©Ross Halfin
メタルを愛するジャズピアニスト西山瞳さんの連載〈西山瞳の鋼鉄のジャズ女〉。第90回は、オジー・オズボーンが生涯最後のライブになることを宣言した特別イベント〈Back To The Beginning〉について。メタリカやガンズ・アンド・ローゼズら超大物が多数出演しただけでなく、ブラック・サバスのオリジナルメンバーも再結集したオジーの〈別れの挨拶〉は、まるでメタルの最終回のよう。歴史的パフォーマンスを生配信で目撃した西山さんが、感想をすぐさま綴ってくれました(当日のセットリストはこちらの記事をご覧ください)。 *Mikiki編集部
ヘヴィメタルの始祖、ブラック・サバス最後のコンサート〈Back To The Beginning〉が、7月5日に行われました。全世界に向けて配信があり、私もリアルタイムで見ました。
結論から言うと、これはヘヴィメタル史に残る歴史的なコンサートとなったと思います。
ヘッドライナークラスのバンドが入れ替わり立ち替わりステージに現れ、ブラック・サバスとオジー・オズボーンから継承された魂を体現していく、あまりにも美しい光景に、何度感嘆の声をあげたことでしょう。
配信は48時間はアーカイブ視聴可能でしたが、歴史を目撃することが大事と思い、これはぜひリアルタイムで体験したいと思いました。
とはいえ、長丁場。最後の大事なオジーとサバスで眠くなっちゃったら困るので、途中3時間ほど、計画的に寝ました。
この記事は、なるべく早く出すために、その途中3時間を見る前の状態です。
地球上で何万人のメタルファンが見たのでしょうね。
LOUD PARK会場のさいたまスーパーアリーナは3万人収容。ということは日本でも3万人と計算し、全世界で軽く50万人ぐらいは見てますよね!? これはロック史においても、見なければならない大事件ですから。
まず最初のバンド群、マストドン、ライヴァル・サンズ、アンスラックス、ヘイルストーム、ラム・オブ・ゴッドは、それぞれ3曲か2曲の15分ずつのステージ。
15分のためにこれらのバンドが集合している時点で凄いことなのですが、それぞれがサバスとオジーへの感謝を述べ、このステージに立ち歴史の一部になれることの誇らしさに溢れており、その興奮を見ているだけで、胸が熱くなります。
1バンドに1曲は、サバスかオジーの曲のカバーを入れるプログラム。これが大変に面白く、リスペクトに溢れながらも、それぞれのバンド特有の音がしている。自分たちの代表的なレパートリーと地続きに演奏することで、サバスとオジーが築き上げたものが脈々と受け継がれていることが、よくわかります。
マストドンは“Supernaut”をチョイス。スネアドラム隊に、ダニー・ケアリー(トゥール)、マリオ・デュプランティエ(ゴジラ)、エロイ・カサグランデ(スリップノット)が参加し、祝祭感を高めます。
ライヴァル・サンズは私は知らなかったバンドで、今回参加した中で一番新しいバンドですが、ブリティッシュロック特有の匂いのようなものがよく表れており、カバーに選んだ“Electric Funeral”は、原曲に忠実ながらも若く新鮮なサウンドがして、これは来日したらぜひ生で聴いてみたいと思いました。
アンスラックスは、この日のために作ったシャツを着用、表に〈Sabbath bloody Anthrax〉、背中に〈666〉とサバスのメンバーの名前が書いてあり、〈このシャツ欲しいな〉と思ったのは、私だけじゃないはず。
ジョーイ・ベラドナの声の変わらなさにも驚きましたが、“Into The Void”の最初のギターリフはどこからどう聴いてもアンスラックスの音がしており、彼らのキャリアと強度を強く実感すると同時に、サバス独特の粘りのあるリフが現代においても全然色褪せず、今、配信で刺激的に迫ってくることに感激。