ラグビー王国として知られるニュージーランドの超人気バンドであり、そのソウルフルかつキャッチーなサウンドで同地のマルーン5などと称賛されてきた5人組、シックス60。彼らのサード・アルバム『Six60』がリリースされた。もともとレゲエやヒップヒップに加えて、みずからのルーツでもあるマオリの音楽を積極的に導入していたが、本作では多様な要素をハイブリッドなポップスへと昇華。ワールドワイドでの飛躍も期待できそうな力作に仕上げている。今回は、ラグビーワールドカップに乗じて来日を行った彼らにインタヴュー。音楽(とラグビー)への想いやビッグな野望を熱く語ってくれた。 *Mikiki編集部

SIX60 Six60 Epic(2019)

ラグビーと音楽は同じ。異なる人々を繋ぐ

2019年9月から日本で開催されたアジア初のラグビーワールドカップは、南アフリカの優勝で幕を下ろした。史上初の3連覇が期待されていたニュージーランドは準決勝でイングランドに敗北したが、まさにその会期中、ニュージーランドの国民的バンドであるシックス60が来日を果たしていた。

シックス60とラグビーの縁は深い。元ベーシストであるホアニ・マテンガはバンド脱退後、ニュージーランド代表チームに選出され、日本のクボタスピアーズでプレイした経験も持つ。シックス60の現メンバーも代表チームと交流が深く、9月末に大分で行われたニュージーランド代表チームの親善試合にも招かれてライヴを披露した。

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

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今回の取材が行われたのは、ニュージーランドがイングランドに敗北した準決勝の翌日。ヴォーカルのマティウ・ウォルターズとギターのジャイ・フレイザーは「正直、ちょっとへこんでる」と話しながら、こう続ける。

「準決勝で敗北してしまったのは辛いことだけど、明日はウェールズとの3位決定戦があるからね。いい試合になると思うよ。ニュージーランドでラグビーはスポーツというだけじゃなくて、文化でもあるんだ。男女問わず、子供のころからラグビーをやるし、成人になるための儀式みたいなものなんだよ。先住民とイギリス系をひとつに繋げるツールになってきたし、僕らはラグビーを通じて階級や異なるルーツを超えてきたんだ」(マティウ・ウォルターズ)。

「そういう意味では、僕らにとってラグビーと音楽は一緒。同じ役割を果たしてきたという面でね」(ジャイ・フレイザー)。

※結果はニュージーランドの勝利。3位が決定した

 

自由な風土の学生街で培ったハイブリッドなサウンド

10月30日には一夜限りのショウケース・ライヴも行われたが、ニュージーランド本国ではスタジアム・クラスの人気を誇るバンドだけあって、会場となるVeats SHIBUYA(東京)はニュージーランドやオーストラリアからやってきたファンでパンパン。筆者は残念ながら会場に足を運ぶことができなかったが、オープニングから大合唱が巻き起こる熱狂的なライヴだったという。

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

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YouTubeにアップされているシックス60のライヴ動画を観ると、キャッチーなメロディーと骨太のバンド・アンサンブルに人気の理由があるようだ。ジョン・レジェンド的な一面も顔を覗かせるマティウのソウルフルな歌唱に象徴されるように、そこには現行ソウル~R&Bのフレイヴァーも盛り込まれている。そして、後述するように、ニュージーランドの先住民であるマオリの伝統文化が反映されている点にもシックス60のオリジナリティーを見てとれる。

2018年のライヴ映像
 

シックス60は2008年にニュージーランド第2の都市、ダニーデンで結成された。5人のメンバーのうち、マティウとジャイ、ドラムスのイーライ・バーウェイは大学の同級生だという。

「一緒に遊んでいた仲間たちと自然にバンドを始めたんだ。やってみたら楽しくてね」(ジャイ)。

なお、ダニーデンという地名はゲール語で〈エディンバラ〉を意味し、19世紀にこの地に入植したスコットランド人の文化をいまも色濃く残しているという。そうした場所で活動を始めたことは、シックス60の音楽性にどのような影響を与えているのだろうか。

「ダニーデンは大きな学生街なんだ。僕とジャイにはスコットランドの血が入っているし、ルーツのひとつにはスコットランド文化があるのは確かだけど、バンドとしてはそれほど影響はないかな。それよりも遊ぶことが大好きな学生たちが集まった学生街で活動を始めたということのほうが大きいと思う。そうした環境だからこそ、自由に音楽を始められたということはあると思うし」(マティウ)。

「シックス60というバンドは音楽によってみんなを繋げていくということがヴィジョンのひとつにあるんだけど、それはダニーデンで育てられたものだと思うね」(ジャイ)。