Mikiki編集部の田中と天野による週刊洋楽連載〈Pop Style Now〉。今回はその特別編として、毎年恒例、タワーレコードの洋楽好きスタッフが選ぶ個人的な年間ベストソングをご紹介します。好みのジャンルも店舗や部署もバラバラな15人が、選曲とコメントをしてくれました。タワレコの〈中の人〉は今年、どんな洋楽を聴いていたのでしょうか? *天野
【目次】
1. 寺浦 黎(広報部)、TANAKAHMANN(新宿店)、村越辰哉(新宿店)、小峰隆由貴(デジタル事業推進プロジェクト)、中上雅夫(新宿店)
2. 直嶋紘子(商品統括部)、澤田友広(情報システム2部)、本田昇平(経理部)、具嶋美保子(福岡パルコ店)、寺本将巳(福岡パルコ店)
3. 熊谷 祥(新宿店)、望月 貴(情報システム1部)、鈴木英之介(Mikiki/bounce編集部)、田中亮太(Mikiki編集部)、天野龍太郎(Mikiki編集部)
寺浦 黎(広報部)
ASTRO 아스트로 “After Midnight”
10月にラジオで高橋芳朗さんがK-Popディスコ特集をしていて、番組を聞いてから晩秋まで毎日聴いていました。ラジオから流れてくる曲って、何故あんなにも印象深く耳に残るんでしょう……。晴れやかな秋空にぴったりで、マスコミ対応の現場へと向かっている緊張の電車時間に元気をもらった1曲です(笑)。世界的に注目を集めはじめたASTROに、2022年も大期待します!
TANAKAHMANN(新宿店)
Diana Ross “Thank You”
引き続き大変だった2021年。ともすればネガティブな空気感に支配されそうな世界情勢、分断の危機に瀕する社会に暮らす私たちに向け、御年77歳を迎えたミューズが歌う“Thank You”。おそらくは60年におよぶ彼女のキャリアを支えてくれた感謝の言葉、だけではない深い想いが込められたこの曲を今年の一曲に挙げたい。シンプルで普遍的なメッセージ、それゆえに女神が歌えばそこには愛の息吹が福音となって人々の心に届けられる。まさにラブ・イズ・ザ・メッセージ! アルバムのメインプロデューサーでもあるトロイ・ミラーが手掛けたミッドテンポなブギートラックも最高にラグジュアリーで、この多幸感に満ちた一曲はマンキューソ亡き後のLoftクラシックス認定と言い切りたい。たった3分半でこの美しい世界が終わってしまうのが切なすぎるので、ダニー・クリヴィットあたりのイカしたロングエディットを激しくキボンヌ。
村越辰哉(新宿店)
Judith Hill “Baby, I’m Hollywood!”
マイケル・ジャクソンの映画「This Is It」の名場面のひとつである“I Just Can’t Stop Loving You”のデュエットで登場した女性シンガーがこの人! プリンスの寵愛も受けてソロデビューし、本作は2021年発売のアルバム『Baby, I’m Hollywood!』のタイトル曲。サザンソウルのジャンプナンバー基調でサウンドにはほどよくロック味あり。歌唱はアレサ・フランクリンを思わせるパンチの効かせ方で、本人によるギターソロはレニー・クラヴィッツ~プリンス的なファンキーさ!
