高校の同級生2人がMr.Childrenやスピッツをきっかけに〈バンド〉に魅了され、その後、オアシス、ライド、The 1975といった海外のアーティストを経由し、自分たちの手でロック・バンドを結成。J-Pop的なフレンドリーさとUKロックを想起させるサウンドがひとつになった楽曲によって幅広い支持を得ているのが、アラタニと藤本栄太によるGLASGOWだ。

 「僕のコアはミスチルで、藤本がスピッツ。タワレコで買ったCDをお互いに教え合って、いろんなバンドの音楽を聴くようになりました」(アラタニ)。

 「バンドの結成は2010年代の後半なんですが、その頃はLuby Sparksなど日本のインディー・ロック系のバンドにも影響を受けていて。そのうえで僕らはよりポップなメロディーを乗せることを徐々に意識するようになったんです」(藤本)。

GLASGOW 『NOW I SAY』 バップ(2024)

 結成7年目の今春、彼らはメジャーでのファースト・フル・アルバム『NOW I SAY』を完成させた。“SEABISCUIT”(浦和レッズ応援番組「REDS TV GGR」エンディング・テーマ)、“休息充電”(TVアニメ「休日のわるものさん」エンディング・テーマ)を含む本作には、アルバムの題名通り、GLASGOWの〈いま〉が明確に刻まれている。

 「バンド活動もそうですけど、時が経つにつれて、〈どう生きても矛盾を孕んでしまうんだな〉と思うようになりました。昔からGLASGOWを知ってる人がこのアルバムを聴いたら〈前と違う?〉と感じるかもしれないけど、〈これがいまの自分たちです〉と意思表示したかったんですよね」(藤本)。

 リード・トラック“それでも息を”は、〈どうにもならない日々のなかで、それでも前に進む〉という決意を歌ったミディアム・チューン。間奏パートのノイジーかつメロディアスなギターを含め、彼らの個性と現在の表現をダイレクトに反映した楽曲に仕上がっている。

 「アルバム制作の最後に出来た、いちばん新しい曲ですね。藤本の作詞の美学が凄く詰まっているし、まずはこの曲を聴いてほしい」(アラタニ)。

 「歌詞の冒頭は〈僕の脚本はきっと/あなたによって汚されるのでしょう〉。当たり前ですけど人生もバンドも思い通りにはいかないし、自分たちが好きなように生きて、それですべてが上手くいくことはない。そのことを前提にしたうえで、それでも我々はやっていくよという気持ちが入っています」(藤本)。

 “レイトショー”はシンプルに研ぎ澄まされたバンド・サウンドと共に〈エマ・ストーンがさ/僕らを掻き乱すから〉という印象的なフレーズを放つポップ・チューン。もともとは結成当初に制作されたデモ盤に収録されていた楽曲だが、サウンド・プロデュースにアイゴンこと會田茂一を迎え、新たなサウンドへとアップデートされている。また、吉田仁(SALON MUSIC)のプロデュースによる“ながいおわかれ”も本作の聴きどころだろう。

 「“レイトショー”は音の引き算が上手くできたと思います。僕らはどうしても構成や音を詰め込む傾向があるんですけど、アイゴンさんはこちらの意図を理解したうえで、〈本当に必要?〉と意見をくれる。一緒に音を出しながら制作できたこともいい経験になりました。“ながいおわかれ”は最初、韓国のヒョゴをイメージして作ったんですけど、サポート・メンバーと一緒にアレンジしたら、かなり壮大な曲になって。そういう想定外の変化も楽しいんですよね」(アラタニ)。

 「“ながいおわかれ”の歌詞は、いまの自分にとっての〈別れ〉について書いていて。死別、失恋、卒業などいろいろな別れがありますけど、お互いに忘れなければ心の中には存在し続ける。何十億年という地球の歴史を考えれば、別れることなんてたいしたことではないと思うんですよ」(藤本)。

 「バンドをやっているという時点で〈夢が叶っている〉という感覚もあります」(藤本)、「弾き語りのデモを聴かせて、メンバー全員で音を鳴らす。そのやり方がいちばん楽しい」(アラタニ)という二人。ロック・バンドに対する憧憬と美学を持ち続けながら、さらに広いフィールドへと突き進む――そんな光景がもう目の前まで迫っている。

 


GLASGOW
アラタニ(ヴォーカル/ギター)と藤本栄太(ギター)から成る2人組のロック・バンド。2018年、東京を拠点に活動を開始し、同年に発表した2つのデモCDが累計1,000枚以上の好セールスを記録。その後、自主レーベルのwhiteluck recordsを立ち上げ、2020年にファースト・アルバム『twilight films』、2023年にファーストEP『FOOLISH AS THEY MAY SEEM.』をリリース。このたびメジャーからのファースト・フル・アルバム『NOW I SAY』(バップ)をリリースしたばかり。