コンスタントなリリースとライヴ活動の裏側で起きていたメンバー脱退の危機を乗り越えて、より攻めの姿勢を示すサウンドを轟かせたミニ・アルバム『環状線デラシネ』が完成!

 70年代のグラム・ロックやパンク・ロックなどの影響を強く受けながらも、決してレイドバックせず、極めて現代的なロック・ミュージックを体現し続けてきたDroogが、通算5作目となるミニ・アルバム『環状線デラシネ』をリリースした。昨年12月に4枚目のミニ・アルバム『Monochrome』をリリースしたあとも精力的なライヴ活動を展開。「ライヴに関しては、幸運なことにロックの先輩方と対バンする機会が多かったので、随分と鍛えられたと思います。何度も悔しい思いをしてきましたが、最近ではライヴの途中でお客さんの反応や目つきが変わってくるのを快感に感じてます」(カタヤマヒロキ、ヴォーカル:以下同)と明確な手応えを得ていたようだが、その一方で彼らはメンバー脱退の危機と直面していたという。

 「メンバーのひとりが家庭の事情で地元に帰らなければならないということになりそうだったんです。僕たち4人は幼稚園からの幼なじみで結成されていて、もちろんお互いの家庭も知っています。だからこそ全員で悩みました。でも、結果的に見えてくて気持ちは〈バンドをやりたい〉というもので、最終的には本人も〈バンドを続ける〉という結論を出しました。この選択が正解か不正解かは誰にもわかりません。ただ、決めた道は思いっきり進まなきゃと思っています。僕がロックンロールから教わったのはそういうことなので」。

Droog 環状線デラシネ ユニバーサル(2017)

 ロックンロール・バンドして生きる決意を改めて固めた彼ら。その強い思いは『環状線デラシネ』に反映されている。作品のテーマになっているのは、〈環状線〉〈デラシネ〉、そして〈月〉。

 「全6曲が出揃ったときに、この3つのキーワードがあったんです。環状線は同じ場所をぐるぐる回るもので、デラシネは根無し草という意味。相対していて両極端なところがDroogっぽいなと思いました」。

 「2015年にTHE YELLOW MONKEYが活動を再開したときに感じた〈今の日本にもこんなロック・バンドがいる!〉という嬉しさと、数々の往年のロック・ソングからの問いに対するアンサーソングという意味合いを込めて」制作されたストレートなロック・チューン“Band Of Gold”、映画「ペーパームーン」をモチーフに〈When you grow up,don't be the kind of woman who goes around deceives men(大人になっても男を騙すような女になるなよ)〉というセリフが引用されている“ペーパームーン・ライト”、圧倒的なスピード感に溢れたバンド・サウンドと共に〈栄光に向かって走った あの列車には乗れなかった〉という歌詞がひた走る“環状線”、そして、苦難を乗り越え、さらに強くなったメンバー同士の絆をテーマにした“We Are Family”などを収録した本作。ボカロPとして知られる蝶々P、TVドラマ、映画、ゲーム音楽などを手掛ける礒江俊道がサウンド・プロデューサーとして参加し、アレンジ、サウンドメイクのクォリティーもさらに上がっているが、軸になっているのはもちろんオーセンティックなロックンロールだ。4つ打ちのビートやエレクトロニクスを採り入れたバンドが数多く存在する現在のシーンにおいて、あくまでも肉体的なロックンロールにこだわり、そのなかで新しい表現を追求する彼らの姿勢は本当に刺激的だ。

 「エレクトロやデジタル・ロックも聴きますし、やってみたい気持ちもありますが、結局、いちばんガツンと来るのはやっぱりシンプルなロックンロール・バンドで。もともと僕たちはTHE MAD CAPSULE MARKETSのコピー・バンドをやっていたので、パンク・サウンドに打ち込みが入ることにも抵抗はないんですが、根本的にはパンクだったりロックンロール・バンドのシンプルなカッコ良さを求めているんだと思います」。

 『環状線デラシネ』のリリース後には全国ツアーへ突入。2010年のデビューから7年。ロックンロールへの愛と情熱をさらに強めたDroogの新しいピークはここから始まるのだと思う。

 「今回のアルバムはライヴの後半に向いている曲が多い印象なんですが、そのクライマックス感を前半から出して行けたらおもしろくなると思っていて。〈初めからクライマックス〉をキーワードに今回のツアーやワンマンに臨みたいですね。来年はフル・アルバムを作って、できればワンマン・ツアーをやりたいと思っています。ロックンロール・バンドをやっているという自負を持ち、ライヴハウスでは胸を張ってライヴをやって。これからも自分たちが決めた道を突き進みたいですね」。