©Sonny Boy committee

この夏を彩る〈SF青春群像劇〉の世界観を個性派アーティストたちが音像化。アジアのインディー・シーンのおもしろさも確認できるサントラが登場!!

 原作/脚本/監督を担うのは「ワンパンマン」で知られる夏目真悟。そして「サマーウォーズ」などを送り出したマッドハウスが制作し、江口寿史がキャラクター原案を手掛ける〈SF青春群像劇〉アニメ「Sonny Boy」がいよいよスタートした。その錚々たるスタッフの布陣と併せて、放送前から大いに話題をさらったのが、さまざまなミュージシャンによる楽曲提供だ。音楽アドバイザーを務めるのは、「カウボーイビバップ」「スペース☆ダンディ」「キャロル&チューズデイ」などの作品で名高いアニメ監督の渡辺信一郎。自身の監督作においても音楽に並ならぬ情熱を注ぐ氏のアドバイスによって、濃厚かつワン・アンド・オンリーなラインナップが実現している。

 「夏目監督から直接電話があり、今回は音楽を普通の劇伴ではなくロック・バンドとかアーティスト系にしたいので、いろいろ紹介してもらえないかということでした。今回はアーティストを推薦しただけで曲の発注とか選曲とかはしていないので、〈音楽アドバイザー〉という肩書きになってます」(渡辺信一郎:以下同)。

 銀杏BOYZによるエモーショナルな主題歌“少年少女”を筆頭に、多くのバンド・サウンドを取り揃えているのが「Sonny Boy」の音楽におけるひとつの特色だろう。ミツメが提供したのは穏やかで叙情的なアンサンブルが紡がれる“夜釣り”。ザ・なつやすみバンドの“Tune from diamond”はキュートなコーラスとスティールパンが飛び交うキュートなナンバーだ。

 「普通の劇伴は極力入れたくないということ、各話ごとにカラーを変えて、それぞれ違うバンドの曲をフィーチャーしたいということ、その話数はそのバンドのみでいきたいということ、などがすでに決まってました。決まってないのはレコード会社だけ(笑)。あと、銀杏BOYZに主題歌をやってもらいたい、という希望もすでにありましたね。最初に夏目監督が、最近好きなアーティストとしてミツメの名前を挙げていて、そういう感じなら手伝えるかなと思いました。まずは台本を見て、ちょっと気怠いチルウェイヴとか、ドリーム・ポップ、シューゲイザー系が合うんじゃないかと思ったり」。

 台湾からサイケなAORを発信する落日飛車(Sunset Rollercoaster)、韓国の宅録作家である空中泥棒という海外勢2組の参加も見逃せないトピックだ。前者はバレアリックな趣の“Broken Windows”やメロウな歌もの“Let There Be Light Again”などの楽曲を、後者は繊細なサウンドスケープを展開する長尺チューン“Yamabiko's Theme”を提供している。さらに、多彩なエレクトロニック・ミュージックを発表している若きデュオ、Ogawa & Tokoroや、サンプリングをベースにして独自のエキゾ音楽を探求するVIDEOTAPEMUSICといった面々も加わり、「Sonny Boy」のもとにはジャンルもスタイルもヴァリエーション豊かなサウンドが出揃うこととなった。

 「最近はアジア系のインディー・シーンがすごく盛況で、ミツメはそういう人たちと交流もあるし、そういった海外勢も入れられるといいなと。あとはバンドばっかりだと変化が欲しくなると思うので打ち込み系も入れたり、といろいろなアーティストを推薦して、最終的には夏目監督が独断で決めました(笑)」。

VARIOUS ARTISTS 『TV ANIMATION「Sonny Boy」soundtrack 1st half』 flyingDOG(2021)

 ここまで紹介してきた楽曲を収めたアナログ限定のサントラ第1弾『TV ANIMATION 「Sonny Boy」soundtrack 1st half』がまずは到着。9月にはその第2弾となる『TV ANIMATION「Sonny Boy」soundtrack 2nd half』と、劇伴音楽を含む全曲をコンパイルしたCDがリリースされる予定となっている。ついに紐解かれた「Sonny Boy」の世界を彩る、個性的で多様を極めたサウンドの数々をこの夏、じっくりと堪能したい。

 「結果的に、ちょっと他にはないバンドやアーティストが揃ったと思うし、内容的にも野心的な作品なんで、仕上がりがとても楽しみです!」。

サントラに参加したアーティストの作品。
左から、銀杏BOYZのニュー・シングル“少年少女”(初恋妄℃学園)、落日飛車の2019年作『Vanilla Villa』(Sunset)、VIDEOTAPEMUSICの2019年作『The Secret Life of VIDEOTAPEMUSIC』(KAKUBARHYTHM)、ザ・なつやすみバンドの2019年作『Terminal』(TNBレコード)、ミツメの2021年作『VI』(mitsume)、空中泥棒の2018年作『Crumbling』(Botanical House)