2020年4月15日、アルト・サックス奏者のリー・コニッツが新型コロナウイルス感染症の肺炎により亡くなった。享年93。何者にも似ないインプロヴァイザーとして尊敬を集めたコニッツは、スウィング・ジャズの時代からジャズ史にその足跡を残してきた巨人。また、最期まで現役を貫いた演奏家であった。

そんなコニッツの歩みを、同じくアルト・サックス奏者のhikaru yamadaが振り返った。コニッツのキャリアはもちろんのこと、フリー・ジャズ/フリー・インプロヴィゼーションの現場で演奏を重ねてきたyamadaならではの視点で選んだ知られざる名演から、その独創性を伝える。 *Mikiki編集部


 

偉大なサックス奏者が亡くなった。

リー・コニッツは1927年生まれのアルト・サックス奏者。クロード・ソーンヒル楽団の一員として1947年にレコーディング・デビューして以来70年にわたって活躍した。その共演歴、ディスコグラフィーはそのままモダン・ジャズの歴史である。

モダン・ジャズに少しでも興味のある方は2015年に邦訳された「リー・コニッツ ジャズ・インプロヴァイザーの軌跡」というインタビュー形式の伝記をぜひ読んでいただきたい。この本は単なる伝記に留まらず、かつての同僚であるジャズ・レジェンドたちへの評価や分析に多くのページが割かれている。その中でコニッツは率直に、自由に発言する。〈内発的なインプロヴィゼーションであるか否か〉というのが彼の一番の関心事で、その尺度においては、チャーリー・パーカーやジョン・コルトレーンの演奏は手持ちのヴォキャブラリーの組み合わせであって真のインプロヴィゼーションではない、と評価を下す(逆に内発的なインプロヴァイザーとして評価しているのはウェイン・ショーターとチェット・ベイカー)。海賊盤を聴いて自らの演奏を反省したりドラッグ使用の効能について解説したり、時には他の演奏者に対して批判を超えた悪口になるところなど、誰をも恐れない語り口はスリリングだ(ジョン・ゾーンからユダヤ楽曲集の制作を依頼されて、それを断ったエピソードが私は好きです)。