©Tadayuki Minamoto

節目の10年を迎え、そしてその先へ……

 世界を駆ける唯一無二のハイコロラトゥーラ・ソプラノ。4月には大和高田さざんかホールでだけ開催されたコンサートで、藤木大地(カウンターテナー)のオクタヴィアンと“ばらの騎士”の有名な二重唱を披露して全国のファンを羨ましがらせた。「往年の名ソプラノのエッダ・モーザーに〈あなた、ゾフィーがぴったりなんだからおやんなさい〉って昔、分厚いスコアを渡されたことを思い出します……ちょっとだけ実現できて嬉しかった」

田中彩子 『ベスト・オブ・ハイコロラトゥーラ』 avex classics(2024)

 7月にはデビュー10周年を記念した初のベスト盤が登場。内容はこれまでにリリースした4作からの選りすぐりで構成。1stアルバム『華麗なるコロラトゥーラ』からは難曲“夜の女王のアリア(モーツァルト)”と“春の声(J.シュトラウス2世)”をセレクト。「万人にコロラトゥーラの超絶技巧をアピールできるキャッチーな楽曲。今はもっと上達しているはずですが、当時の初々しい気持ちが詰まっていて〈尊い〉です」

 2017年発表の2nd『ウィーンの調べ ~華麗なるコロラトゥーラ2~』からは“アヴェ・ヴェルム・コルプス(モーツァルト)”や“アヴェ・マリア(シューベルト)”など計4曲。「ウィーンでの修業時代、歌う機会と日々の糧を与えてもらった教会への感謝を込めた、宗教音楽を中心としたアルバムでした」

 2019年の3rd『VOCALISE』からはラフマニノフ作曲の表題曲に加えて“ラ・カンパネラ(リスト)”や“月の光(ドビュッシー)”といったピアノ演奏で知られる名曲も。「馴染みのある名旋律を楽譜はそのままで、声を楽器のように駆使して演奏することに挑戦したもの。この頃から〈私らしさ〉をどんどん追究するようになりました」

 そしてまだ記憶に新しい「人生、楽しく行こう!をモットーに、改めて〈遊び心〉を忘れずに日々を生きることを歌で宣言したかった」という昨年の第4作目『Play Coloratura』からは、バッハやヘンデルのアリアなどに加えて〈アヴェ・マリア(プライズマン)〉のような現代曲からチック・コリアの書いたジャズ・ナンバーのカヴァーも。「音楽に限らずジャンルを超えたコラボは今後も続けたい。9月からの10周年記念リサイタルではこれら過去の曲だけでなく、未来の自分に想いを馳せた新曲も披露しますのでお楽しみに」

 近年は世界最大級のエネルギー会社JERAとの対談など、よりグローバルな視点も話題に。「時代の流れに敏感でいたい。冒険好きな性格ですので、どうか見守ってやってくださいね」

 


LIVE INFORMATION
田中彩子デビュー10周年記念リサイタル
春の声 夜の女王のアリア~田中彩子 華麗なるコロラトゥーラ

2024年9月16日(月・祝)長野・八ケ岳高原音楽堂
2024年9月27日(金)北海道・札幌コンサートホールKitara 小ホール
2024年10月5日(土)愛知・豊田市コンサートホール
2024年10月27日(日)大阪・住友生命いずみホール
2024年11月2日(土)宮城・ホワイトキューブ コンサートホール
2024年11月30日(土)山口・防府市のアスピラート
2024年12月8日(日)京都・京都府丹後文化会館
2024年12月13日(金)東京・紀尾井ホール
2024年12月15日(日)福岡・福岡シンフォニーホール
2024年12月25日(水)東京・紀尾井ホール ほか
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