小峰隆由貴(デジタル事業推進プロジェクト)
Hope Tala “Tiptoeing”
ここ数年注目しているホープ・タラが、年も終わりに近づく10月にドロップしたこの曲が私の2021年を颯爽と持っていきました。ボサノバをベースとしたソフィスティケイテッドサウンドに、しっかりとビートを刻むドラム、そしてタラちゃんのソフトな声と、いつものホープ・タラなわけですが、この曲はこれまでで最も切な度が高く、遠くを見つめながら〈私、もう一人で生きていくわ〉と呟く女性が増えるに違いない一曲。実際の歌詞はというと、好きになってはいけない人を好きになってしまって、ここから一線を越えても必ず終わりが来ると分かっているのに、この気持ちは止まらないから慎重に進めるの。という不倫がテーマと思しき曲ですが、MVがやたら楽しそうなのは気にしないことにします。
中上雅夫(新宿店)
Albertine Sarges “Free Today”
ドイツ、ベルリンを拠点とするアーティスト。2021年のデビューアルバムからのメイン曲です。ジャケがキモいから、あんま話題になっていないのかな、とも思いますが、注目のアーティストであるといえます。曲の歌詞としてはフェミニスト理論、バイセクシュアリティー、ジェンダーステレオタイプ、うつ病、精神的健康についての考察を取り入れていて、この曲もフェミニスト理論をテーマにしていますが、曲調がポップで高揚感があって最高なんですよね。ほんとうに2021年の個人的テーマソングと言ってもいいくらい、もっとも聴いた曲でした。
直嶋紘子(商品統括部)
Richard Ashcroft feat. Liam Gallagher “C’mon People (We’re Making It Now)”
リチャード・アシュクロフトとリアム・ギャラガーがデュエット、と聞いた時の最初の感想は〈え、今2021年だよね?〉でした。しかもそれが2000年リリースのリチャードの“C’mon People (We’re Making It Now)”のカバーなんて!と驚いたものの、90年代のUK音楽シーンを牽引したヴァーヴとオアシスのフロントマンによる垂涎のコラボはとにかくやっぱりかっこいいのです。私は原曲至上主義というか、どちらかと言うとリアレンジされた曲よりもオリジナル曲の方が好きな種の人間なのですが、今回ばかりは完全にやられました……。2人の掛け合いには心が震えるものがあり、体内から妙なエネルギーが沸き上がるような感覚にさせてくれました。いつまでも90年代を引きずってんなよーとか思わずにとにかく全人類に聴いて欲しいです。
澤田友広(情報システム2部)
Noga Erez “End Of The Road”
最初は何かのプレイリストで聴いたのかな……誰かもわからず、聴こえてきたこの曲に〈これまでにない新しい音楽〉に触れた感じがして、今年一番印象に残った曲です。楽曲は、音、リズム、ラップ、歌詞(英語わかんないけど雰囲気ね)から、シリアスな雰囲気を感じるんだけど、ちゃんとメロディーはポップだったりして絶妙な組み合わせが好きなのかも。なにより、ラップのような歌のような、独特な歌い方が耳に残っていて、よく脳内ループしてました。原曲のMVも良いですが、〈Against The Machine〉と銘打って、アコースティック楽器でのみ演奏してるバージョンが公開されてて、これがまたカッコイイです。ホーン系の入れ方とか、リズムを刻む感じで派手にしてなかったりとか。
本田昇平(経理部)
David Byrne “Burning Down The House”
映画「David Byrne’s American Utopia」サントラより。2019年リリースかと思いますが、映画の国内公開が2021年という事で選出しました。まずは映画を観て欲しいです。今年一番の音楽体験でした。
具嶋美保子(福岡パルコ店)
The Death Set “Elephant”
とにかく、暴れたい! ここ最近の世情もあるのか、たまに家帰って思うのです。2008年の〈フジロック〉での彼らがとにかく楽しかったのをふと思い出して調べると、なんと、9月に新作を出してるじゃないか! ってことで、手にした時は狂ったように聴いてました。初期ビースティ・ボーイズのようなハードコアとヒップホップスタイルに、ローファイエレクトロサウンドを融合させる音楽性で、とにかくアクティブ。なにも考えず、お酒飲みながら聴くとより一層楽しめます。なんだかモヤモヤする気持ちで沈んでた私を救ってくれた1枚。
寺本将巳(福岡パルコ店)
No Rome “I Want U”
