植松伸夫作曲のテーマソング、鈴木光人・浜渦正志らが手がける楽曲を全175曲の大ボリュームで収録したサウンドトラックが早くも登場
日本発の数あるRPGのなかでも不朽の名作として名高い「FINAL FANTASY VII」。プラットフォームがスーパーファミコンから初代PlayStationへ移行したことで進化したのはゲームシステムのみならず、映像はドット絵の2Dからポリゴンモデルやムービーシーンを導入した3D仕様へ。それに伴い、言わば劇伴的な意味合いを強めた植松伸夫による音楽は、より自由度の高いジャンルレスなサウンドへ──。〈FF7〉はそうした〈新機軸の集合体〉であったわけだが、そこから20年以上を経た現在、同作を現代の技術で再構築するという大規模なリメイク・プロジェクトが進行中だ。まず2020年に3部作のうちの1作目「FINAL FANTASY VII REMAKE」が発表され、続編の「FINAL FANTASY VII REBIRTH」がこの2月末日に登場。陰のある物語の起点〈魔晄都市ミッドガル〉を飛び出すところから本作はスタートするが、その後の彼らが目にする広大なワールドマップと、積み重ねゆく冒険のシネマティックなドラマ性を音楽越しに体験できる作品、それがこの『FINAL FANTASY VII REBIRTH Original Soudtrack』である。

メイン・ストーリーに加え、数多のサイド・コンテンツも含むゲーム世界のスコアや挿入歌を網羅しているだけあって、7枚組(初回生産限定盤はボーナス・トラックCDが追加された8枚組)、全175曲の大ヴォリュームとなった本作。植松によるオリジナル曲のリアレンジ版や〈REMAKE〉曲のヴァージョン違い、そして膨大な新曲群の制作には20名ほどのクリエイターが集結しているが、その中心を担ったのは前作〈REMAKE〉と同様に鈴木光人と浜渦正志。それぞれが突出した方向でその手腕を振るっている。
クスリと笑えるマーチング・ソング“スキンヘッドの歌 -オレの太陽-”(編曲はとくさしけんごとの共作)、ロマンティックなシンセ・ポップ~ブリブリのダンス・ポップへと80sサウンドをインタラクティヴに連結した“ヤッホー! コレル山”、アフロともアラビアンともつかない土着的なリズムとメロディが重なり合う“ゴンガガの森”、多言語で繰り返される呪術的な旋律と神秘的なアンビエンスに取り込まれる“ギはマテリアを求めたり”、ビースティ・ボーイズあたりを想起させるロッキンなラップ・チューン“The fun DON’t stop”など、多様すぎる音楽性で聴き手の想像力を掻き立てる鈴木作の楽曲群。一方の浜渦は、クワイアを効果的に織り込んだ壮麗なオーケストラ・サウンドで本作のクライマックスとなる最終戦を緊張感たっぷりに盛り立てる。また、朗々としたハイバリトンで開幕するオペラ・シーンを表現した連作は、オフィシャルのコメントによると「モーツァルトやレオン・カヴァッロのような曲想、エットーレ・バスティアニーニやカルロ・タリアブーエのような歌手……といった具体的なイメージ」があったそうで、リアルな歌劇としても堪能してみたいと思わせる迫力の完成度。そこから植松伸夫が作曲、野島一成(本作のシナリオライター)が作詞を手掛け、映画『グレイテスト・ショーマン』などで知られるローレン・オルレッドが歌唱したテーマ・ソング“No Promises to Keep LOVELESS Ver.”へと続く流れも互いの染み入るような叙情性を高め合っていてとても良い。
続投の作家陣も力強く支える〈FF流ワールド・ミュージック〉
その他の作家陣は前回からの続投組がほとんどで、例えば、クラウドたちのサポート役となるサイボーグにあてた電子チェンバー・ポップ“チャドリーのテーマ”、哀愁のチェロやスパニッシュ・ギターを交えた無国籍なオーケストラ・サウンドから一転、ゴージャスなリズム・アンサンブルを重ねることでメロディアスに戦闘へ突入する“コレル砂漠”“コレル砂漠 Battle Edit”など、視覚的な音で幅広いシーンを支えた島翔太朗。電子ビートを敷いた壮麗なオーケストレーションでハイスピードのバトル・シーンを演出した“セイザースネイル”がある一方、ノンビートのアンビエンスと冷たく煌めくシンセのレイヤーが闇へと誘う“ギ族の洞窟”や、儀式的な重声とストリングスの響きを暗黒ダブが覆う“血の池”などで正体不明の神秘性を立ち上げた牧野忠義。ケーナやチャランゴ風の素朴な音色が南米のフォルクローレを思わせる“ジュノンエリア -共和国の跡地-”、同曲にコンガやストリングスをはじめとするタイトなリズムが加わることで劇的に緊迫感を高めた“ジュノンエリア -Battle Edit-”、マリンバのミニマルなリズムと多彩な民族楽器がラテン・アメリカの如きネイティヴな風景を描き出す“アンダージュノン -黄昏の村-”といった、どこか土の匂いのする楽曲群を提供した中村佳紀。クラシカルなアレンジのダイナミズムで魅せる楽曲も多いなか、各々の個性が〈FF流ワールド・ミュージック〉の音楽的なスパイスとして貢献している。
また、〈忘らるる都〉までのエピソードが含まれる〈REBIRTH〉には、FF曲のなかでも屈指の人気を誇る“エアリスのテーマ”“J-E-N-O-V-A”“片翼の天使”のニュー・ヴァージョンも登場。編曲はFFと同じスクエニのRPG「OCTOPATH TRAVELLER」の音楽を担当している西木康智で、メインのピアノ・フレーズをときに不穏な、ときに神聖なオーケストレーションで包み込むことでエアリスの清廉さと彼女の辿る運命を示唆した“エアリスのテーマ -白マテリア-”、原曲のシンセ・サウンドを生オーケストラ+クワイアにシフトし、さらにはプログラミングと猛るエレキ・ギターも合流させることで加速度的に膨らむ脅威を劇的に表現した“J-E-N-O-V-A -生命-”、ブラスにストリングス、数々の笛が奏でる主旋律とゴージャスなクワイアが爆発的な緊張感と抗いがたい吸引力をもって畳み掛けられる“片翼の天使 -再誕-”……と、そもそもの名曲に圧倒的な音の奥行きを付与。本サントラのフィナーレを飾る7枚目の終盤に待ち構えているのは、文字通りに〈耳を奪われる〉という昂揚感に満ちた体験だ。
受け取り方はゲームのプレイヤー/音楽のリスナーによってさまざまだろうが、筆者が『FINAL FANTASY VII REBIRTH Original Soudtrack』の聴後に覚えたのは、胸が抉られるようにしみじみとした感傷。リメイク・プロジェクトの3作目の到着がいつ頃になるのかはわからないが、この〈命を問う物語〉の行く末を、首を長くして待ちたい。