
シューゲイズ論争に対する複雑な心境
──それで『ロマンと水色の街』の制作時には5人が揃うと。デモの段階から〈この音はこの人!〉というように当てはめながら作っていったんですか?
miho「譲れないポイントだけはデモに入れて、ギターの2人にはスタジオで相談して弾き分けてもらいます。ドラムとベースもオーソドックスなものしか入れないので、細かい部分はお任せです」
su(ギター)「僕らはギターが3本あるんですけど、そのおかげで助かる局面があって。2本だと響きとして足りない時にバッキングを足したり、リードギターのフレーズとは別のアルペジオを入れたりできるので、自分は積極的にそういうアイデアを提案しています」
gouko「ギターが2本のバンドでも、レコーディングで効果音としてギターが入って3本になること自体は普通だと思うんです。ただ、僕らはライブの時でも3本弾いていることに必然性を感じられるようにアレンジを意識しています」
miho「2本のギターが違うアルペジオを弾いているのが好きなんです。アメリカのインディーロックみたいな」
──それこそダイヴとか、キャプチャード・トラックスのバンドを思い出すようなアレンジですよね。出したい音のリファレンスはバンド内で共有するんですか?
miho「はい、お互いに聴かせ合います。めっちゃするよね?」
hiroya「うん。デモだけの状態だとシンプルな8ビートしか入ってなかったりするので、〈この曲のこの感じを出してくれ〉っていうリファレンスを聴かせてもらいます」
miho「5人とも通ってきたジャンルが違うので……本当に共通言語がないよね、ビートルズくらい?」
kyai(ベース)「どうだろ、本当に共通しているものはないかもね(笑)。俺はマイブラすら知らなかったし」
miho「バンドに入ってもらう前に〈こういうジャンルのバンドをやるんだったら聴いてね〉っていうリストを渡したよね?」
kyai「うん。それでいざ聞いてみたらグォォォォォォってギターとブゥゥゥン……ってノイズが鳴ってて(笑)。〈俺の知ってるMoon In Juneじゃないんだけど!?〉ってビックリしました」
miho「それはよくネットで話題になるシューゲイズの定義みたいな話に関連していて、あんまり突き詰めると喧嘩になるというか(笑)。そういうのが気にかかるので、シューゲイズって自分たちから掲げることはなくなってきたもんね」

──そうなんですか?
su「リファレンスも色々あるので。なんなら『海鳴り』の頃からシューゲイズだけじゃないというか」
hiroya「『evergreen』も『ロマンと水色の街』も、シューゲイズっていうよりギターポップなんです」
miho「ドリームポップのほうがしっくりくるかもね。ただ、自分たちが特定のジャンルに括られたい、括られたくないとかは何もなくて、リスナーさんがどう思ってくれるかはあくまで自由です」
gouko「うん。あと、シューゲイズと外国の方が言うジャパニーズシューゲイズが違うというのにも最近気づいて。例えばフォトハイ(For Tracy Hyde)みたいに、日本語に即した歌メロがあって、ギターが歪んでいたりリバーブがかっているものがジャパニーズシューゲイズと呼ばれているようで」
miho「めっちゃエフェクトのかかってるJ-POPって感じかもしれないし。不毛なジャンル論争に巻き込まれたくなくて、自分たちではあまり名乗らなくなりました」