新シナリオを未プレイでも楽しめる要素たっぷりの傑作

 映画的な美麗な映像のゲーム作品が多くなっている昨今、〈HD-2D〉という3DのCGと昔ながらのドット絵を融合、そこにさらに独創的なエフェクトを加えることで懐かしさと新しさを両立させ、RPGの新たな定番となる形式を確立させたエポックメイキングな大人気シリーズ「OCTOPATH TRAVELER」。そんな〈古き良きゲームらしさ〉と〈最新ゲームの刺激的な遊びの楽しさ〉という相反するような感覚を同時にユーザーへ与えているのは映像だけではなく、その音楽の力も大きい。

 作曲家・西木康智の描く往年の名作RPGを思わせるどこか懐かしさのあるフレーズや、生演奏のオーケストラから民族楽器まで様々な編成やスタイルでのアレンジによって、タイトルにもある〈旅〉の情景や戦闘シーンの盛り上がりを存分に演出しておりファンの心をがっちりとつかんでいる。そのためシリーズを通じてサントラも人気であり、今作はスマートフォン向けのタイトル「OCTOPATH TRAVELER 大陸の覇者」のメインシナリオであるサイドソリスティア・選ばれし者編と、最新シナリオの選ばれざる者編の楽曲が収録されている。

西木康智 『OCTOPATH TRAVELER 大陸の覇者 Original Soundtrack vol.3』 スクウェア・エニックス(2026)

 選ばれし者編は「OCTOPATH TRAVELER II」の世界であるソリスティア大陸を舞台に、主人公・セイルが旅を通じて自身の生まれの秘密に迫る成長や変化をテーマにしている。そのため“旅人セイルのテーマ”のメロディが様々な曲の各所にちりばめられている。〈出発〉のときには少しもの悲しいギター中心のシンプルなフレーズが、別の曲ではヴァイオリンやオケで、テンポやリズムも大きくアレンジされ、同じフレーズがこんなにも表情を変えて様々な場面で輝くとはと唸らされる。

 またシリーズファンが喜ぶ要素も多くある。戦闘場面の“バトル1 - if -”ではシリーズの戦闘でのテーマが新ストーリーに合わせた雰囲気になり、“黒き炎を継ぐ者”では前述のセイルのテーマが次第に初代で流れる“魔神の血を継ぐ者”のフレーズに移っていく展開にはシビれる。

 西木はかつてインタヴューでコンシューマー版では一度に長い時間遊ぶことを前提にコース料理のようにじっくり味わえる曲作りを、スマホ版では5分、10分だけ遊ぶ人でも満足感が得られる牛丼のように書いているという趣旨の話をしていたが、今作はアルバム一枚をじっくり聴く楽しみ方もできる完成度があり、今作を未プレイのシリーズファンの方も充分に楽しめる名盤である。