タイトルの〈梨の形をした〉は、サティの作品名に由来する(〈洋梨〉には〈まぬけ、うすのろ〉との意味がある)。ここでは〈私の名前はエリック・サティである、皆と同じように〉を始めとする彼の謎めいた〈言葉〉から、サティの本質を読み解こうとしている。彼の〈言葉〉は譜面上(歯が痛い鶯のように、非常に〈午前9時〉的に……)や評論、千通超の手紙、4千ものメモなど膨大に残されたが、著者は彼の性格や思想を象徴する〈言葉〉を30選び、90以上の参考文献と自身の博学を駆使し、珠玉の一冊に仕上げている。30の〈言葉〉の並びには流れがあり、冷静でいて熱いサティ論に誰しも惹き込まれてしまうことだろう。