2026年がいよいよスタート。日本テレビ系の番組「バズリズム02」で恒例企画〈今年コレがバズるぞ! 2026〉が放送され、今年活躍が期待されるアーティストは誰?と気になっている音楽ファンは多いはず。Mikikiは昨年に続いて、今年も注目の新人邦楽アーティストを選出。編集部の小田淳治と天野龍太郎がそれぞれの視点からプッシュしました。まずは記事の前編として16組を紹介します。 *Mikiki編集部


 

小田淳治 編
Natsudaidai

シンガーのヨウとトラックメイカーのNanaeによるユニット。艶もあって耳触りのいいヨウのボーカルと、J-POP的なフィーリングは持ったままブラックミュージックのリズムやビートを巧みに用いたNanaeのトラック。そのどちらが欠けてもNatsudaidaiの音楽は成立しないんだろうなと思わせてくれる、まさに出会うべくして出会った2人だ(しかも2人とも誕生日が同じ!)。昨年2nd EP『CHEW』のリリース時にインタビューを掲載したが、いい意味で対照的な2人で、そういったギャップも含めて愛着が湧くはず。桑田佳祐が自身のラジオ企画〈2025年 邦楽ベスト20〉において“Tasting!”を〈もうすぐベスト10!!〉の1曲に選んでいて、そうしたポップスのレジェンドの琴線にも触れる作品を生み出す2人の今後がとにかく楽しみです。

 

スーパー登山部

2023年に小田智之(キーボード/ボーカル)を中心に結成された、愛知を拠点に活動中の5人組。バンド活動と並行して登山も行っているそうで、雄大な自然を直接肌で感じている影響は音楽性にも表れているように思う。ジャズコードなどを使いつつもメロディーは人懐っこくて、最新曲の“いつかはね”にいたってはキリンジ“Drifter”にも近い雄大さを感じた。ブルーグラス、ソフトロック、ポストロックなど音楽性の引き出しも多く、自然を前に丸裸になる人の心の機微などが描かれた歌詞もとても魅力的だ。昨年都内でライブも見たが、想像以上にアグレッシブで音像の作り込みもすごく緻密だった。フジロックや朝霧JAMあたりでぜひ見たい!

 

OddRe:

YUI、Vaundy、Chilli Beans.らを輩出した⾳楽塾ヴォイスに通っていたAirA(ボーカル)、ユウキ サダ(ベース/ボーカル)、SOI ANFIVER(ギター/コンポーザー/トラックメイカー)によって結成された3人組バンド。強力な2人のボーカル、全編パンチラインなリリック、それらに見合う強烈なトラック……と、ひたすら必殺技のコマンドを連打し続けているような楽曲はとにかく痛快。ロック、ファンク、ブルースあたりを軸に(特にファズの効かせたエレキベースが特徴的)、ボーダレスでジャンルレスな音楽性を掲げている点も他バンドとは一線を画している。挨拶がわりに届けられた1st EP『THE GOLDEN PROTOTYPE.』を今もヘビロテしているが、今年の音楽シーンにおけるゲームチェンジャーになる可能性大!

 

cephalo

kurayamisaka、ウィスプを筆頭に国内外でシューゲイズ/オルタナロックのシーンが再び賑わいはじめているなか、個人的にプッシュしたいのが2023年に東京で結成されたcephaloだ。昨年“ヴェイパーロード”のMVをたまたま見たのをきっかけに、同楽曲が収録された2nd EP『gloaming point』をチェックしたが、その完成度の高さに驚かされた。リバーブを効かせたボーカル、抜けのいいスネアやクラッシュシンバル、歪ませつつもしっかりと楽曲の輪郭を形成するベース、そして高らかにかき鳴らされるギター。曲そのもののよさはもちろん、丁寧な音作りやミックスもcephaloを気に入った理由です。初ワンマンが2月に渋谷WWWで行われるとのことで、この機会に足を運んでみたいところ。

 

IBUKI

藤井 風やYo-SeaのようにR&Bやソウルを源流に持つ男性ソロアーティストが増えてきて嬉しい限りだが、そこに仲間入りさせたいのがIBUKIだ。以前からTikTokなどSNSをメインに活動していたようだが、昨年3曲のオリジナル曲を配信リリース。軽快なフロウで挫折と希望を歌った1stシングル“TRUST”、日本語と英語がスムースに行き交うスウィートなR&Bナンバー“LOVE WITH YOU”、、ダニエル・シーザーなどを想起させる切ない“ALL AROUND ME”と、IBUKI自身のリアルな体験や経験をもとに書かれたであろう曲ににきっと胸が締め付けれるはず。

 

天野龍太郎 編
NEK!