この時期になると何を聴いてきたか年間ベスト的なこと考えたりするのですが、この音楽シーンが変わっていく中で今年も山ほど素敵な音楽に出会い力をもらいました。そんな沢山の出会いの中からアルバムではなく1曲に絞り込むのは難しかったのですが。。。もう純粋にリピート回数が多かった曲を選ばせて頂きました。The 1975のマシュー・ヒーリーに見いだされロンドンを拠点に活動しているノー・ロームの待望のファーストアルバム『It’s All Smiles』は今年繰り返し聴いた愛聴盤ですがその中から1曲。自分にはしっくりくるはずもないラブソングですが、切ないメロディー、1曲の中で表情が変わっていくサウンドがいつ聴いても新鮮で心に沁みました。
熊谷 祥(新宿店)
Kolektif Istanbul “Pirinsko Köçek”
ここ数年は雑誌やネット情報よりレコードショップやDiscogsで気になったアーティストの音源からお気に入りを見つけることが多くなっているのだがこのコレクティフ・イスタンブールも何の予備知識もなくお店でかかっているのを気に入って購入。グループ名から分かるようにトルコを含んだバルカン半島島南部の音楽家集団によるアルバム。アルバム全編良いのだが特に9曲目“Pirinsko Köçek”はPFMのマウロ・パガーニのソロ『地中海の伝説』やアレアのファースト辺りが好きな私にドンピシャ過ぎるキラー曲。ロック的なキーボードの前奏から管楽器によるオリエンタルなユニゾン決めフレーズをビシバシ繰り出してくる流れにアドレナリンが止まらなくなります。その他ボーカル曲とインスト曲のバランスも良く今年一番の掘り出し物。裏ジャケに書いてある〈プログレッシブ・ウェディング・ミュージック〉だけ未だに意味不明です。
望月 貴(情報システム1部)
Rage “Memento Vitae (Overture) ~ Resurrection Day”
2021年は(なぜか)個人的なレイジ・リバイバルブームだったところに登場した新作です。3人編成に思い入れがあったので4人編成でどうなる事かとドキドキしながら聴いたら、無駄に荘厳なオープニングから流れ込む1曲目でテンションが爆上がり。前作がメロディー的にインパクトに欠ける印象だったのですが、今作は〈らしい〉リフ回しやサビのメロディーが戻ってきた印象。キレッキレの鋭角ギターと男臭いボーカルはやっぱ止められない! 捨て曲が無いと思うのですが、やはり1曲目のタイトルトラックを激押し。
鈴木英之介(Mikiki編集部/bounce編集部)
파란노을 (Parannoul) “아름다운 세상 (Beautiful World)”
轟音ギター越しに、仄暗くも甘いピアノのフレーズがループする。そのサウンドの残酷なまでの甘美さは、もう戻れない青春のそれとどこか似ている。この曲が収録されたアルバム『To See The Next Part Of The Dream』について、パラノウル自身が載せているBandcampの紹介文を読むと、彼もまた〈過ぎ去った青春〉というものを痛切に意識していたことがわかる。彼の気だるい歌唱からは現在を生きるしかないことへの諦念が感じ取れるが、一方で青春への狂おしいほどの未練や郷愁もまた映画「リリィ・シュシュのすべて」からの引用箇所など随所に滲んでいる。こうしたアンビバレントで切実な表現は、受け手の感情を激しく揺さぶるものだ。私もまたこの曲を聴く度に、古傷が強く疼きだすような感覚を抱かずにはいられない。
田中亮太(Mikiki編集部)
Facta “Verge”
ダンス/エレクトロニックミュージックを中心に聴いた一年でしたが、そのなかでアルバムとして一枚挙げるならファクタの『Blush』。この“Verge”を筆頭に、アンビエントなシンセやアコースティック楽器の音色と、ユニークなビート構築で組み上げた、端正ながらもチャーミングなビートミュージック作品でした。レフトフィールドなのにバレアリック、という塩梅が絶妙。『LOVEBEAT』、『Point』、『red curb』の20周年にあたる2021年に聴きたい電子音楽という視点からもハマるのでは。
天野龍太郎(Mikiki編集部)
Aeon Station “Queens”
毎年、いわゆる年間ベストについて考える時期になると、〈今年も音楽を聴くのは楽しかったな〉〈新しい音楽を聴くのが楽しくないことなんて一瞬たりともないな〉としみじみ感じ入ります。とはいえ、この連載や他の媒体でも一年を総括する原稿をやまほど書いたし、だからこそ、個人的なフェイバリットの一曲を選ぶのってめちゃくちゃ難しい。でも、レンズのケヴィン・ウィーランが新しく始めたイーオン・ステイションの“Queens”には、ハートをがんがんに撃ち抜かれました。こんなに胸を強く、深く打つロックンロールはひさしぶりに聴いたな。2021年はヤング・ドルフやドレイコ・ザ・ルーラーが命を奪われて、悲しいことやつらいことがたくさんあった年でしたが、ロック、特にインディーロックにまたときめくことができた年でもありました。2021年にMikikiを読んでくださって、ありがとうございました。2022年もMikikiをどうぞよろしくお願いいたします!
