忌野清志郎デビュー55周年記念ドキュメンタリー
――混迷の時代こそ、清志郎を。
「SUKITA 刻まれたアーティストたちの一瞬」 「音響ハウス Melody-Go-Round」「トノバン 音楽家 加藤和彦とその時代」につづく、相原裕美、音楽ドキュメンタリー4作目。
――これまでの三本と、今回の作品とで違うこと、おなじこと、は?
「どれもそれぞれ違っています。前作の『トノバン』は加藤和彦さんの再評価がメインでした。本作品は、清志郎さんはロックを知っている人からすれば知らない人はいないほどビッグネームです。お話を頂いて、何をテーマにするか色々と調べたりしたときに、〈歌いたいことを歌う〉〈夢〉というワードが心に刺さり、この2つのテーマで進めていこうと思いました。清志郎さんの事務所をはじめレコード会社など仕事で関わってきたかたが何人もいます、そうした人たちで映画の企画チームができ、チーム内で整合性を取りながら映画の骨子が決まってきました」
――ミュージシャンのドキュメンタリーは、伝記的なところを重心にしてしまって、曲がぶつ切りになることが多い。この映画の圧倒的なつよみは、たくさんのライヴ映像を堪能できる。他方、「音響ハウス」と「トノバン」、そして「愛し合ってるかい? 忌野清志郎が教えてくれた」も、いろいろ辿ってきて、最後、本人の不在のなか、ほかの人たち、引き継いでゆく人たちが集まって、演奏をする――このつながりについては?
「音響ハウスは現存しているスタジオですが、誰もがレコーディングとはどういうものか、知っているわけではないので、それを提示したかった。音楽ができる瞬間みたいなのをとらえたいな、とおもっていました。『トノバン』のエンディング“あの素晴しい愛をもう一度”は名曲を歌い継ぐというテーマであらたにレコーディングしました。新しい“あの素晴しい愛をもう一度”の表現になっていると思います。今回のトリビュートライブシーンでは清志郎さんの盟友、梅津和時さんにも参加していただき、清志郎さんの精神的なものも若いミュージシャンに引き継いで貰えたと思っています」
――映画ではかわいらしい絵が清志郎のうたとシンクロし、一種のアニメーションになっている部分があります。
「清志郎さんの長女の百世さんが、消しゴムハンコ作家として長年活動されているんです。 リットーミュージックで話しをしていた時、シリーズ『歌詞(うた)の本棚』の存在を知って、百世さんのイラストと清志郎さんのうたが一緒にできないかと閃いたんです。百世さんにも快諾していただき、あらたなコラボーレーションとして創り継ぐという形ができたと思います。ちなみに、書店での流通いがいに、限定で絵本に7インチのアナログ盤がセットになるものもでます」


――2026年の秋、忌野清志郎のドキュメンタリーが、「愛し合ってるかい?」のタイトルで公開されるのは、この〈バンドマン〉の記録/記憶でもあるが、同時に〈いま〉の問題とシンクロします。
「映画は公開するまで時間がかかる。本作品も企画から4年くらいかかっています。テーマを決め、進めていくうちにずいぶん世界情勢がきな臭くなってきた。清志郎さんは『COVERS』のようなアルバムがあります。その精神性みたいなところは残さないといけないな、と思いました。金平茂紀さんにでていただいたのも、そうしたところとつながっています。それに、泉谷さん最高ですよね(笑)。泉谷さんね、もう自己満足でいいんだよって言ってる。三宅さんはいい曲作って、いいライブをするしかないんじゃないかって。ある意味、清志郎さんって、俗に言う反原発、反体制みたいなところで捉えがちなんだけど、そうじゃなくて、自分の言いたいことを言う、清志郎さんが語っていたように、お母さんのことがあって、戦争は絶対反対。これは確かです。それはみんなが考えなきゃいけないテーマだと思います」
――清志郎は、戦争という概念がなくなることが夢だ、と言う。そういう概念をなくす。シンプルなんだけど強いメッセージ。それがタイトル「愛し合ってるかい?」ということばにもつながる。消しゴムハンコ絵のアニメーションも、それをつくっているのが家族だということも。
「いま、加藤陽子の『それでも、日本人は「戦争」を選んだ』(新潮文庫)を読んでいるけど、戦時下になるとエンタテインメントが、ある意味なくなってしまう。国に統制されたものしかなくなってしまう。自由に歌う、自由に表現できることは、それは戦争がないから、みんなが争っていないからできる。エンタテインメントに携わる人間としては、争いをしないためにどうするかはすごく大事なテーマと思うんですよね」


――この人はこんなメイクもするし、こんなライヴ・アクションするけど、自転車乗って、母親もこどもも大事にして、ふつうの人だな、それが大事だな、と。
「清志郎さんのことをリスペクトしているミュージシャンも多く、神格化されがちなところもあって、ただ、それだけではなく、家族を大事にする、信念を貫き通すバンドマンとしての清志郎さんをつたえられていたらと良いなと思います」
清志郎を知らない人は清志郎を知り、清志郎を知っている人は、確認し、再確認し、どちらも記憶に刻む、ドキュメンタリー。
MOVIE INFORMATION
映画「愛し合ってるかい? 忌野清志郎が教えてくれた」
監督:相原裕美
出演:忌野清志郎、三浦友和 竹中直人 三宅伸治 泉谷しげる 梅津和時 角田光代 金平茂紀 百世 ほか
配給:東映ビデオ
(日本|2026年|124分)
©2026 Kiyoshiro Movie Project
2026年10月2日(金)より、新宿バルト9ほかにて公開
公式HP:https://www.toei-video.co.jp/kiyoshiro-movie/
公式X:@kiyoshiro_movie
公式Instagram:Kiyoshiro_movie