人々の心を結び付ける、音楽のポジティヴなエネルギー
18歳からプロ活動を開始。これまでに17枚のリーダーアルバムを発表するほか、パット・メセニー(ギター)やボブ・ジェームス(ピアノ/キーボード)ら数多くのトップ・アーティストたちから重用され、400枚超のアルバムに参加。世界的ドラマーのウォルフガング・ハフナーが新作『Life Rhythm』を発表した。ジモン・オスレンダー(ピアノ/オルガン/キーボード)&トーマス・スティーガー(ベース)を擁する彼のレギュラー・トリオを中心に据え、ドミニク・ミラー(ギター)やビル・エヴァンス(テナーサックス/ソプラノサックス)、ニルス・ラングレン(トロンボーン)らの盟友を迎えて作り上げた同作に込めた思いを聞いた。
「『Life Rhythm』のプロジェクトがスタートしたのは、2023年に発表した前作『Silent World』のツアー中だ。コンサートのサウンド・チェックの時にエンジニアから、シンバル類よりもドラムセットをメインにしたプレイを聴いてみたいな、という提案を受けてやってみたところ、とても新鮮なグルーヴが生まれることに気付いた。また同時期にバイエルン・アルプスのシュロス・エルマウという都市で僕が初めて開催したソロ・コンサートもきっかけのひとつ。複数のドラム・セットやループ、エレクトロニクスを用いて行なったソロ演奏は大変ではあったけど大きなインスピレーションを得ることができた。それらを発展させようと思って始めたのが今回のプロジェクト。アルバム・タイトル曲“Life Rhythm”はその典型的なものだ」。
前作『Silent World』のツアー中に生み出されたという『Life Rhythm』。しかし『Silent World』が、パンデミックの世界に訪れた静寂と安らぎを描いた作品だったのに対して、『Life Rhythm』は、広々とした世界が広がる“Open Land”や、中近東音楽とファンクをフューズさせた“Desert Move”など、躍動感と高揚感が溢れるアルバムとなっている。
「このアルバムで最も大切にしたのは、ポジティヴなエネルギーを生み出すということ。COVID-19禍も終わり、僕たちはようやく解放された。ところがそうした安息も束の間。世界中のあちこちで紛争が起こり、TVやSNSからはネガティヴなパワーが押し寄せている。そんな中で僕たちにとって必要なのが、心を落ち着けてポジティヴなマインドを保つということじゃないかな。ポジティヴであるというのは、すべてを受け止めたうえで前に進むこと。その点でポジティヴとラヴは同じものなんだ。このアルバムが人々の心を結び付けるものになるよう心から願っている」。