50年代末から60年代初頭にかけてジャマイカの不良たちが生み出したダンス・ミュージック、スカ。時代を越えたその格好良さは、このアルバムを爆音で浴びていただければ一発で理解できるはずだ。6本のホーンが奏でる重厚で妖しいメロディー、しなやかに疾走するリズム隊、華やかな色彩を加えるヴォーカルとギター、キーボード。本作は、2010年代の日本産のオーセンティック・スカを代表する一枚として数えられることになるだろう。ちょっと大袈裟な表現かもしれないが、それほどまでの作品だ。

 秋田の地でマイペースな活動を続けてきたThe KING LIONによる、実に15年ぶりとなるニュー・アルバム『BLANK』。「一言で言うと〈スカのアルバム〉を作りたかった。ロックステディやレゲエ、カリプソなどが混ざらない、純然たるスカを詰め込みたかったんです」(Masaru Watanabe、以下:Masa)という本作には、彼らの考えるスカの魅力が凝縮されている。

The KING LION BLANK LAST CALL/Hanx(2019)

 「アルバムの構想は5年前からあったんですが、当時、収録可能な曲だけでは何かが足りなかったんです。直球すぎて、アルバム一枚の中にスカのおもしろさを詰め込むにはバランスが悪かった。そこから5年間のライヴ活動を通じ、その足りなかった部分を補完してできたのが今回のアルバムです。一枚の中で、ライヴ感やストーリー性も表現できたかなと思います」(Kenichi -Billyken- Ito)。

 音作りには60年代の空気感を残しつつ、「もしも現代の録音環境で当時のバンドがレコーディングしたら、どのような音になるのかをイメージして作った」(Masa)そうで、くっきりとした音の分離や豊かな低音には現代的な視点も窺える。

 そして、威勢のいいイントロダクション“Intro”から“64ska”“Cold Sugar”“Tribute To Master”という冒頭の4曲からフルスロットル。鳥肌モノの必殺スカが連発される。ワンコードで引っ張る“In The Green”“Skatman”や、“Black Magic Woman”(原曲はフリートウッド・マック)といった歌モノにもThe KING LIONのオリジナリティーが発揮されている。

 それにしても、決して巨大なスカ・シーンが存在するわけではない秋田の地で20年間に渡って大所帯のオーセンティック・スカ・バンドを続け、『BLANK』という力作を作り上げたという事実は、ちょっとした奇跡とも思える。活動の原動力となってきたものは何なのだろうか。

 「やはりオリジナル・スカの存在です。今もなお愛してやまないスカがあること、先人が残した曲に少しでも近づきたいという気持ちがあるからこそ継続できたのかなと思います」(Masa)。

 「あと、我々が続けてこられた要因のひとつが〈秋田だったから〉だと思っています。結成当初はスカ・シーンなど皆無で、お客さんもゼロの状態から始めたようなもんでしたから。周囲にスカ・バンドもいなかったので、他と比べることなく自分たちの音楽を追求できた。やっぱり自分たちのペースで続けることが一番。ちょっと昔だと〈音楽で勝負するにはまず都会に出なきゃ!〉という風潮があったかもしれませんが、今は地方からでもさまざまな形で発信できますしね」(Billyken)。

 20年分の蓄積と現在進行形のバンドならではのエネルギーが詰まった『BLANK』。本作が彼らの最高到達点かと思いきや、The KING LIONはまだまだその先の20年を見据えているようだ。

 「スカ、格好良いですからね! 20年やってもまだ尻尾すら掴めていない。今年トロージャンズのギャズ・メイオールと共演した際も、〈結成20周年? まだまだヤングマンだな〉と言っていただきましたから(笑)」(Billyken)。

 


The KING LION
Masaru Watanabe(ヴォーカル)、Kenichi -Billyken- Ito(ウッド・ベース)、Yasuhiro Kaizuka(ドラムス)、Yoshinari Ise(ギター)、Takayuki Ikeda(ギター)、Hiroaki Tosa(ギター)、Shuhei -Chonvo- Taguchi(トランペット)、Hideaki Shoji(アルト・サックス)、Shun Watanabe(テナー・サックス)、Koji Yokota(テナー・サックス)、Makoto Shindo(トロンボーン)、Toshiaki -Motty- Morokoshi(ベース・トロンボーン)、Miwako -Tammy- Takahashi(ピアノ/ハモンド/メロディオン)、Gera Small(ヴォーカル)から成るスカ・バンド。秋田を拠点として99年に結成され、2004年に初作『WAKIE WAKIE』を発表。11月27日にセカンド・アルバム『BLANK』(LAST CALL/Hanx)をリリースする。