結成20周年のタイミングで活動再開を果たし、コロナ禍のなかでありながらライブやリリースなどでその存在感を知らしめたNIGHTMAREが、実に7年ぶりとなるニュー・アルバム『NOX:LUX』をリリースする。今の時代のなかで鳴らされるべき、NIGHTMAREらしさが詰まった待望の一枚、その深層に迫る。

NIGHTMARE 『NOX:LUX』 littleHEARTS.Music(2022)

2019年10月に開催されたイベント〈伊達漢祭〉にて2016年以来となる活動再開を突如発表し、2020年2月には横浜アリーナにて20周年記念ライブを開催、復活の号砲を放ったヴィジュアル系バンドNIGHTMARE。その直後から世界を襲った新型コロナウィルスの影響もあって、海外公演を含むライブの中止に見舞われながらも20周年イヤーである2020年、そして昨年と変わらぬその姿を見せつけた。また各メンバーセレクトのベスト盤5枚をはじめ“ink”“cry for the moon”“Sinners”と新曲もコンスタントにリリースしてきた。そうした復活後のNIGHTMAREの活動を総括したアルバムが本作『NOX:LUX』である。オリジナルアルバムとしては2015年発表の『CARPE DIEM』以来実に7年振りとなるが、そのブランクをまったく感じさせない、というより復活後の激情をそのまま詰め込んだかのような一枚となっている。

本作の幕開けとなる“Night Light”は、美しくも退廃的なムードのミディアムナンバー。はやる気持ちを抑えるかのようなバンドサウンド、そしてYOMIのボーカルが印象的なオープニングだ。その余韻のまま“Re:Do”へと一気に加速。ギラギラしたシンセの鳴りも印象的な、実にNIGHTMAREらしいキャッチーな一曲から、先行シングル“cry for the moon”へと続く冒頭の流れはお見事で、改めてNIGHTMARE復活を
感じさせるスリリングな展開だ。そこからピアノも含む耽美なミディアムナンバー“Last note”を挟んで、ダンサブルな“RAD DREAM”とアグレッシブな中盤へと突入していく。本作の収録曲が発表されるやいなやファンの間でも話題を呼んだ、人気のヘドバン曲第3弾“極上脳震煉獄・弎式”でファストかつスタイリッシュにキメる。

バンドのヘヴィネスとメロディアスなピアノのコントラストが妖しくも美しい“Deadass”、空間的なアルペジオと切ないメロディが光る“レゴリスの墓標”と、メロディアスな曲が続いたあと、バンドとしてはひさびさの新曲となった“ink”と続くこの後半の流れも実にらしい。ここからがまた怒涛の展開で、シャープな切れ味がゾクゾクする“ピラニア”、ベースのスラップやスパニッシュ風味のギターなど目まぐるしい展開が楽しい“シュレーディンガーナイフ”とそのサウンドの多彩さも激化、そのテンションを保ったまま、最新シングル“Sinners”へと続いていくクライマックスは極上のひとことだ。

そしてアルバム『NOX:LUX』も終盤、数々の激情を見せたあとに鳴り響くのは、美しくもどこか物悲しさを感じさせる“Day By Day”の旋律だ。それは何か、彼らの復活と同時にこの世に訪れてしまった悲劇を見つめるかのようで、この2分余りの曲が持つ虚無感のような、しかしその先へ残されたかすかな希望が合わさった独特のムードのまま、アルバムは最後の“Darkness Before Dawn”へとつながっていく。すでに最近のライブなどでもファンには知られたこの曲は今回〈-NOX:LUX ver.-〉として壮大に、そしてポジティブなエネルギーをもってこのアルバムを締め括った。そんな感動的なエンディングを聴いて、ふたたび“Night Light”からこのアルバムを聴き直すと、改めてNIGHTMAREが持つバラエティ豊かなソングライティングや聴く者を楽しませるエンタメ性、それらが実に巧みな流れをもってオープニングからエンディングまで緻密な流れを持って組み立てられていることがよくわかるはずだ。20年以上のキャリアが成せる円熟の極み、そしてNIGHTMAREの帰還を改めて強く実感できる、そんな充実のアルバムである。