17歳でのメジャーデビューから21歳までの5年間をありのままに収録したのが、5th Anniversary Album『しおりごと-BEST-』
現役女子高生シンガーソングライターとして2013年のメジャーデビュー以来、TVへの出演や数々のアーティストとの共作など、活動の幅を大きく広げてきた新山詩織。5年の月日を経た2018年、21歳となり、着実にステップアップしてきた彼女の足跡を5th Anniversary Album『しおりごと-BEST-』とともに振り返ってみよう。
新山詩織を語るにあたって、きってもきれないのが、ボーナストラックに収録されている“だからさ~acoustic version~”だ。2012年、高校2年生(16歳)の春に「Treasure Hunt~ビーイングオーディション2012~」に応募し、披露したのが“だからさ~acoustic version~”なのである。そのオーディションでグランプリを獲得し、この曲はメジャーデビュー(1st)シングルの前に0枚目のシングルとして発表という非常に珍しい形で、アーティストデビューとなった記念すべき曲である。
デビューということで少々余談だが、1stアルバムのリリースより前に「ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2013」、「JOIN ALIVE」等の大型フェスに出演している。2013年のデビュー間もないタイミングで大舞台に立つということからもオーディションでその才能に審査員がいかに原石として将来を期待したのかが証明されている。
“ゆれるユレル”、“Don’t Cry”、“ひとりごと”、“今 ここにいる”の4曲は1stアルバム『しおり』からの選曲となった。この4曲はシングルとしてリリースもされており、タイアップなどもついて話題となった曲ばかりである。だが、この4曲は語られる歌詞世界は違えど、どの曲も、デビューに向けて、デビュー以後も多くの不安や焦燥感を吐露しても歌だけは素直に歌っていたいという彼女の真面目な気持ちを感じさせる共通項を持っている。また曲によって、揺れ動く気持ちやある時を切り取った瞬間に見える景色など、10代だからこそ見えて感じるものを包み隠さず出し切った楽曲も特徴的で、世の中にはハッピーで前向きに切り取られた楽曲も多いが新山詩織独特の内面に潜む感情をさらけ出した歌詞が個性を生んでいる。
この4曲の次に収録されているのが、“絶対”、“ありがとう”だ。“絶対”は2014年12月に高校卒業後初となったシングルで、“ありがとう”は2015年3月にリリースされたシングルだ。ともに2ndアルバム『ハローグッバイ』に収録されている。1stアルバム『しおり』から一転、『ハローグッバイ』は〈誰かを思う気持ち〉が描かれている。高校卒業という社会人としての第1歩を歩み始めた中で様々な出会いを通して、未来へ向かう前向きな気持ちを表現した作品となった。その中でもアルバムのキーとなる2曲が選出されている。
“隣の行方”、“もう、行かなくちゃ。”、“あたしはあたしのままで”、“恋の中”、“糸”、“Snow Smile”は3rdアルバム『ファインダーの向こう』に収録されている。その中でも、一番のトピックは、新山詩織本人のドラマデビュー作品となったフジテレビ系月9ドラマ「ラヴソング」の劇中歌に、主演の福山雅治が作詞作曲した“恋の中”が決定したことだろう。松雪泰子主演映画「古都」のエンディング曲にもなり、アルバム初の収録となったカバー曲“糸”もトピックといえる。中島みゆきのカバーである“糸”はスピッツや森山直太朗などでプロデュースをしている笹路正徳が担当。また、“あたしはあたしのままで”ではaikoやいきものがかりのプロデューサー、アレンジャーでもある島田昌典がプロデュースしていたりと、名だたるサウンドプロデューサーたちとのコラボにてシンガーソングライターとして大きく成長を感じさせる楽曲が並んでいる。
そして、最後の“さよなら私の恋心”である。この曲はCharaとコラボし、Charaが作曲、新山詩織が作詞(共作)を担当し、単なる失恋ソングではなく、そこから立ち直るまでの繊細な気持ちを表す曲となっている。この“さよなら私の恋心”のミュージックビデオは、彼女自身もファンである、映画「リリイ・シュシュのすべて」などで知られる岩井俊二監督がメガホンを取ったことも話題になった。新山詩織の世界と岩井俊二が描く独特の世界が見事にマッチングした是非見て欲しい作品である(今作の初回限定盤特典のDVDにそのMVも収録)。
17歳でのメジャーデビューから21歳までの5年間をありのままに収録したのが5th Anniversary Album『しおりごと-BEST-』。高校卒業までに、その時その時見えた内に秘める押し留めた気持ちを一歩引いた感覚で歌ってきた彼女から、20歳を迎えて前向きな気持ちや恋を唄う曲に変わり、デビュー以来コンスタントに続けているライブ活動やそこでの様々な出会い、TVへの出演、クリエティブな挑戦などを通して、シンガーソングライターとしての成長や魅力、個性が育まれていることがよくわかる内容となっている。