2000年代のJ-POPシーンに現れ、一世を風靡した2人組音楽ユニットHALCALI。自然体なキャラ立ちやラップ表現が当時人気を博したが、洗練されたポップなヒップホップサウンドも魅力で、〈いつか再評価されるのでは?〉と感じていたリスナーも多いはず。
その波は突然、海外からやってきた。楽曲“おつかれSUMMER”のTikTokにおけるバズをきっかけに、〈ハルカリバイバル〉が巻き起こりつつあるのだ。同曲はSpotifyで1日2,000~3,000回ほど再生されていたが、2025年4月25日に1万回を超えるスパイクを見せ、現在は15万回程度だという。さらにTikTokでの“おつかれSUMMER”の投稿件数は、実に13万件に超える。好評を受け、リミックスアルバム『ハルカリミックス』の配信やイベント開催も決定した。
今回はそんなHALCALIの魅力について、ミュージシャンでライターのKotetsu Shoichiroに解説してもらった。 *Mikiki編集部
2000年代シーンを賑わせたオシャレトラックと飾らないキャラ
HALCALIが2003年にリリースした楽曲“おつかれSUMMER”が、現在、日本国外で話題となっている。海外のイラスト~創作系コミュニティの中で、“おつかれSUMMER”をBGMにした投稿がバズったことがきっかけで、トラックにも注目が集まり、急速に再生回数を伸ばしつつあるのだ。
HALCALIはHALCAとYUCALIによる2人組ユニット。ダンススクールの幼馴染だった2人が、2002年に行われた〈FEMALE RAPPERオーディション〉で優勝し、2003年、RIP SLYMEのDJ FUMIYAとRYO-ZによるO.T.F.(オシャレ・トラック・ファクトリー)のプロデュースにより“タンデム”でデビューする。
その音楽性は、伸び伸びと自然体な2人のラップに対して、O.T.F.を始めTOKYO No.1 SOUL SETやKOHEI JAPAN(MELLOW YELLOW)、宇多丸(RHYMESTER)、VERBAL(m-flo)といったベテランのジャパニーズヒップホップ/クラブ系アーティストがプロデュースを固める、〈本気の遊び〉とでも言うべきハイブリッドなスタイル。シングル“ギリギリ・サーフライダー”(2003年)やTOKYO No.1 SOUL SETとの“今夜はブギー・バック”(2009年)はオリコン10位、アルバム『ハルカリベーコン』(2003年)は5位とヒットを飛ばした。個人的には、石野卓球や岡村靖幸が参加した『ハルカリミックス』(2005年)は、〈リミックス盤〉という、そのフォーマット自体が懐かしい響きなのも含めて、今こそ聴きたいアルバムの一つだと思う。
そんな高い音楽性もさることながら、当時は何よりも2人の脱力した飾らないキャラクター性が人気を呼んだ。HALCALIは「remix」「Quick Japan」といったカルチャー誌の表紙を飾り、ファッション面も注目を集め、地上波音楽番組(「新堂本兄弟」)にもレギュラー出演するなど、2000年代半ばの音楽シーンを大いに賑わせたのだった。その人気ぶりを鮮烈に記憶しているアラフォー世代は少なくないだろう(あるいは数年前にchelmicoを初めて見た時に〈おっ!〉と思った人も)。