これからは無理なく、楽しさを大事にしたい

――2011年から実質的にふたりでの活動がなくなって、2013年に正式に解散を発表。それから別々の道を歩んでいたわけですが、久しぶりに再会したのが……。

Azumi「去年です」

――20周年の節目に何かできないかということで再会したわけですよね。でもそれぞれソロとしてのキャリアを重ね、自分のやり方を確立してきたなかで、ワイヨリカを再結成させようというモチヴェーションはすぐに上がったんですか?

Azumi「モチヴェーションは上がったんですけど、何を作ったらいいのかというのはしばらく模索しましたね。半年くらい模索しました」

so-to「僕は、やるのはいいけど、働いているからたいへんだな、みたいな(笑)」

――so-toさんは再結成に際してのコメントで、〈ファンの皆様とWyolicaのReunionといった感じで、 (ソロでの)Soulcolorの活動と平行しつつ、 無理のない感じでライヴを続けて行けたらなと思ってます〉と書いてましたよね。〈無理のない感じ〉というのが大事だったりするんですかね。

so-to「はい。がっつり構えてやるより、僕も50になったので、この先は楽しんで音楽をやりたいという気持ちが大きくて。若い頃は楽器も下手で苦しみながら必死にやっていたけど、ギターもちょっとは弾けるようになったし、ライヴの楽しさもわかるようになったので、無理はしないで、楽しんでやる方向でいければと。苦しみながらやるんじゃなくてね」

――Azumiさんは?

Azumi「いや、私は必死でがんばろうって思ってますよ(笑)。でもso-toくんがそういうふうに言うのも正しくて、苦しみながらやるのはもう無理だし、若い頃は苦しさのなかからいい作品が生まれたりもしたけど、いまの時代はそういうことでもない。やっぱり自分たちが楽しくないと伝わらないだろなって思うから、楽しんでやっていくことを大事にしたいですね。それに私は何よりもファンのみなさんに喜んでもらえることがいちばん嬉しいので。ファンのみなさんや周りにいてくれるみんなが喜んでくれて、〈ライヴ、行くよ!〉って喜んでくれるのが何よりなんですよ」

――それこそがいちばんのモチヴェーションになると。

Azumi「本当にそうです」

――そうして20周年記念のリマスター・ベスト・アルバムを出すことになり、ベスト盤を出すなら新曲も作ろうと?

Azumi「はい。現状、リスナーがワイヨリカの音源を(カジュアルに)聴ける方法がなかったので、そこはなんとかしなきゃと思って、いろいろ打診しはじめて。そんななかでベスト盤を作りましょうってなったときに、5周年でベスト盤を出したときも新曲入れたし、やっぱり新曲入れたいなって思って、そこから話がどんどん進んだ感じでしたね」

『Beautiful Surprise ~Best Selection 1999-2019~』紹介動画
 

――新曲の方向性はある程度話し合って決めてからレコーディングに入ったんですか?

Azumi「いえ、闇雲に(笑)」

so-to「どういう方向性がいいのかわからなかったから、とりあえずいろんな曲を作って」

Azumi「アルバム1枚分くらい作ったんですよ。でも最終的に出せるものとして完成させられたのは、ここに入っている3曲なんですけど」

――ワイヨリカらしさに拘って作ったんですか?  それともそこに捉われず自由に作ろうと?

so-to「せっかくいただいたチャンスなので、ちょっと売れ線を狙った曲も作ってみたんですけど、ボツっちゃいましたね(笑)」

Azumi「〈売れ線を狙ってみた〉って言うんで聴いてみたんですけど、〈ん?  これ、ワイヨリカ?〉みたいな曲で(笑)」

 

もう二度とまちがえないよ

――そんななか、ベスト盤のタイトルにもなった“Beautiful Surprise”はどのあたりの段階でできたものなんですか?

Azumi「けっこう後半だったよね」

so-to「そうだね。これはいま自分がやっている音楽のスタイルに近いもので、Azumiちゃんが歌ったらいいだろうなと思って。最初のデモとレコーディングしたものとではギターの弾き方が違っていて、それはキーの都合で変える必要があったからなんですけど、このシンプルなアレンジになって、いいのが出来てよかったなと」

“Beautiful Surprise”
 

――曲が先にできて、Azumiさんはそれにインスパイアされて歌詞を書いたんですか?

Azumi「そうですね。こういう曲は歌詞もso-toくんが書いたほうが絶対にいいと思っていたんですけど。でもタイトルはso-toくんが仮の状態から“Beautiful Surprise”って付けていて、素晴らしいタイトルだな、これからまた始まるワイヨリカを表わすワードとして最高だなと思ったし、アルバム・タイトルにもしたいとすぐに思って。そのタイトルから歌詞を書いていったんです。この曲に関してはふたりでいろんな話をしたよね」

――どんな話を?

