既にサティやセヴラックについての評論を発表している著者が、〈十年越しの大仕事〉としてモンポウ(1893~1987)の本格評伝を上梓した。ピアノ曲“静寂の音楽”で知られるスペイン、カタルーニャ出身のモンポウは内省的で、静謐な作風で知られるが、日本語文献は極めて限られていた。著者は現地に赴き図書館に保管された膨大な一次資料にあたり、自らの博識と結びつけながら本書をまとめている。内容的には研究書だが文章に固さが無く、サティやセヴラックなど過去の研究と結びついた〈発見の喜び〉が迸っており、モンポウの激動の人生とともに、小説を読むような楽しさに満ちている。