〈スラングロックバンド〉というキャッチフレーズの4人組。〈ネキ〉と読むバンド名はネットスラング由来(〈頼れる存在のアネキ〉という意味)、結成経緯もHika(ボーカル/ギター)がSNS経由で声をかけた、という令和Z世代ど真ん中な最新型バンドの在り方を体現している。そもそも演奏動画をSNSにアップしていたプレイヤーが集まったバンドなので、演奏力は抜群で技巧的。またHika自身、4人と連絡をとった理由は「可愛いから」と明かしていたが、ステージや映像でも映えまくる佇まいも武器の一つ。演奏のキャラ立ちも強烈なので、最強メンバー時のレッド・ホット・チリ・ペッパーズのような替えの効かなさを感じるのが強い。とはいえテクニック至上主義ではまったくなく、曲も実にポップなのがいい。これだけの曲を作っているバンドなのだから、さぞかし芯の強い4人なのだろうな、と思ってインタビューに臨んだら、かなり緩くて柔らかい話しぶりと仲の良さそうな関係性で、そのギャップにもやられた。〈コレバズ〉のアンケートでも推薦しました(結果は27位)!

 

Hibiki

当時高校生だった2023年、歌番組でJUNG KOOK“Seven”のカバーを披露して話題になった九州在住の現役大学生シンガーソングライター。2024年に〈第37回東京国際映画祭〉のフェスティバルソング“Desire”でデビューと同時に一躍注目を集めた。ひとたび聴けば誰もがノックアウトされる強力なボーカルパフォーマンスがとにかく素晴らしくて、SuperflyやMISIAに憧れたということにも納得。力強さと伸びやかさ、そしてバイリンガルらしい越境性と軽やかさ、繊細さを備えた歌は、AdoのファンからK-POPリスナーまでを魅了するはず。ユニークな出自や考え方などを知ることができるので、下記のインタビューもぜひ読んでほしい。

 

WILD BLUE

年始にホラーコメディ映画「見える子ちゃん」を見ていたら、アクの強い個性的なイケメン生徒会長役を見事に演じていたのが山下幸輝だった。その山下と宮武颯、鈴川直弥、池田優斗、鈴陽向の5人からなるボーイズグループは、デビュー1周年記念公演〈WILD BLUE 1st Anniversary ~SKY VOYAGE~〉のライブレポートを掲載したのがきっかけで深く知ることに。ライブを見て感じたのは、山下がグループのリーダーとはいえ、5人が非常にキャラ立ちしており、全員がまったく異なる個性をそれぞれの見せ場で発揮していたこと。バラバラな感じがするのに、曲が始まれば歌とダンスで一体化する。この絶妙なバランスと個々のアイコニックな在り方がすごくいい。2026年はWILD BLUEがくる!

 

Moon In June

〈NO MUSIC, NO LIFE. @〉に選出され、取材を通じて知った4人組(もともと5人組だったが、先日残念ながらギタリストのgoukoが卒業)。シューゲイズ、ドリームポップ、オルタナティブロック、ジャングルポップ、アノラックサウンド、ギターポップなどのサウンドを受け継ぎながら、スピッツからFor Tracy Hydeまで日本のバンドの系譜に連なる音楽性とソングライティングが素晴らしい。フロントに立つmiho(ボーカル/ギター)の儚い歌声とJ-POP流儀の瑞々しいメロディが魅力的で、2ndアルバム『色彩を持たないで』の収録曲“ペーパー・ムーン”はスピッツの“日なたの窓に憧れて”へのオマージュを感じる名曲。これからどんどん人気になっていきそうなポップポテンシャルを感じるし、インタビュー時に感じたメンバー同士で支え合っている関係性もよかった。

 

life crown

取材で出会って魅了された西東京発の4人組。〈Western-Tokyo Grunge〉を掲げる彼らは田無出身、吉祥寺が拠点ということで、個人的に地元の近さという点でも入れ込んでしまう。音楽性は、グランジを中心に新旧のオルタナティブロックの要素を取り入れ、歪んだ爆発力のあるギターを前面に打ち出したもの。高い演奏力にもキャッチーな曲にもやさぐれだった歌詞にも惹かれるが、tomi(ギター/ボーカル)はもともとEDMが好きで、DTMで音楽を制作している、という点がおもしろい。メンバーのルーツも歌謡曲やフュージョンなど多様で、今後どんな音楽性に変化していくのかは予測不能。tomiはインタビューで「過去の再現はしたくない。そのとき出したい音を出し続ける」と言っていた。レディオヘッドのようにどんどん進化していくバンドになるかもしれない?

