〈パフォーマンス〉という終わらない、例外的なもの

 1980年代のいわゆる現代美術において、新しい表現として意識されるようになった手法およびスタイルに、インスタレーションとパフォーマンスがある。どちらも、以前からそれらに類する手法は存在していたが、まだそれぞれ特定の呼称を持っていなかった。本書の原書が刊行されたのが1979年であることは、パフォーマンスの時代とも言える1980年代の状況を準備したものとして意味を持つかもしれない。3年ほどのちの1982年には日本語版が、美術評論家の中原祐介の翻訳によって刊行された。そして、その2年後の1984年には、ヨーゼフ・ボイスとナムジュン・パイクが、さらにローリー・アンダーソンが来日し、最新の美術動向としてのパフォーマンスは注目を集めるようにもなった。その言葉自体、まるで流行語のように人口に膾炙するものとなった。

 もちろん、パフォーマンスはたんなる一過性の流行のようなものではなく、時代とともに更新され続ける同時代的な表現である。それゆえ、本書はこのパフォーマンスについての起源、そして歴史を記しながら、その現在からの視点によって読まれるべく、つど新たなページを追加してきた。それが、この本が刊行以来読み継がれてきた名著となった所以であろう。そして、このたび日本語版については、2025年の第四版を翻訳し、46年をへて新訳復刊となった。

ローズリー・ゴールドバーグ, 深川雅文 『パフォーマンス・アート 未来派から現代まで』 フィルムアート社(2026)

 著者ローズリー・ゴールドバーグは、このパフォーマンスという定義不可能なジャンルの起源を20世紀のアヴァンギャルド表現の歴史に見出し、ジャンルを逸脱、横断する、その例外的表現を、さまざまな動向から結びつける。未来派、ロシア・アヴァンギャルド、ダダ、シュルレアリスム、バウハウス、といったヨーロッパの系譜から、戦後のアメリカのブラックマウンテン・カレッジ、そしてジョン・ケージらの前衛へ、そして1960年代のフルクサス、1970年代のコンセプチャリズムへ。また、本書では70年代のパンクとの同時代性にもふれ、その周縁的な性質を持つ、ゆえに例外的であり、定義不可能なものであるパフォーマンスとその作品の数々を体系的に位置付けていこうとする。

 初版から追加された章には、本書の刊行以降、それが周縁から中心へと移り変わっていく経緯が記されている。またそれは、同時代のテクノロジーやメディアと伴走し、社会的背景とともに表現を先鋭化させていくパフォーマンスという表現領域が、〈定義に抗い、予測不可能かつ挑発的ものでありつづける〉継続的な意志なのだという宣言でもある。