秀逸盤が続くショーヴァンのモーツァルト後期作品シリーズ、このレクイエム編も、1804年パリという歴史の時間軸を挿し込む興味が尽きない一枚。ナポレオンがノートルダム大聖堂でダヴィッド画でも名高い戴冠式を挙行したのが12月2日。12月21日にはルーブルの隣、サン・ジェルマン・ロクセロワ教会にてモーツァルトのレクイエムがケルビーニの指揮でパリ初演。このパリ初演版には大胆な趣向が加えられ、キリエがなく、ディエス・イレへの入り方、トゥーバ・ミルム冒頭の金管斉奏など、当時のオケ事情による楽器法の変更も含め、異同を確認できる。ショーヴァンのアプローチは非常に緊密、声楽陣含め精度の高い秀演。