祝デビュー10年! 津軽三味線女流奏者、色彩感溢れる2ndアルバムをリリース

 かつてにわかに興った津軽三味線ブームの中、可憐な女流奏者として華々しいデビューを飾ったはなわちえ。ジーンズにT-シャツ姿でビートに身体を揺らしつつ奏でる姿でシーンを賑わしたものだが、早いものであれから10年。その間、ヴァイオリンとのデュオユニット、hanmanasuや箏・尺八とのトリオ、結(ゆい)などでの活動や、積極的な海外公演など、精力的な活動を展開。そして節目となる今年、2枚目のアルバムをリリースする。

 「ユニット活動やセッションを重ねていくことで経験を重ねて、いい形で10年目を迎えることができたと思います。だから満を持してのリリース、といったところです」

はなわちえ 『CoLoRful』 キング(2014)

 柔らかな笑顔で心境を語ってくれたはなわ。しかしちょっと時間がかかりすぎな気もする。ここに至るまで、色々な葛藤や困難もあったに違いない、と想像してしまうのだが。

 「21歳でデビューして、それから4、5年は焦りというか苛立ちが募ることもありましたね。それに当時はうまくいかないと周囲のせいにしていた部分もあって……。あの頃の自分を殴ってやりたいですね(笑)。きっと自分に自信がなかったから、焦ったんでしょう。でもユニットなどの活動で音楽的にステップアップした自分を実感できるようになりました」

 この言葉に思わずホッとさせられた。成長は演奏にも現れていて、収録された作品を聴いても、タップダンサーと共演した携帯電話のCMでの姿を見ても、今のはなわにはどこかに余裕がある。アルバムは前作同様民謡からポップまで多彩な作品を集めているが、そこでも一回り大きくなったはなわがいる。

 「あれもこれも……といているうちに曲数が増えてしまって。いろいろなジャンルがありますが、それぞれに想いが詰まっています。私は三味線という楽器を通して、歌心がある音楽を目指したい。じょんがらにしても早弾きばかりでなく、歌っているような世界観を作りたい。難しいけれど切り拓きたいです」

 確かにここに収められている《じょんがら》は、饒舌な節回しの後に細竿三味線のフレーズが忍び込んでくる、はなわならではのものだし、《磯節》は尺八の藤原道山を迎えて大迫力の世界を創り上げている。ポップな曲にしても同じことだ、着実に想いを形にしつつある。そんな彼女の姿勢が感じられる。

 そしてはなわは現在をステップにさらに一歩先へと伸び上がっていく。このアルバムはそんな彼女の宣言だともいえる。三味線を手に、どれほどカラフルな世界を見せてくれるか、実に楽しみだ。