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落ち目の脚本家は自分の人生をリライトできるのか?

 人生を一冊の本に例えるなら、結末もわからずに書き出しながらも、やがて章を重ねるごとに物語らしきものになってくる。ところが、そろそろ結末に近づいてきた時、急に筆が進まなくなったりもする。素晴らしいオチになるためには、ここから先、どうしたらいいのか。小説だったら、失敗しても何度もリライトできるけど、人生はそう簡単にはいかない。でも、時は止まることなく流れ、“締め切り”は迫っている。そんな悩めるミドルエイジの脚本家を主人公にしたのが『Re:LIFE~リライフ~』だ。

 かつて、『間違いの楽園』でアカデミー賞脚本賞を受賞してハリウッドの寵児となったキース・マイケルズ(ヒュー・グラント)。でも、『間違いの楽園』以降ヒット作に恵まれず、15 年経った今、どこの映画会社も彼の脚本を買ってくれない。挙げ句の果てに、電気を止められてしまうほどの貧乏暮らし。そんななか、ビンガムトンという田舎町の大学で講師の仕事をしないかという誘いを受ける。金のためにしぶしぶ仕事を引き受けたものの、田舎も学校も大嫌いなマイケルズはヤル気ゼロ。海兵隊あがりの学長、ラーナー(J・K・シモンズ)からシナリオコース志望の学生達が書いた脚本を渡されて、有望な生徒を選ぶように言われても読む気になれず、とりあえず顔写真で判断。その結果、脚本コースは美形の女子大生ばかりになり、そのなかの一人、カレン(ベラ・ヒースコート)と付き合い始める。さらに映画の脚本を書くという課題を出して、一ヶ月間の休講を宣言するという最低な講師ぶり。そんななかマイケルズは、働きながら大学に復学したシングルマザー、ホリー(マリサ・トメイ)と出会う。何をやってもうまくいかず、皮肉とジョークで人生を嘲笑いながら生きているマイルズ。一生懸命やればいつか夢は叶うと信じて脚本を描き続けるホリー。正反対な二人は次第に惹かれていく。

 脚本・監督は、ヒュー・グラントとは本作で4度目のコラボレートとなるマーク・ローレンス。過去の栄光にすがるダメ男の物語といえば、グラントが元ポップ・スターを演じたラヴストーリー『ラヴソングができるまで』(2007年)を思い出すが、今回は恋の行方よりも、マイケルズが新しい生き方(居場所)を見つけるまでの物語になっている。仕方なく始めた授業だったが、次第に教えることが楽しくなりはじめるマイケルズ。タランティーノ黒澤明をリスペクトするゴス系女子サラ、『スター・ウォーズ』オタクのビリー、ミーハーでハリウッドに憧れるアンドレア、驚くほどの才能の持ったクレム、そして、マイケルズを翻弄するカレンなど、個性豊かな生徒達とのやりとりのなかで、マイケルズは自分が脚本を書き始めた頃の初心を思い出し、本気で彼らが書いた脚本と向き合い始める。

 その一方で、ひたむきに生きるホリーの姿に影響されて、マイケルズはもう一度、自分の人生をまっすぐに見つめようとする。マイケルズが抱えている問題はスランプだけではなく、別れた妻のもとで暮らす息子と、長い間、話をしていことがずっと気がかりだった。娘達と仲睦まじく接しているホリーの姿を見て、マイケルズは思い切って息子に電話をする。そうやって、少しずつリライトされていくマイケルズの人生。しかし、カレンとの関係が、大学の倫理委員長を務める堅物の教授メアリー(アリソン・ジャネイ)にバレてしまい、大学を辞めなくてはならないことに。でも、そんな時、クレムの脚本が映画会社に売れて、マイケルズはプロデューサーとして現場復帰しようとクレムに付き添ってハリウッドへと向かう。そして、久し振りに戻ったハリウッドで、マイケルズは人生を変える大きな決意をする。

 ラヴコメの王子様だったグラントが、若い小娘に振り回されたり、息子に電話できずにクヨクヨしたり。本作のグラントは中年男の悲哀を滲ませながら、それを軽妙なセリフまわしと演技で笑いに変えて、等身大の存在感で役者としての新たな魅力を垣間見せる。また、マイケルズの会話に映画ネタを散りばめたり、メアリーが何かとジェーン・オースティンを引き合いに出したり。本作はいたるところに映画や文学ネタを盛り込んだ文系コメディになっている一方で、舞台となったビンガムトンのご当地ネタも満載だ。というのも、ビンガムトンはローレンス監督が青春時代を過ごした思い出の土地。監督は町が生んだ有名人、作家のロッド・サーリングが、町に残る古い回転木馬を題材にして書いた『トワイライト・ゾーン』のエピソードを巧みに物語に取り入れている。そのエピソードのなかで、過去にタイムスリップした主人公が、そこで出会った父親に「過去ばかり振り返ってないで前に進め」と励まされるが、本作はそこに軽やかな語り口で「前に進めば何が待っているかわからない」と付け加えているようだ。そして、人生の脚本家は自分自身だということを、この映画は改めて教えてくれる。

 

CLYDE LAWRENCE Re:LIFE~リライフ~ Rambling(2015)

映画「Re:LIFE~リライフ~」
監督&脚本:マーク・ローレンス
音楽:クライド・ローレンス
出演:ヒュー・グラント《ゴールデングローブ賞受賞》/マリサ・トメイ《アカデミー賞®受賞》/ J・K・シモンズ《アカデミー賞®受賞》/ベラ・ヒースコート/クリス・エリオット/アリソン・ジャネイ/他
relife-movie.com
◎ 11/20(金)よりTOHOシネマズ シャンテ他にて全国ロードショー
配給:キノフィルムズ(2014 年 アメリカ 107 分)

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