奏人心(読み:そうとしん)は福岡県下の同じ高校に通う同級生、永松有斗夢(ベース/ボーカル)、山路あげは(ギター/ボーカル)、今橋一翔(ドラムス)が2年生の時に結成。永松有斗夢と今橋一翔は楽器初心者ながら、〈福岡県高校軽音新人コンテスト〉で優勝するなど早い段階で頭角を現し、その噂は高校生コミュニティを超えて、福岡のライブハウスシーンにも届くように。今年の春に3人は高校を卒業し、その勢いはさらに加速。このたびフォーライフミュージックエンタテイメントとHAPPY HEADS MUSICによるニュープロジェクトの第1弾アーティストとして、デビューEP『SEARCH感受YOUTH』をリリースした。
弦楽器は直アンプ、歪んだボーカルにタフなドラムによる直球一本勝負。それでいてバックグラウンドは実に豊かで、聴けば聴くほどにさまざまなレイヤーが見えてくる楽しさもある。オリジナルパンク~1990/2000年代のTHEE MICHELLE GUN ELEPHANTに通じるような系譜、1990年代のオルタナティブロック、2000年代のロックンロールリバイバル、青春パンクなど国内外さまざまなロックからの影響が混ざり合うその音楽性は、すでに異彩を放ちつつまだまだ粗削りな発展途上、すなわちどこまで飛んでいくのか、楽しみで仕方がない。
今回はメンバー全員に集まってもらい、バンドの成り立ちやそれぞれのルーツ、EPの魅力、福岡のシーンのこと、そしてバンドが目指す未来などについて、じっくり話を訊いた。
どうにもならない気持ちを自分の言葉や音で叫ぶバンドをやろう
――奏人心はどのようにして結成されたのですか?
永松有斗夢「3人とも同じ高校で、僕とあげはは軽音サークルのメンバーでした。当初はロックが好きな人も、オリジナル曲を作って演奏する人もおらず、J-POPやボーカロイドの曲をうまくコピーできたら満足、みたいな人の集まりで。僕ら2人はそこにフラストレーションを感じていて、オリジナル曲のバンドを組んでそれが当たり前だというムードに変えたかったんです。そこでドラムに未経験だけどおもしろそうな一翔を誘って、というのが奏人心の始まりですね」
山路あげは「サークルに入ってしばらくの間は、私たちも周りに合わせてじゃないですけど、andymoriや、グリーン・デイなど、好きなバンドの曲をただコピーするだけの日々でした。でも、どうしてもオリジナル曲をやりたいという気持ちが抑えられなかったんですよね」
有斗夢「僕らはandymoriもそうですし、銀杏BOYZやTHE BLUE HEARTSが好きで、あんなふうに、自分たちの心の中から出てくるどうにもならない気持ちを自分の言葉や音で叫ぶバンドをやろうよって、そういう話をしました」
――周りは関係なく、自分たちがやりたいことをやりたいようにやればいいのでは?とも思うんですけど、なぜ全体的なムードを変えたいと思っていたのですか?
あげは「みんなロックを聴け、ロックをやれということではなくて、ボーカロイドでもJ-POPでも、リファレンンスやアウトプットは何でもいいと思うんです。ただ、それらの曲をコピーしてうまくできたかどうかに終始するのではなくて、演奏は下手でもいいから自分たちの心の中から湧き出てくる感情を曲にして吐き出せば、みんなもっと楽しくなって、サークル自体が盛り上がると思ったからですね」
有斗夢「奏人心を組んでしばらくして、あげはがサークルの部長的な立場になって、ちょっとずついろんなことが変わってきて、僕らは今年の春に高校を卒業して今、という感じですね」
――そこまで気持ちを突き動かす、ロックの魅力って何ですか?
有斗夢「いろんな音楽がある中で、他にはない勢いを感じたんです。なぜ衝撃を受けたのか、理屈が追いついてくる前に〈なんだこれは?〉って、理屈じゃない説得力みたいな」