(左から)モニカ・サルマーゾ、ガイア・ウィルマー
Photo by Dani Gurgel

ジルベルト・ジルをコンテンポラリー・ジャズ・ラージ・アンサンブルで再創造

 ブラジル南部出身のサックス・プレイヤー、作編曲家のガイア・ウィルマーは、現在はボストンとニューヨークを中心に活躍している。彼女が、エグベルト・ジスモンチへのトリビュートに続いて、ブラジルの至宝ジルベルト・ジルの作品に、ラージ・アンサンブルで挑んだ。コラボレーターに選んだのは、カエターノ・ヴェローゾ(ヴォーカル/ギター)、トリビュート・アルバムでゲストに迎えた、現代ブラジル音楽を代表するシンガーの1人、モニカ・サルマーゾ(ヴォーカル)である。ライアン・ケバリー(トロンボーン)、デヴィッド・スミス(トランペット)らニューヨークのビッグ・バンド・シーンを代表するホーン・プレイヤー、ヴィニシウス・ゴメス(ギター)、ヴィトール・ゴンサルヴェス(ピアノ)のブラジル勢、ホルへ・ローダー(ベース)らがリズム陣を構成している。5曲がジルの作品、2曲はウィルマーがジルをトリビュートしたオリジナルである。

GAIA WILMER LARGE ENSEMBLE 『Parabolico: Reflections On Gilberto Gil, Vol. 1』 Sunnyside Communications(2026)

 「ジルベルト・ジルは、ブラジルという国と文化を真に理解している人物です。その文化がどこから生まれ、どこへ向かうのかを深く理解しています。彼には、それらをさらに高い次元へ昇華させ、新しく、そして卓越したものを生み出す天賦の才能があります」と、ウィルマーは、かつてブラジルで共演したジルへの敬意を表している。そしてジルを深く理解し、同じくブラジル文化を慈しんでいるモニカ・サルマーゾに協力を仰いだ。「自分が愛する誰かの音楽を素材にして、そこから自分自身の音楽を生み出すことに惹かれています」と語っている。ウィルマーは、ジルの美しくも力強いメロディを見事に換骨奪胎し、ブラジル音楽のハーモニーとグルーヴをキープしつつ、コンテンポラリー・ジャズ・ラージ・アンサンブル・サウンドへと昇華させている。ウィルマーのサウンドの特徴の一つは、通常のビッグ・バンド編成に2本のフルートを加えていることだ。このフルート中心の木管サウンドは、ピシンギーニャのショーロ、エルメート・パスコアールのユニヴァーサル・ミュージック、ギル・エヴァンスのアレンジへのオマージュでもある。

 ガイア・ウィルマーのジルへの探求は続き、2027年にはVol. 2のリリースを予定している。ジルベルト・ジルをめぐる音楽の旅は、まだまだ続く。