活況が続くシティー・ポップ・シーンに、ソフィスティケーションを極度に高めた、アーバンな都市型ポップ・グループが登場した。Poor Vacationという5人組である。ヒップホップ、アシッド・ジャズ、AOR、ブギー、ファンク、ラテン、オールディーズなどなど、さまざまなスタイルを持つアーティストが混在し、続々とニュー・カマーが登場してくる昨今だが、こうなるとブーム便乗組も少なからずいて……。はたして5年後、10年後のシーンの構図はどうなっているか、不安になってしまう。そんななかでデビューした Poor Vacationだが、元々は中核である楢原隼人のソロ・プロジェクトとしてスタートし、主にライヴ・シーンで活動を続けてきた。それが何故グループへと進化を遂げたか、そして何処へ進もうとしているのか。そのあたりを、リーダーの楢原とトラックメイカーのcoffee_and_tvに訊いてみた。

Poor Vacation 『Poor Vacation』 Mastard(2018)

 

ひとりでやるべき、ソロが向いていると言われたはてに

楢原隼人(ヴォーカル)「元々はカナタトクラスというバンドを組んでいて、作曲とギターを担当していました。リーダーだけどフロントマンではない、という立ち位置で。そのため他のメンバーに対して、強く出すぎてしまった、多くを求めすぎてしまった、という反省がありました。その当時から〈ひとりでやるべき、ソロが向いている〉と言われていたんです。とはいえ最初は、そうするつもりは全然なかった。それがあるときふと思い立ちまして、やってみるか!と。それで立ち上げたのがPoor Vacationです」

――スタートはワンマン・プロジェクトで、それをライヴで披露するためにメンバーを集めた?

楢原「そうです。自分のサウンドを生演奏で再現するため、必要な音に当てはめる形でミュージシャンを集めました。なかには初対面の人もいたのですが、素直に一緒に演ってみたい人に声を掛けました」

2016年のライヴ映像

――それが徐々にバンド化していった……。

楢原「ハイ、自分が好きなプレイをする人を集めましたから、最初から彼らに対する期待感があったんですね。それでもはじめは僕から細かい注文をさせていただいていたんですけど、仲良くなるに従っていろいろアイデアを出してもらうようになり、逆に彼らから提案をもらったりして……。そうなると、もうソロとサポートという関係性ではなくなって、自然にグループへと移行していきました」

――すると、いまのライヴは現行メンバーの5人で?

楢原「ライヴでは生ドラムを入れて6人で演っています」

――アルバムでは打ち込みと生がイイ按配で混在してますね?

楢原「集まったばかりの頃は、僕が打ち込んだプリ・プロをメンバーの演奏に差し替えていく作業でした。でもその過程で新たに生まれた楽曲に関しては、最初からパートごとにメンバーへと投げることが多くなって、スタジオで全体像を練り上げました。トータルすると半々ぐらいのバランスです」

――曲作りはすべてご自分で?

楢原「“The Sign of Morning”の歌と曲は、ギターの千葉(泉)がやっています。他のメンバーも曲を持ってきてくれましたが、レコーディングの段階で使える状態なのは、これだけでした。ですから、今後はもっと増えると思います」

――曲はヒラメキで書きますか? それとも楽器を手にしてひねり出すタイプですか?

楢原「ひらめきで書くタイプですね。だからそのラフ・スケッチみたいなデモは大量に溜まっています。ただそこからブラッシュ・アップしていく作業が進まず……(苦笑)。でもココにいるcoffee_and_tv(以下、coffee)はDJでもあるので、楽器を弾かないのに、スゴイ曲を持ってくるんですよ。そこは僕にはないところで、刺激を受けます」

coffee_and_tv(シンセサイザー)「率直に言えば、僕はロクに楽器が弾けない。だからトラックから作っていくんです。いろいろなアプローチができる、というのがグループの特徴になれば、と思っています」