音楽生活50周年を迎えた難波弘之
2作同時発表される記念盤から溢れ出るポップ感覚

 学習院大学在学中からプロ・ミュージシャンとして活動を始め、1975年に金子マリ、鳴瀬喜博らとともに〈金子マリ&バックスバニー〉を結成。翌76年に発表された『MARI & BUX BUNNY』でメジャー・デビューし、79年に1stリーダー・アルバム『Sense of Wonder』をリリースした難波弘之。以降、SENSE OF WONDER、野獣王国、A.P.J.など数多くのバンド演奏や、山下達郎、三枝成彰らとの共演といった演奏活動のほか、作編曲やSF小説の執筆、88年からはNHK教育テレビの教養番組「ベストサウンド」の司会、東京音楽大学の教授就任など多方面に活躍。日本のミュージック・シーンに大きな影響を与え続けている彼が8月26日に、音楽生活50周年記念盤『夏への扉~難波弘之アンソロジー』(キングレコード)、『シルバーグレイの街~難波弘之アンソロジー』(ソニーミュージック)を2作同時リリースする。両作には彼のソロ作品やSENSE OF WONDER、野獣王国、A.P.J.などの演奏をたっぷり収録。その音楽の多彩さに驚かされる。

難波弘之 『夏への扉 ~ 難波弘之アンソロジー』 キング(2026)
難波弘之 『シルバーグレイの街 ~ 難波弘之アンソロジー』 Sony Music Direct(2026)

 「音楽への入り口は家ですね。父親がジャズ・アコーディオンとハモンドオルガンの演奏家でしたし、母親もクラシック音楽の声楽家。家にはいつも音楽が流れていました。とはいえ小学生の頃の僕はそちらには興味が行かず、漫画と落語に夢中なオタク少年でした(笑)。音楽への興味が強くなったのは中学生の頃。TVに出ているザ・スパイダースやゴールデン・カップスを観ていたら、僕の知らない洋楽を演奏していて、〈この音楽は何だ!?〉となったのがきっかけです。聞き取ったタイトルを頼りに近所のレコード店に行ったら、それがプロコル・ハルムの“青い影”だということを知って。それからヴァニラ・ファッジやドアーズのようなサイケデリック・ロック、そしてプログレッシヴ・ロックへとどんどん興味が広がっていき、自分でも演奏するようになっていきました。とはいえ、その頃はプロ・ミュージシャンになろうという明確な気持ちを持っていたわけではなく、ただ好きなことをやっていただけ。プロ入りのきっかけを作ってくれたのはナルチョ(鳴瀬喜博)です。大学の時に軽音の仲間と演奏していたら、“今度、金子マリと一緒に新しいバンドを作ることになったんだけど、お前も入ってくれないか?”と声をかけられ、バックスバニーを結成、それが僕のプロとしてのスタートです。その後、自分のソロ・アルバムを作ったり、SENSE OF WONDERや野獣王国、A.P.J.などのバンドを組んだりしてきました」

さまざまな活動をしてきた難波だが、今回の両作を聴いてあらためて感じるのは、その強烈なポップ・センスだ。1970年代~80年代のシティポップやフュージョンを彩ったメロディアスな曲が数多く並ぶ。そのポップ感覚はどこから来ているのだろう。

「60年代後半から70年代にかけては何を聴いても面白く、フォークやジャズも聴きましたし、セルジオ・メンデスやフィフス・ディメンション、カーペンターズ、それから歌謡曲もよく聴いていました。そこからジミー・ウェッブや筒美京平さん、村井邦彦さんが好きになって。そういうものが合わさって、ポップなプログレのような感覚が生み出されたような気がします」

 そうして50年の音楽人生を歩んできた難波。最後に、もし今、50年前の自分に出会ったら、どんな言葉を掛けるか聞いてみた。

 「〈大丈夫。やればできるよ〉という言葉ですかね(笑)。お話ししたように、これまでの僕は、興味のままに好きなことをやってきただけ。でも最初の頃は、〈このまま続けて大丈夫かな?〉という漠然とした不安がありましたし、東京音楽大学の講師を頼まれた時には、〈組織の中でちゃんとやっていけるのかな?〉という恐れがありました。そんな自分を後押ししてやりたいですね。思えば、これまでの自分は好きな音楽を好きなようにやっていただけ。でもそれは今も変わっていないし、これからもずっとそのままなんでしょうね」

 


難波弘之(Hiroyuki Namba)
東京出身のキーボード奏者、作曲家・編曲家、SF作家。両親が音楽家ということもあり、幼少期よりピアノを始める。1975年に鳴瀬喜博の誘いで〈金子マリ&バックスバニー〉に加入。自身のアルバムを発表する傍ら、数多くのTV・CM・ゲームへの楽曲提供や、 FMのパーソナリティー、TVのレギュラー出演、後進の指導、プロデュース等幅広く活動をする。現在はSense Of Wonder、野獣王国、A.P.J.、Nelson Super Projectなどで活動中。SF作家としての一面も持つ。

 


LIVE INFORMATION
A.P.J.

2026年9月12日(土)本厚木Cabin
開場/開演:18:30/19:00
出演:難波弘之(ピアノ)、水野正敏(ベース)、池長一美(ドラムス)
https://nambahiroyuki.com/