イスラエル生まれのノガ・エレズは、デビュー・シングル“Dance While You Shoot”で〈銃を撃ちながら踊ってみて〉と歌った。母国の不安定な情勢が反映されたこの曲で、彼女は見事な先制パンチを私たちに喰らわせ、注目のシンガー・ソングライターとして音楽シーンの最前線に躍り出たのだ。その勢いは本ファースト・アルバムでも健在。低音を強調したビートにダーク&ドライな音粒が交わることで生まれる不穏さは、M.I.A.作品を彷彿とさせる。〈みずからの音楽において怒りは主要なテーマ〉と公言するだけあり、ノガのサウンドはとても挑発的だ。そう、人によって眉をひそめるかも……と思うほどに。おもしろいのは、そうしたネガティヴな感情表現によってリスナーを踊らせるという点。歌詞は彼女の個人的な視点から綴られ、そのほとんどが愉快とは言えないのに、私たちは身体を揺らしてしまう。この事実は、怒ることの必要性を突きつけている気がしてならない。