時代に呼応し、名をひとつにした3人がツアーでの実験を結実させた新作を完成!!!
〈最高傑作〉と自負する『QUANTUM』に重ね合わされた先鋭と円熟の流儀とは?

 2023年の『DEVOTION』から約3年、TM NETWORKからTMNETWORKに表記を改めた3人組のニュー・アルバム『QUANTUM』がリリースされた。本作は、足掛け3年に及んだデビュー40周年プロジェクトを完結させたばかりの彼らが、2026年の全国ツアー〈TMNETWORK TOUR 2026 QUANTUM〉をベースに、同ツアーで披露した楽曲をアルバムとして完成させたもの。〈アルバムのリリースからツアーへ〉という定石とは逆を行く制作プロセスだが、それゆえにこそだろう、小室哲哉(キーボード)が〈最高傑作〉と自負する充実作に仕上がっている。

TMNETWORK 『QUANTUM』 ソニー(2026)

 長い間、TMNETWORKを支えたFANKS(ファンの総称)に感謝を捧げながら、40年間の歩みをじっくりと総括してきた3人。そんな彼らが踏み出した次の一歩は、どのような作品に結実したのだろうか。『QUANTUM』はコンセプトだけでなく、それぞれの楽曲の構成も壮大。でありながら、彼ららしいポップさ、キャッチーさは失われていない。尽きないイマジネーションが迸る、円熟と共にフレッシュさも湛えたアルバムになっている。そのなかで“RESISTANCE”や“Get Wild Continual”といった人気楽曲のリアレンジ・ヴァージョンも目を引くが、本作の核になっているのは“Quantum” “Entanglement”、それから“Rise Together”と“Superposition”の4曲から成る〈QUANTUM〉組曲だ。ツアーでも軸となっていたこれらの楽曲は、アルバムでも大きなハイライトになっている。クラシカルな趣を持ったフレージングや音色選びが往年のプログレッシヴ・ロックを彷彿とさせる一方で、エレクトロニックなサウンドが放つダイナミックさは現代的。とりわけ、力強いギター・リフが印象的なヴォーカル・チューン“Rise Together”は、エネルギッシュなエレクトロニック・サウンドに、シンプルだが耳に残るメロディーが合わさった、TMNETWORKらしい一曲だ。

 壮大な組曲志向は、過去のレパートリーの選択にもあらわれている。後半にやってくるもうひとつのハイライトは、2000年のアルバム『Major Turn-Round』の表題曲をアップデートしたリアレンジ・ヴァージョン。こちらはもともと30分を超える組曲だったものを、13分ほどに圧縮しており、劇的な場面転換を繰り返す、エレクトロニックなスペクタクルが繰り広げられる。ちなみに、アルバムを締め括る“CUBE”も同作からのレパートリーだ。

 このように基本的にはプログレ色を強めつつ、抜群のポップソングも同様に収められている。ツアーでは有明アリーナでの追加公演のみエンドロールにてインストゥルメンタル版が流された“Superposition”は、本作で宇都宮隆(ヴォーカル)の歌が加わって完成。NHK「SONGS」でも演奏され、“Rise Together”と並ぶキャッチーな一曲だ。アンセミックなサビが持つ、メロディーの瑞々しさには改めて驚かされる。ポップなサビとバロックなフレイヴァーを持ったヴァースで曲調を変える、大胆な楽曲構成もおもしろい。

 木根尚登(ギター)が歌うフォーキーな“恋せよ乙女 -Run Through The Night-”は、エレクトロニックなサウンドが基調となった本作では異色の楽曲。アコースティック・ギターの切なく煌めく音色が歌声を包み込み、彩っている。また、小室哲哉によるヴォーカルと、10ccを思わせる多重録音コーラスによるトラックが印象的な“fate”は、スケールが大きく勇壮な印象の本作においてひときわ甘美で、メランコリックな陰りも持っている。

 壮大な物語を描く組曲を中心に据えつつ、さらにこれだけのキラーチューンが揃えば、なるほど〈最高傑作〉というのも頷ける。さまざまなアイデアを思う存分に詰め込み、サウンドはリッチ。なにより、プログレッシヴ・ロック的な重厚さとスケール感を表現に織り込みながら、彼らのポピュラリティーを支えたキャッチーで折衷的なスタイルを持つ楽曲にリスナーの胸は躍らずにはいられない。この類まれなバランス感こそ、TMNETWORKの強みであり、ユニークさ。そんなことを再確認できる作品だ。

TMNETWORK 『TMNETWORK TOUR 2026 QUANTUM』 M-TRES Inc.(2026)

 ちなみに、同時にリリースされるライヴ映像作品のBlu-ray「TMNETWORK TOUR 2026 QUANTUM」は横浜アリーナ公演を収録したもの。シンプルなステージに、巨大スクリーンによる壮麗なヴィジュアルやライティング。時系列で言えばアルバムの〈素〉になった公演の記録だが、アルバム『QUANTUM』へと流れ込む壮大なコンセプトを収めた映像作品としても見応えがある。なにより、エネルギッシュなこのアルバムが、3人の円熟のパフォーマンスによるブラッシュアップを経て生まれたことが、画面から伝わってくるようだ。合わせてチェックしてほしい。

TMNETWORKの作品を一部紹介。
左から、2025年の映像作品『TM NETWORK 2025 IP』(ソニー)、2025年のシングル“Carry on the Memories”(M-TRES Inc.)、2023年作『DEVOTION』、87年作『humansystem』(共にソニー)

メンバーの作品を紹介。
左から、小室哲哉のライヴ映像作品「billboard classics ELECTRO produced by TETSUYA KOMURO」、宇都宮隆のベスト盤『「U30 Contract」TAKASHI UTSUNOMIYA ANTHOLOGY 1992-2023』(共にソニー)、木根尚登の2025年の書籍「電気じかけの予言者たち -再起動編-」(リットーミュージック)