〈私はアフリカ人〉、昨年この世を去ったラシッド・タハの生前最後の録音、言わば遺作のタイトルである。真直ぐにこちらを見つめるポートレート、内ジャケには彼を中心に据えマイルス、ジミヘンからウォーホルやマルコムXなど歴史上の重要人物の肖像がずらりと並ぶ。それは彼に影響を与えてきた人々であるが、彼もその先人に比肩するという、残されたものの宣言でもあろう。在仏マグレブ・ロックのカリスマとして、あらゆる音楽を内包しながらアフリカ/アラブ文化を世界に向け発信してきた、その音楽人生が凝縮されたような内容、集大成と言うべき濃密な数十分に早すぎる別れの悲しさを噛み締める。