 

奏人心

kurayamisakaを筆頭に、bloodthirsty butchersなど日本のオルタナティブロックの系譜を受け継ぐ新進気鋭のバンドが注目を集める昨今。福岡で活動する彼らは、そのなかでもとりわけ若く、高校時代にすでに話題になっていた現在20歳の3人組(バンド名の読み方は〈そうとしん〉)。奏人心というバンドは、〈大人になること〉というような誰もが直面する壁を前にしたとき、否応なしに湧き出るどうにもならない思いをパンキッシュなロックに乗せて吐き出している。切迫感や鋭さ、猪突猛進な勢いが詰め込まれた青い音楽からは、まさに〈今この時にしかない〉という刹那の瞬間の美しさが迸っている。ベーシストの永松有斗夢に加えて、ギタリストの山路あげはもメインでばっちり歌うようになったEP『風がゆく若色の街』は必聴!

 

天

2024年の“Sky”のMVがYouTubeで突然サジェストされて知った3人組。それからというもの、すごくいい曲なので何度も聴いていた。しかし、情報がまったくないので、どんなバンドなのかまったくわからず……。こがれ『聴こえる』のリリースライブにKhakiとともに出演したのを見に行き、生でバンドの姿を初めて捉えた。パフォーマンスには少し粗削りなところを感じたものの、2025年にリリースした“World IV”“Panorama”という2曲はいずれも素晴らしかった。オルタナティブロック的な音楽性にも惹かれるが、映像やファッション、つまりビジュアルに対する感覚が研ぎ澄まされているのが実にいい。これからどんどん注目を集めそうなポテンシャルを感じてならない。

 

開始

Xのタイムラインに流れてきたポストを見てたまたま知ったのか、記憶が朧気だが、ひょんなことから1stアルバム『杏露を泳ぐ魚たち』を再生して衝撃を受けた。イントロ的なフォークソング“暗闇に似たもの”に導かれ、2曲目“香川生花店”を聴いてぶっとんだことが記憶に新しい。あの曲の魅力は、まずは一度聴いたら忘れられないメロディを奏でるイントロのギター。それに続いて現れる、riko ikedaの独特のリリック(〈失くしものを失くす〉と〈せーの、でジャンプして〉が素晴らしい)とあどけなさを残した歌声。そんなわけで、『杏露を泳ぐ魚たち』は昨年の個人的なベストアルバム、“香川生花店”はベストソングの一つになった。どんなバンドなのかというと、東京の4人組で、同じ大学で出会ったメンバーで2023年に結成されたとのこと。それ以上の情報はほとんどなく、全貌が見えないところにも惹かれてしまう。いまライブを見てみたいバンドNo. 1。kurayamisakaのファンにも刺さるのでは?

 

有田咲花

2024年の1stアルバム『貉』が突如話題になり、バイラルでじわじわと広がっていった、謎めいた才能。おそらく宅録系のシンガーソングライターなのだが、現状は詩のような文章を綴っているnoteくらいしか情報源はない。初ライブは昨年4月の恵比寿Batica、楽曲制作はiPhoneで完結させているという。半匿名的な在り方ゆえに、俄然どんなアーティストなのか気になってしまうが、手がかりは作品にしかない。2025年は、『鯨』『鴎』とアルバムを2作もリリース。R&Bやインディロックを包含した極めてパーソナルで繊細な音楽的志向性は、批評家の佐々木敦や野田努(ele-king)も魅了している。

 

Worldwide Skippa

オーディションプロジェクト〈RAPSTAR 2025〉で脚光を浴びたラッパー。排外主義的なラッパーたちの曲を批判した“ダサくて助かる”やある政党にノーを突きつけた“Take Back Orange”といったポリティカルな曲も注目され、ヒップホップシーンで大きな話題を呼んだ。一方で、バイトを辞めたことをラップした“シャトレーゼやめた”のような率直かつユーモラスな曲もおもしろく、レイジなど今どきなサウンドのビート選びもロウキーなフロウも個性的。今もっとも注目すべきラッパーだし、昨年日本のラップ作品でいちばん再生したのが彼のミックステープ『Skipping Tape Vol. 3』だった。

 

Litty

2024年の“Pull Up”がヒットし、昨年はC.O.S.A.との共演曲“BOUNCE”も話題になったラッパー。米ボストン生まれ、東京育ち、大学はアメリカという経歴の持ち主で、USメインストリームのヒップホップやBAD HOP、LEXなどからの影響を公言している。〈見た目と育ちで言われるidol〉と“BOUNCE”でラップしているとおり、ベビーフェイスや裕福であろう出自はヘイターたちの批判に晒されているのだろう。しかし、そんな状況にも挑発的な姿勢で臨み、イケてる自身の魅力を低めの声で歌うようにボースティングすることによって、彼女は新たなフィメールラッパー像を立ち上げているように感じる。1st EP『Just a Girl』以来まとまった作品はリリ-スされていないので、2026年はアルバムをぜひリリ-スしてほしいところ。