COLUMN

「『男はつらいよ』シリーズ50周年記念限定商品 復刻“寅んく”」 奇跡の第50作を機に4Kデジタル修復版ブルーレイが新登場!

©2019 松竹株式会社

『男はつらいよ』第50作最新映画『男はつらいよ お帰り 寅さん』が公開、そして最新技術を駆使した4Kデジタル修復版ブルーレイが新登場!

 50年目で第50作を製作すると聞いた時、大きな期待と一抹の不安を抱いたことも事実だった。渥美清という存在が無き今、どうやって作るのか? 無理やり過去の映像を繋げたコンピレーション仕様になっていたらどうしよう、そんな不安が頭をよぎった。

 しかし、出来上がった映画は、そんな心配は全く不要だった。勝手に心配したことが恥ずかしくなるぐらいに見事なものだった。作品を支えたのは満男だった。そう、長きに渡る『男はつらいよ』シリーズの歴史とは車寅次郎以上に、諏訪満男の人生の歴史だったのだ。

 思い返せば彼の誕生日とは第1作目が公開された1969年8月27日のはず。映画のラストシーンで母さくらの腕に抱かれた生まれたばかりの満男が映し出されていたではないか。ここから我々観客は、ずっと寅次郎、さくら、博と共に彼の成長を見守ることになるのである。

 映画の生みの親である山田洋次監督もシリーズを作り続けることは、満男の成長を描くことになると、おそらく想定してはいなかっただろう。しかし、天才子役吉岡秀隆を得て事態は変わっていく。決定打は渥美さんの体調を考慮して42作目に『ぼくの伯父さん』を作り、満男の初恋と青春を描いたこと。これこそが結果として50作目への出発点になったのだ。

©2019 松竹株式会社

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 初恋の相手、イズミを心のどこかで想いながら50歳になった満男が、今やおじいちゃんとおばあちゃんになった博とさくらが、それぞれに思い出す寅次郎の姿と、そのエピソードがフラッシュバック映像で繋がる展開はファンには堪らないが、ある程度の想定内。しかし、現在の満男と娘のユリとの関係に小津安二郎的な匂いを放つところや、イズミと老いた父の間に描かれるのは、現在の日本が抱える高齢者問題という、山田洋次監督ならではの社会を見つめる鋭い眼が光る。そこが単なるコンピ映画ではない証拠なのである!

 50年前の第1作と50作目とを繋げたものは巧みな演出技法だけではなかった。もうひとつの功労者、それは最新のデジタル技術だ。オリジナルのネガから一コマずつ全作品を4Kデジタル修復でフィルム傷や退色の補正を行い、今回初のデジタル撮影(山田監督はフィルム撮影にこだわっている一人)された映像と違和感なく繋げることに成功、驚きの効果を発揮している。

 その副産物として登場するのが、待ちに待った『男はつらいよ』シリーズのブルーレイディスクである。もちろん現在流通しているDVDが使用している通常のデジタル・リマスター版でブルーレイ化しても遜色なかったと思うが、やはり松竹映画の至宝はレガシーとして最も美しい状態で残しておきべきだろう。50作目を作るために必要だった名場面の映像素材の修復が、意外にもパッケージソフトに最高の恩恵をもたらしてくれたのだった。

山田洋次,渥美清 『男はつらいよ』シリーズ 50周年記念限定商品 復刻“寅んく” 松竹(2019)

 いつの頃からか『男はつらいよ』シリーズが担ったのは、失われゆく古き良き日本の風土や鉄道を映像に納め残す役目。旅人・車寅次郎と共に映画は日本国中を旅したのである。そこに映し出された景色は今やもう存在しないものもあるだろう(鉄道に関しては新潮選書の川本三郎氏の著書『「男はつらいよ」を旅する』に詳しい)。1970年公開の第5作目『望郷篇』のロケ地である浦安などは、柴又を流れる江戸川とつながっていながら、最も大きく様変わりした場所だろう。そうした今や懐かしい風景遺産が美しいブルーレイディスクで蘇って再生されるだけでも必見と言わざるを得ない。

 特典ディスクも入れ、全51枚収納の50周年記念限定商品、復刻“寅んく”のBOXを大人買いするもよし、毎週1枚購入&鑑賞で1年間楽しむもよしである。

 寅さんという名前や、渥美清という名優を知っていても、実は肝心の映画そのものを見たことのない若い方がけっこういらっしゃる。50周年を機に関連書籍も多数刊行されるこの令和元年の年末に一度見てみませんか? そして昭和が誇った日本人の心の映画『男はつらいよ』にぜひ触れていただきたいのです。

 


CINEMA INFORMATION

映画『男はつらいよ お帰り 寅さん』
原作・監督:山田洋次
脚本:山田洋次/朝原雄三
音楽:山本直純/山本純ノ介
主題歌:「男はつらいよ」渥美清
オープニング:桑田佳祐
出演:渥美清/倍賞千恵子 吉岡秀隆 後藤久美子 前田吟 池脇千鶴 夏木マリ 浅丘ルリ子
配給:松竹株式会社(2019年 日本  115分)
◎12/27公開!
映画『男はつらいよ お帰り 寅さん』公式サイト tora-san.jp/movie50/
映画『男はつらいよ』50周年プロジェクト特設サイト tora-san.jp/50th/

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