Azumi「この曲にはこういう思いがあって、みたいな。なんだっけ?  酔っ払って話してたからよく覚えてないんだけど(笑)」

so-to「携帯のメモ機能に話したこと書いて、あとで見直したんだけど、なんだかよくわからなかった(笑)」

――はははは。いや、でもこの歌詞はふたりが別々の道を歩き始めることになったときの想いのようでもあり、言葉が重く響きますね。〈なかったことになんて出来ない 君との最後の日も〉とか、〈あのころ僕らは何かにしがみついたり 味方でいることが怖くなってしまったり〉とか。

Azumi「醸し出してますね(笑)。ワードごとにいろんな思いがこもってはいます。私としてはファンのみなさんの顔を浮かべて書いたところもあるし」

――〈もう二度とまちがえないよ もう二度と〉とも歌っています。かつての“さあいこう”にも〈もう二度と 二度と 間違えないように〉というフレーズがあって、あれは青春の最中でそう歌っていたものでしたけど、そこから年月を経て、“Beautiful Surprise”では大人になったAzumiさんがいまの気持ちでそう歌っている。そこにグッときます。

Azumi「まあ、ちょっとした遊び心というか。“さあいこう”はso-toくんの歌詞ですけど、みなさんが大切に思ってくれている曲だし、新しい曲に昔のワードも散りばめたいと思って入れてみたんです。大人になってもやっぱり間違えてばっかりですからね。むしろ大人になってからのほうが間違えてばっかりだよって思う(笑)」

――歌い方に関して意識したところはありますか?

Azumi「マイクの前に立つまでどんな声が出るかわからないし、出した瞬間の声がよければオールOKだなってことで何も意識せずに臨みました。ワイヨリカで歌うときは〈静かに熱く〉みたいな感じなので、難しいっちゃ難しい。どこでエモーショナルになるかとかテクニック的に難しい曲なんですけど、でも自分の納得のいく声色が出せたと思いますね」

 

2人それぞれの想いが詰まった30曲

――Disc2にも新曲が2曲入っていますが、まず“Beep-Beep-Beep”。アップテンポで、ライヴ映えしそうなノリのいい曲。

Azumi「ライヴでやって楽しい曲が好きだし、ギターリフを主体とした曲も、私たち好きなので。わりとどのアルバムでも1曲はこういうチャレンジをしてますね。歌詞も書いていて楽しかったし、歌も〈あ、道を間違っちゃった!〉って慌てる感情をそのまま入れちゃっていいやって思って録って」

――もうひとつの新曲“OneRoom”もまた違う意味で楽しそう。

Azumi「え、楽しいですか?  これ」

――いや、明るく楽しい曲ではないけど、Azumiさんがすごく気持ちよさそうに歌っているなと。

Azumi「あ、それはレコーディングのときにso-toくんにも言われました。確かに気負いなく歌えましたね。昔だったら1曲1曲すごく集中してストイックに歌っていたんですけど、いまは自分がどこまでやればどれぐらいのクォリティーに持っていけるかわかっているし、ストイックになりすぎる必要はないんじゃないかと思っていて。

自分が力を出し尽くしたものがいいものとは限らないし、むしろ気負いなく歌えたもののほうが周りのひとたちが〈いい!〉って言ってくれることも多い。この曲は1~2回歌っただけで、〈はい、お疲れ様!〉って言われて、〈もっと歌いたい!〉ってなったんだけど、結局そうやってみんなの意見を軸にしたことがよかったんだと思います」

――こんなふうにR&Bのノリを前に出した曲は、ワイヨリカではそんなにやっていなかったので新鮮でした。

so-to「いままでもアルバム1枚に1曲くらいはそういうのを入れたがるところがあったんですけど、確かに今回のこれはそこを濃く出してますね。あと、今回せっかく“Beautiful Surprise”の7インチも出させてもらえるので、そのB面にも合うものをということで」

――なるほど。ところでベスト盤の選曲作業はどうでした?  けっこう悩みました?

Azumi「ぜんぶで30曲というのを決めているなかで、まずシングル曲は全部入れることにして、それが15曲。新録と新曲が合わせて4曲あったから、それを入れると残りが11曲。その11曲はそれぞれが入れたい曲を持ち寄って決めました。お互い、意外な曲もあったし、合致した曲もあったし」

――どの曲が意外でした?

Azumi「so-toくんが“goodbye summer”を絶対入れたいと言ってきたのは意外でしたね。いや、いい曲だし、私も好きだけど、〈へえ~、これ持ってきたかぁ〉って思った」

――これって、何に入っていた曲でしたっけ?

Azumi「シングル“愛をうたえ”(2000年)のカップリングです。でもこうしてアルバムに入ると、この曲がなかなかいい働きをするんですよ。それから私は“逢いたいから”を入れたいと言ったんですけど、so-toくんはその曲の存在を完全に忘れていたらしく」

so-to「レコーディングしたときの場面はよく覚えているんですけど、いまも最初のメロディーが思い出せない……」

Azumi「ちょっとー!   でもまあ、そういうのってあるよね」

――ところで、さっきアルバム1枚分くらい曲を書いたと話していましたけど、ニュー・アルバムも作ろうなんて話は?

Azumi「いや~。いまはとりあえず今度の再結成ライヴのことしか考えられなくて」

so-to「とりあえず、この暑い夏が終わらないと考えられないよね(笑)」


LIVE INFORMATION
Wyolica 20th Anniversary ~ Beautiful Surprise Tour~
2019年8月18日(日) 東京 duo MUSIC EXCHANGE 
2019年8月31日(土) 大阪 Music Club JANUS
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