シーズン4は、日本が舞台に! ロマン・コッポラ監督が語る最新シーズン

 ゴールデン・グローブ賞やエミー賞を獲得した、米Amazonプライム・ビデオのオリジナル・シリーズ「モーツァルト・イン・ザ・ジャングル」。名門ニューヨーク・フィルにも在籍したオーボエ奏者ブレア・ティンドールがクラシック業界の裏側を綴った回想録「モーツァルト・イン・ザ・ジャングル~セックス、ドラッグ、クラシック」を原作に、ロマン・コッポラ、ジェイソン・シュワルツマン、ポール・ワイツらが製作・脚本・監督を務めて独自にドラマ化した。ニューヨークの架空の名門オーケストラを舞台に、ガエル・ガルシア・ベルナル演じる世界一ホットなカリスマ指揮者ロドリーゴと、彼を取り巻く劇団員、経営者、友人たちのドタバタ騒動や悲喜こもごもを描く傑作群像コメディ。来年2月配信予定のシーズン4では日本を舞台にしたエピソードも登場する。ということで去る8月、主要キャストを含む撮影隊御一行が来日。撮影を終えたばかりのロマン・コッポラに話を聞いた。

 「僕の家族や親族には音楽業界に身を置いている者が多いんだ。従兄弟でもあるジェイソン・シュワルツマンをはじめ、みんな音楽に深い愛情を抱いている。それもあって、クラシック音楽界を舞台にしたドラマを作りたいと思ったんだ。僕は何か学ぶことができる企画に関わっていきたいからね。僕自身クラシック音楽にはずっと触れてはきたけれど、もっと知りたい、学びたいといつも思ってきた。それがこのドラマへのモチベーションになったんだ。一癖も二癖もある音楽家たちが集うオーケストラは、ある意味、社会の縮図。人の集まり、コミュニティ、あるいは家族などがそれぞれの役割を果たしながら、ひとつのものをみんなで力を合わせて作り上げる物語はとてもリッチだと思う。ただ、音楽家たち、アーティストたちの場合は普通よりちょっとクレイジーだからね、そのぶんもっと面白くなるのさ(笑)」

 シーズン開始時から製作、脚本、そして鍵となるエピソードのいくつかの監督をも手がけているコッポラだが、今回の来日でも、自らの監督するエピソードの撮影を行った。日本で撮影した和風庭園や名曲喫茶などの風景も登場するようだ。

 「ぼくが考える日本のおとぎ話というか。ファンタジックな側面が反映されていると思う。石岡瑛子さんのデザイン感覚に刺激を受けて、彼女のスピリットを活かしたシーンとかもあるよ。楽しみにしていてほしい」

 過去にはモニカ・ベルッチ演じる美貌のオペラ歌手がプラシド・ドミンゴ(本物!)と共演するスペクタクルな水上ステージが登場したり、現実の一歩先を行くような本格的な劇中演奏シーンも見所のひとつだが。中でも仰天したのはシーズン3、オーケストラの刑務所慰問公演を綴ったフェイク・ドキュメンタリー風の回。難曲も難曲、フランス現代音楽の巨匠オリヴィエ・メシアンの代表作『トゥーランガリラ交響曲』(1949年)を実際の囚人たちの前で演奏している。これもコッポラの脚本・監督作だ。

 「あの曲はメシアンが初期の電子楽器、オンド・マルトノのために初めて書いた曲。史上初のエレクトロニック音楽だ。でも、困ったことに今あの楽器をうまく弾きこなせる人がほとんどいない。クラシックのマニアでもあの楽器の生演奏を聞いた人は少ないんじゃないかな。だから刑務所であの曲を演奏するというアイディアは、すごくクールだと思った。もっとも洗練された音楽愛好者ですら聞いたことがない音を、刑務所で、初めてクラシックに接するような受刑者たちに聴いてもらえるんだから。彼らはそれが何だかはわからなかったようだけれど、あの音楽を心から楽しんでくれた。涙を流してくれた。音楽が純粋に彼らと共鳴したんだ。本当に純粋で、美しい瞬間だった」

 クラシック=お堅い音楽、というイメージはまだまだ根強いけれど。今を生きる人々の人生を映し出す音楽としてのクラシックはヒップでクール、まさに今、現在進行形の音楽だ。「モーツァルト・イン・ザ・ジャングル」はそんなことを私たちに教えてくれる。

 「クラシック音楽をすでに確立されたものと捉える人もいる。新しい、革新的なことをやろうとしている人もいる。様々なところで両者の闘いが起きている。クラシック音楽に今なお生命感があるのか、それとも死んでしまっているのか。とても気になるね。答えはわからない。でも、ぼくにインスピレーションを与えてくれるのはいつだってリアルなもの、真実であるもの。そういうものはなぜか過去の文化に多い気がするんだけれどね」

 


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「モーツァルト・イン・ザ・ジャングル」シーズン4 作品概要
 ロドリゴ(ガエル・ガルシア・ベルナル)とヘイリー(ローラ・カーク)の関係が公になったことで、新たな物語が展開していく。ヘイリーが指揮者としての自分を確立しようと奮闘する一方で、ロドリゴはインスピレーションを持ち続けようと模索する。トーマスはブルックリンを拠点に活動する新進のオーケストラに参加、グロリアに闘いを挑む。

製作総指揮:ロマン・コッポラ、ポール・ワイツ、ジェイソン・シュワルツマン、ウィル・グラム ORグレアム、キャロライン・バロン
出演:ガエル・ガルシア・ベルナル、ローラ・カーク、サフロン・バロウズ、マルコム・マクダウェル、バーナデット・ピーターズ、ハンナ・ダン
特別出演:デブラ・モンク(「ラブ&マネー」)、マイケル・エマーソン(「LOST」)、ジョン・キャメロン・ミッチェル(「ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ」)

 


「モーツァルト・イン・ザ・ジャングル」シーズン1~3はAmazonプライム・ビデオにて見放題独占配信中。(海外ドラマNAVI)

シーズン1
交響楽団の舞台裏で起きていることは舞台上と同様に興味深い。製作総指揮はポール・ワイツ、ロマン・コッポラ、ジェイソン・シュワルツマン。新たに就任した傲慢な名指揮者ロドリゴ(ガエル・ガルシア・ベルナル)が騒ぎを引き 起こし、若いオーボエ奏者ヘイリー(ローラ・カーク)は大きなチャンスをつかもうと望む。
主演:ガエル・ガルシア・ベルナル/ローラ・カーク/サフロン・バロウズ

 

シーズン2
何か月にも及ぶリハーサルも実らず、楽団は足踏み状態。世界ツアーと色恋沙汰で楽団の中は大混乱している。盛り上がるストライキの波は楽団員の友情関係にも傷をつけてしまっている。果たしてロドリゴはハーモニーを作り上げられるのか。
主演:ローラ・カーク/サフロン・バロウズ/バーナデット・ピータース

 

シーズン3
ニューヨーク交響楽団はついに崩壊してしまった。そんな中、ロドリゴはオペラの指揮をするためイタリアのベネチアへ。ヘイリーはアンドリュー・ウォルシュのヨーロッパツアーに同行するが、それは期待していたような物とは違っていた。ニューヨークに残った面々は、何とか楽団を修復しようと奔走する。
主演:ガエル・ガルシア・ベルナル/ローラ・カーク/サフロン・バロウズ