インタビュー

ラグビーと音楽は同じだ! ニュージーランドのマルーン5ことシックス60のビッグな野望

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ニュージーランド流のレゲエを吸収した最新型ソウル

また、シックス60の音楽的ルーツのひとつとなっているのがレゲエだ。ニュージーランドはオーストラリアやハワイ同様、巨大なレゲエ・シーンが確立されている国。97年から活動を続けているキャッチャファイアは世界最大のレゲエ・レーベルであるVPから作品をリリースするなど国際的な活動を展開しているほか、日本でも高い人気を誇るロード・エコーがかつて在籍していたブラック・シーズなど、現在も多くのレゲエ・バンド/アーティストが活動を展開している。

「僕らもレゲエからはめちゃくちゃ影響を受けているよ。ニュージーランドでは昔からボブ・マーリーの人気がものすごく高くて、〈アンクル・ボブ〉と呼ばれているぐらい愛されているんだ。2000年代以降はジャマイカやイギリスとも違うニュージーランド的なレゲエ・バンドも出てくるようになった。僕らはキャッチャファイアやブラック・シーズの次の世代なんだ」(マティウ)。

キャッチャファイアの2003年作『Revival』収録曲“Get Away”
 

マティウの言う〈ニュージーランド的なレゲエ・バンド〉という言葉を筆者なりに解釈すると、それは〈ソウルの影響も色濃いハイブリッドなサウンド〉とでもなるだろうか。ニュージーランドの首都であるウェリントン出身のファット・フレディーズ・ドロップがダブに軸足を置きながらもネオ・ソウル的な方向性も持っていたことは象徴的一例だが、彼らよりもさらに若い世代にあたるシックス60は、モダン・ファンクを含む現行ソウル~ファンクに近いスタイルを持ち味とする。そうした意味では、シックス60はニュージーランド的なハイブリッド・ソウルの最新型ともいえるかもしれない。

 

ルーツは与えられるものでなく育んでいくもの

ニュージーランドはさまざまな民族的ルーツを持った人々の集合体でもある。全人口のうちヨーロッパ系が70%強を占めるが、先住民族であるマオリが15%前後、アジア系が10%前後、さらには南太平洋の他島から渡ってきた人々などで構成されている。

シックス60のメンバーのうち、ジャイは両親ともにスコットランド系、マティウはスコットランドとマオリのルーツが半々。オーストラリア人であるクリス・マック(ベース)を除いた他のメンバーもマオリの血をひく。ラグビーのニュージーランド代表が試合前に踊るハカは、もともとはマオリの戦士が戦いの前に踊る民族舞踊だが、シックス60は自身の楽曲にハカの要素を入れるほか、ボーン・コーアウアオ(骨のフルート)などマオリの伝統楽器をたびたび使用してきた。2011年に発表された彼らの代表曲“Don't Forget Your Roots”にも、そうした自身のルーツに対する意識が反映されている。

「マオリ系のニュージーランド人の多くはマオリの言葉を話せないし、自分たちのルーツから切り離されているんだ。だからこそマオリの伝統楽器を使ってその繋がりを取り戻すきっかけになったらと思ってるし、個人的にも音楽を通じて自分のルーツとあらためて繋がりたいという気持ちがあるんだよ。

ただ、ルーツというのは血筋だけで決められるものではなくて、自分自身で育てるものだとも思う。ニュージーランドは多様なルーツを排除するんじゃなくて、受け入れてくれる国なんだ」(マティウ)。

ニュージーランドにおけるマオリの置かれた社会的立場についてはさまざまな見方があり、昨年にはマオリの映画監督であるタイカ・ワイティティがイギリスのファッション誌のインタヴューで「ニュージーランドは地球上でいちばん素晴らしいところだが、人種差別の国でもあると思う」と答えてニュージーランド国内外で議論を呼んだ(AFPBB Newsより)。そのように事態は決して単純ではないわけだが、だからこそシックス60は音楽の力によって分断を超えようとしているのだろう。彼らは取材中、幾度となく「音楽によって人と人を繋げていく」という言葉を発したが、そのヴィジョンは多民族国家であるニュージーランドの社会背景を前提にしたものでもある。

 

バンドの魅力を詰め込んだ新作『Six60』

サード・アルバムにして米エピックからのデビュー・アルバムとなる新作『Six60』は、シックス60のなんたるかを詰め込んだ作品である。一度聴いただけで脳内にインプットされる耳馴染みのいいメロディーが散りばめられ、それを太平洋らしい大らかなムードが覆う。

先行カットされた“Please Don’t Go”はヒップホップ的なビート感覚を生ドラムで再現しつつ、そこにハカの掛け声を配置するなど、新たなチャレンジも見せる。ニュージーランド・レゲエのヴァイブスを伝える“Tomorrow”、モロにボブ・マーリー&ザ・ウェイラーズ調の“It's Been Raining”の心地良さもやはりシックス60ならではだろう。

「僕ら自身ヒップホップからもすごく影響を受けてるし、より洗練されたシックス60の音になったと思う」(ジャイ)。

「アルバムごとに進化していきたいし、僕らは世界最大のバンドになりたいんだ。それがいまのところの野望だよ」(マティウ)。

なお、本校執筆時のシックス60はワールドツアーの真っ只中。北欧も含むヨーロッパ各国を回ったあとは12月からオーストラリアをツアー。2020年初頭からはニュージーランド各地でライヴを行い、3月には地元ダニーデンの36,000人を収容するフォーサイスバー・スタジアムでファイナルを迎える予定となっている。

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