全方位で感応する歓びに満ちたガイドブック
〈メキシコシティに住む音楽・映画・カルチャー好きなライターと東京に住む料理・アート・クラフト、そしてメキシコ好きなデザイナーが作った少しだけ偏ったガイドブックです〉と、巻頭に。
えええっ!? ウソつけ! 全然、偏ってない! この好みの二人で、どう偏るのか。むしろ全方位だろ!と言いたくなる。まず店頭で見かけたら買わずにはおれない本だろうけど、最近は残念ながらネットでポチる人も多いから、騙されたと思ってポチっとしてください。
と、最初に過剰に推してしまったかもしれないが、旅行会社や地図会社系の出版社が出しているような旅行ガイド・シリーズ本のようなつくりも踏襲しつつ、しかし、オールカラーでエッセイ集でもある素敵な本だ。
旅のガイドブックは、行き先を決めて、あるいは決まってから買うという面も強いかもしれない。かたやガイドブックを何冊か見てみて、ここに行きたいなということもあるように思う。実際に旅に出るうえで、1冊だけではなく、2冊、3冊と買う人もいるだろう。
もし既にメキシコに行くことが決まっている方にはマストとしかいいようがないし、どこか行きたいなと思っている人はまず手に取ってみてほしい。
さらに、すぐには行けないけどメキシコにも興味あるし、いろんな好きなことあるなあ、あるいはなんかおもしろいことないかなという人も、特に二人の著者の〈好き〉と重なる部分があれば、読んで/見てほしい。世界が広がるから。
届いてすぐに、どこを開いても楽しすぎて、すぐにツレアイにも見せた。反応。〈どのページもよすぎる!〉〈やめてー、行きたくなる!〉と直接すぎるものだった。
食べ物、工芸(陶器、テキスタイルなど)、ショップやレストラン・カフェ、アートや美術館、メキシカン・バロックな教会、さらに、街路樹のうろに祀られたグアダルーペのの聖母像まで。人びとの営みが、二人の著者の鋭敏なセンサーにより丹念に拾い集められている。写真だけざっと眺めてもいいし、文章だけ読んでいくのもいい。
ある章のタイトルをもじると、メキシコ各地での〈空間が語りかける〉声に、文化/人工的なものと自然が一体化したようなありように、全身で感応している著者たちの歓びに読者もすっかり魅了されてしまうはず。