自らの声で築き上げた特別な居場所
BMSG所属のシンガーソングライター・REIKOが、〈REIKO One-man tour “VOICE”〉の追加公演を、2026年7月17日に東京・豊洲PITで開催した。
2nd EP『VOICE』を掲げ、全国8都市を巡ったワンマンツアー。EPのグランドテーマは、〈自分の声を信じて進むこと〉。その締めくくりとなる本公演で強く印象に残ったのは、REIKOが自らの声で築き上げた場所が、すでに多くの人にとって特別な居場所へと育っているということだった。
国境や言葉の壁を超える歌
定刻を少し過ぎたころに暗転。大きな歓声がわきおこる中、REIKOは色鮮やかなパープルの燕尾服で登場。「チャーリーとチョコレート工場」のウィリー・ウォンカを意識したという、フォーマルな中にも遊び心のあるスタイルだ。ライブが進むうちにジャケットを脱ぎ、蝶ネクタイにサスペンダーというキュートな姿も披露していた。
グルーヴィーな“LOVE DEEPER”で序盤から一気に盛り上げ、軽やかにありのままを肯定する“So Good”、情熱的なラテンナンバー”Neverland”、スウィートな歌声が引き立つR&B“for me”など、多彩なジャンルの楽曲を、バンドによるリッチなサウンドと共に披露するREIKO。柔らかい声、力強い声、伸びやかな高音、深みのある低音。その多面的な歌声の魅力が、曲を追うごとにオーディエンスの心を強く惹きつける。
カバー曲もまた、本公演における大切なピースとなっていた。久保田利伸の“LOVE RAIN ~恋の雨~”では、傘を小道具に使ったダンスパフォーマンスで魅せたかと思えば、「サプライズゲストのシナモンちゃん」という紹介で登場したウクレレの弾き語りで、平井大の“Slow & Easy”をリラクシンに届ける。さらにジョン・レノンの“Imagine”、ブルーノ・マーズの“Just the Way You Are”といった世界的アーティストによる名曲も、自身の表現へと昇華していく。
「みんなをフィリピンに連れて行くね。飛行機っていう体で、キャビンアテンダントは僕のみ!」と冗談交じりに言うと、自身のルーツでもあるフィリピンの人気曲・Up Dharma Downの“Tadhana”、Cup of Joeの“Multo”などのカバーを披露。歌唱はタガログ語だったが、曲が始まる前に歌詞の内容を紹介し、客席には日本語訳の歌詞が書かれた冊子も事前に配布されていた。
歌唱後には、この2曲を、『Folklore Vol.1 – Tadhana / Multo』として後日配信リリースすることを発表。このFolkloreは、〈いろんな国のいろんな人が愛してきた曲をREIKOがお届けするシリーズ〉として、今後もさまざまな楽曲が展開されるようだ。歌の力で言葉の壁を越えていくREIKOの姿は、『VOICE』が掲げるテーマを象徴する場面の一つといえるだろう。
RAZEと音楽で心を通わせて
筆者がREIKOのライブを観るのはこの日が初めてだった。〈VOICE〉というワードの印象から、歌で圧倒するようなステージを想像していたが、それはいい意味で裏切られた。なぜなら、このステージは歌唱力を誇示する場ではなく、客席と心を通わせる場になっていたからだ。
ほぼ満員の客席を見渡し、「すげぇ! やばいっすね」と少年のように目を輝かせる姿。「こんなに多くのRAZE(REIKOファンの名称)が来てくれたんだ」と即興ソングを歌う姿。「一緒に歌って!」「恥ずかしかったらそっち(客席)まで行くからね」と寄り添う姿。その飾らない人柄に触れ、REIKOというアーティストは、カリスマ性とチャーミングさを併せ持つ、稀有なシンガーなのだと実感した。
また、“So Good”では2人のダンサーの先導で、フロアを分けてダンスバトルを開催。これは本公演で初の試みだったようだが、客席は自然と笑顔で溢れていく。最後には、「ありがとう! ここからは、分断よりもみんなでひとつになろう」と伝え、全員でREIKOのダンスを真似ることに。しかし、その振付が意外と難しく、やや手こずる客席。その様子を見たREIKOが「全然ダメだけど、全然Good! 心が晴れた!」と優しく笑う。とても微笑ましいやり取りだった。
このダンスバトルを筆頭に、ライブ全体を通してコール&レスポンスやシンガロングなど、REIKOとRAZEが心を一つにするシーンが多く見られた。ライブ終盤の“First Christmas”では、スマートフォンのライトが会場一面を照らし、温かな光景が広がる場面も。自分をどう見せるかよりも、みんなと一緒に音楽を楽しみたい。その思いが伝わってくる時間だった。