ディズニープラス配信版エンディングテーマを含めた、〈四畳半〉を彩る音楽集
愛すべき四畳半のサーガがアニメーションの世界に帰ってきた。9月14日よりディズニープラスで配信版が、そして9月30日より劇場版が公開された「四畳半タイムマシンブルース」は、作家・森見登美彦の代表作「四畳半神話大系」と、上田誠(ヨーロッパ企画)による戯曲「サマータイムマシン・ブルース」が〈悪魔的融合〉を果たして誕生した作品だ。森見による原作小説は2020年に刊行されたが、そもそも同作が生まれた経緯を辿ると、上田がTVアニメ版「四畳半神話大系」(2010年)のシリーズ構成・脚本を手がけた縁に至るわけで、此度のアニメ化は当然の帰結と言えよう。
サイエンスSARUが制作を手がけ、TVアニメ「Sonny Boy」(2021年)で異彩を放った夏目真悟が監督として陣頭指揮を取った本作。主人公の〈私〉や明石さん、小津、樋口師匠(故人の藤原啓治から引き継いだ中井和哉の演技も素晴らしい)といったお馴染みの登場人物たちが、例の四畳半一間の下宿先を主な舞台に繰り広げる時空を超えた掛け合いは、最早芸術的とも言えるスラップスティックに昇華されており、抱腹絶倒することは間違いない。
本サントラには、「四畳半神話大系」「夜は短し歩けよ乙女」(2017年)といった森見原作アニメの音楽も手がけてきた大島ミチルによる劇伴を収録。録音はブダペスト、パリ、ニューヨーク、東京で行われ、ブルージーなメロディをテーマに据えつつ、オーケストラ主体の豊かなサウンドが中心となっている。中でもヴァイオリンやピアノソロをフィーチャーした楽曲の美しさが際立っており、作中の肝でもある〈私〉と明石さんのロマンス要素を効果的に彩る。また、ディズニープラス配信版のインターナショナルバージョン向けに制作されたEDテーマ“Time Machine Blues”も収録。〈私〉と小津による丁々発止のやり取りを歌とラップの掛け合いで表現した味わい深い佳曲なので、ぜひ耳にしてほしい。