Number_iが1stフルアルバム『No.Ⅰ』をリリースした。豪華クリエイターらが手がけたアクロバティックな楽曲群、平野紫耀・神宮寺勇太・岸優太の圧倒的なポテンシャルを堪能できる本作は、2024年の音楽シーンをひっくり返してしまうような驚きと興奮に満ちている。そんなアルバムの本質に迫るべく、和田信一郎(s.h.i.)に『No.Ⅰ』を聴き込んでもらった。 *Mikiki編集部

Number_i 『No.Ⅰ』 TOBE MUSIC(2024)

 

『No.Ⅰ』は特別な作品

すべての曲が異なるスタイルで、その並びも落差の激しいものばかりなのに、アルバム全体の流れは滑らかでまとまりもいい。キャリアと地力に支えられた安定感と、なりふり構わない衝動がともにあり、ベテラン感とフレッシュさが美しく両立されている。計算高さと閃きのバランスが絶妙で、徹底的な作り込みと良い意味でのラフさが同居しているからか、余白や行間を活かす不思議な説得力が生まれている。

このような音楽性が乱雑にならず、挑戦的でありながら親しみ深いものに感じられるのは、メンバー全員(平野紫耀・神宮寺勇太・岸優太)の歌声に優れた個性と表現力があり、全曲を貫く強固な芯になっているからだろう。『No.Ⅰ』は何よりもまずこうした〈アルバム全体としての在り方〉が特別な作品で、そしてそれは、Number_iというグループの佇まいにそのまま繋がっている。ひと所に留まらず、それでいて一貫した人となりが保たれる。そうした持ち味と将来性がともに示されているという意味でも、今作はNumber_iにとって理想的な1stアルバムなのだと思う。

『No.Ⅰ』の音楽性を俯瞰して言うなら〈ミクスチャーロックとR&Bをヒップホップ経由で接続する〉みたいな感じになるが、個々の曲調はバラバラで、3枚のEPを並べてシャッフルしたような混沌とした豊かさがある。

“INZM”、“Numbers”、“GOAT”、“BON”はミクスチャーロック寄りのアグレッシブな曲調。また、“なんかHEAVEN”、“ICE”、“JELLY”、“Recipe”、“Blow Your Cover”はソウルミュージックやR&Bを軸としたメロウな曲調。“Bye 24/7”、“透明になりたい”、“iLY”には1990年代のJ-POPやJ-ROCKのエッセンスがある。そして、それらのすべてにヒップホップのビート/グルーヴ感覚が活きていて、全曲を繋ぐ共通点になっている。

こうした音楽性は、いわゆる楽曲派アイドルの最新形とも、Y2K的なものの発展形とも捉えることができるだろう。まず、2010年代にはももいろクローバーZやBiSなどがジャンルを横断するような作品を連発し(いわゆるハイパーポップやその影響下にあるK-POPに先駆けていた感も)、アイドルポップだけでなくJ-POP全般の感覚をも塗り替えてきた。

Number_iの音楽性にもそれに通ずる越境性があり、元来〈ミクスチャーポップ〉的でもあったこの系譜を更新しているようなところがある(こうした系譜はなぜか男性アイドル方面では少数派だったように思う)。