15年の集大成 今のmaikoが奏でる《Donna Lee》
日本において“ジャズ・ヴァイオリニスト”という立ち位置が認知されてきたのは、そんなに古い話ではないと思う。数年前まではそれほど馴染みの無かったジャズ・ヴァイオリンを追究し、15年ものあいだ疾風怒濤のごとく駆け抜けてきたmaikoは、先駆者でありトップ・ランナーといっていいのではないだろうか。
「ジャズ・ヴァイオリンというものに対して、まったく知識がなかったんです。でも、寺井尚子さんのインストア・ライヴを偶然観たらすごくかっこよくて。その時ジャズの響きや大人っぽいムードに惹かれて、直感的に“これをやろう!”と決めました」
3歳の時に譲ってもらった楽器を手にして以来、疑いなく歩んできたクラシックの道。京都市立芸大を卒業し、実際に何人もの生徒を抱える身であったにも関わらず、一気に身辺整理して単身上京することになった。ジャズに出会って2ヶ月後にはすでに東京生活が始まっていたというから、その行動力には驚かされる。そして、寺井尚子のライヴに通い詰めて技を学び、自身のリーダー・グループはもとより、フュージョンからダンス・パフォーマンス・チームにいたるまで多くのバンドやセッションで場を踏んできた。
「15年のキャリアを振り返るとどうしても外せないのが、今回のアルバム・タイトル曲の《Donna Lee》なんです。これは寺井さんがデビュー作で演奏されていたし、自分でもよく弾きました。浅草ジャズ・コンテストで優勝した時の《There Will Never Be Another You》や、当時のバンドでよくやっていた《It's Only A Paper Moon》など、今はほとんど弾かなくなったけれど、思い入れの強い楽曲をセレクトして、新しいアレンジで演奏しています」
こう語るアルバム『ドナ・リー』は、maikoにとって5作目にあたる。2006年の最初のアルバム『Trust Your Heart』以来、もっともスタンダード・ナンバーの比率が高い作品だ。親しみやすいメロディが多いため、maikoのプレイを知るための入門編にも最適だろう。また、ジェイコブ・コーラー率いるピアノ・トリオが絶妙に支えているのも特徴だ。
「彼とは、アート・ディレクションもしてくれた青木カレンちゃんのライヴで共演して以来のお付き合い。斬新なアレンジのセンスがアルバムのコンセプトに合っていたので、声をかけました。4曲入っているオリジナルも彼らと一緒にやるということで、普段演奏しているのとはちょっと違うエッジの効いた楽曲を中心に選んだんです」
また驚くべきことに、6作目のアルバム『ザ・デュオ』も立て続けに発表される。こちらは、ピアニストの伊藤志宏との完全デュオで、全曲maikoのオリジナル曲。セルフ・カヴァーや未発表曲を中心に、彼女の作曲家としての魅力もたっぷりと詰まっている。また、バンド編成とは違う深みのある音色や、デュオならではの緊張感が心地いい。
「志宏くんとは、もう長い付き合いになりますね。何をやってもなんの心配もなく、安心して演奏できるんです。こちらは彼とでしか生み出せないスタイルを意識して自分の曲を選曲しました」
『ドナ・リー』と『ザ・デュオ』では編成もテイストも異なるだけに、2枚続けて聴くと同じプレイヤーだとは思えないほどの振り幅がある。それだけ器用であるわけだが、どちらもmaikoが培ってきたジャズへの愛とこだわりが反映されていることに変わりはなく、一本ビシッと筋の通ったたたずまいを感じられる。
「ジャンルは自由にやっているつもりなんですけれど、やっぱりジャズが好きだし、ジャズ・ヴァイオリニストだと思います。今回2枚出せたことで、これまでのひとつの区切りになりました。今後は海外も含めていろんな人と一緒にやってみたいですね」
LIVE INFORMATION
maiko 5thアルバム"Donna Lee"リリース記念ライブ!
○2/25（水）19:30開演 Motion BlueYokohama
○3/6（金）19:30開演 No Bird（銀座）
出演：maiko（vn）Jacob Koller（p）Patrick Glynn（b）Dennis Frehse（ds）
○3/15（日）19:00開演 Strings（吉祥寺）
出演：maiko（vn）、Jacob Koller（p）
maiko 6thアルバム"The Duo"リリース記念ライブ!
○4/4（土）18:45開演 The GLEE（神楽坂）
出演：maiko（vn）伊藤志宏（p)
maiko Sound Spirits vol.26
maiko 6thアルバム"The Duo"リリース記念ライブ!
○4/23（木）19:30開演 JZ Brat（渋谷）
出演：maiko（vn）伊藤志宏（p）ゲスト：Yui（vn）井上真那美（vc）
