体験〉をプロデュースする、その上で使う素材はなんでもあり。だから、川島作品は面白い。

【参考動画】川島素晴作曲“インヴェンションIII”パフォーマンス動画

 

 彼の現在進行形も、いい。最近大阪で初演されたばかりの尺八協奏曲《春の藤/夏の原/秋の道/冬の山》(2014年)では、川島の藝大同級生にして、古典から現代まで独創的な活躍を拡げる人気尺八奏者・藤原道山の名前を四季に冠した四楽章‥‥とウィットも組み込みながら、うつろう季節と自然へのオマージュを(奏者の空間的な移動など〈演じる〉要素とともに)幻想的に響かせてみせた。〈音を聴く〉ことと〈音を観る〉ことが巧みな仕掛けの中で一体化し、演奏家と聴き手とを同じ〈演じる時空〉に取り込む川島ワールドの新境地、とも思われた。

 卓抜な楽器法や音色感覚、そして攻め続けるアイディアとは、今回のコンサートで世界初演される〈管弦楽のためのスタディ《illuminance/juvenile》〉(サントリー芸術財団委嘱)でも冴えわたることだろうし、《Exhibition 2014》と題された「仕掛け」も‥‥これは当日のお楽しみだ。

 ちなみに、開演前にはプレトークも開催。つねづね自作についても軽妙的確な解説をきかせる川島素晴が藤原道山と共に、創作と実演の現場をあれこれ語ってくれるだろう。作品に先入観抜きで接するのも面白いが、仕掛けを訊いておくとより楽しめるので、初めてのかたには早めの来場をお薦めしたい。 聴き手と音楽を引き寄せる鬼才の時空へ‥‥これは体験してこそ、だ。

 

LIVE INFORMATION

サントリー芸術財団コンサート 〈作曲家の個展2014〉 川島素晴

作曲・指揮:川島素晴
尺八:藤原道山
ピアノ:菊地裕介
プリペアード・ピアノ:竹島悟史

■Exhibition 2014
■Manic-DepressiveIII(1999)
■尺八協奏曲「春の藤/夏の原/秋の道/冬の山」(2014)東京初演
■管弦楽のためのスタディ「illuminance/juvenile」(2014)サントリー芸術財団委嘱・世界初演

10月6日(月)
開演/19:00 開場/18:00 サントリーホール
プレコンサート・トーク 18:20~
川島素晴 藤原道山(聞き手:白石美雪)
S:4,000円 A:3,000円 B:2,000円 学生:1,000円[全席指定・税込]
※学生席はサントリーチケットセンター(電話・WEB・窓口)のみ取扱い。25歳以下。来場時に学生証提示。

お問い合わせ・予約:
東京コンサーツ 03-3226-9755 http://www.tokyo-concerts.co.jp/
チケット取扱い:
サントリーホールチケットセンター 0570-55-0017
サントリーホール・メンバーズ・クラブWEB http://suntoryhall.pia.jp/
チケットぴあ 0570-02-9999 http://t.pia.jp/〔Pコード:230-399〕

主催:公益財団法人 サントリー芸術財団
協賛:サントリーホールディングス株式会社
助成:芸術文化振興基金
制作協力:東京コンサーツ
チケット発売中

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