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少年がガンダムのプラモデルを改造していくような感覚で

――今回は曲作りの仕方も変えたんですよね。

岩下「なんで知ってるんですか!?」

――いや、ちゃんとYouTube(「ニガミ17にち」)観てますもん(笑)! あの番組で皆さんが喋ってたことはメモしてますから。〈曲作りの追い上げがすごかった〉とか〈あくびとヒリついた〉とか(笑)。

一同「(笑)」

岩下「そう、曲作りの仕方を変えました。今までは一人でプロットを作って、タツルボーイと何ターンかやり取りをして、最終的に出来上がったものをみんなに聴かせて取り掛かるっていうやり方だったんですけど、今回は0から10まで4人で作りました。0から10までの間、やれんことがあってもその場には4人いる。全員同じ時間を共有したというか」

あくび「今までは、岩さんが曲を作ってる間、私たちは違う場所にいたりご飯食べたりしてて、その時の状況を岩さんからのLINEで知ってたんですけど、今は出産に立ち会ってるみたいな、生みの苦しみを一緒に味わってました」

――それはアジトが出来たことも大きいですか?

※今年に入って、曲作りや番組配信、グッズ発送などを行うニガミアジト、通称〈ニガアジ〉が完成。

岩下「めちゃくちゃデカいですね。ライブができないというのもデカいですけど。あと3人に勝手に発売日を決められたっていうのもデカいです」

17時間に及ぶ生放送配信番組「ニガミ17じかん」のラストで、岩下以外の3人から岩下へサプライズとして、次回作のリリースが決まっていることが伝えられた

あくび「でもそれは首謀者の3人だけじゃなく、酒井さんたちメディアの人も知っててニュース記事を用意してくれてたんですから」

岩下「(インタビュアーを見て)ダメじゃん」

――(笑)。じゃあ曲作りをするのはアジトに4人でいる時だけだったんですね。

あくび「そういうふうにしたんです」

岩下「そこも環境を変えました。僕、家にパソコンがあって、メシも食わずにずっと曲作りをしちゃうんで」

あくび「オンオフの切り替えができる場所が必要だったんですよね。今まではずっとオフがない状態だったから」

岩下「だから生活にメリハリができました。まあアジトで朝方まで作業する時もありましたけど、普段は意外と健全な時間に終わってるよね」

――漫画家とか作家の先生が、家とは別に仕事場を持つ、みたいな。

岩下「そうですそうです。愛人宅みたいな」

――うんうん。ん!?

岩下「僕一人だと、そういう管理ができないんですよね」

――でも、曲の土台となる部分は岩さんが作るんですよね?

岩下「いやいや。結構早い段階からみんなで関わってます。さっきからいろんな媒体のインタビューを受けててガンダムで例えたいのにうまくいかなかったから、Mikikiでもう一回挑戦してもいいですか(笑)?

今回のアルバムの作り方をざっくり言うと、まずタツルボーイがプラモデルのパーツを説明書通りに作ってくるんですよ。腕のパーツとか、足とか、接続部分とか。そのパーツを元にみんなで一度仮組みをしてみる。〈こういう組み方をしたらこういうガンダムが出来るよね〉って確認をしたところで、その通りにレコーディングをしてみるんです。で、レコーディングして組み上がった本番のプラモデルを、僕が家に持って帰って、接続部分じゃないところでレーザーで切り分けてボンドでくっつけた、みたいな……やっぱりこの例えうまくいきませんでした(笑)」

一同「(笑)」

――いや、伝わりましたよ(笑)。カットアップとかブレイクビーツみたいなことですよね。ただ、それだとカッコ悪いガンダムにもなりかねないじゃないですか。頭から手を生やしてもカッコいいガンダムになるかどうか、ヴィジョンみたいなものがあったんですか?

岩下「それは僕が潜在的に考えていることなんでしょうね。でも〈この曲をこうしたい〉っていうのは、実際にメスを入れながら、〈これは頭から手を生やしたらカッコいいかな〉って触ってみないと分からない。4人で組んだガンダムはそれで完成してるしカッコいいものなんですけど、そこにさらに違和感みたいなものを入れたいからレーザーで切っちゃうんでしょうね」

――普通のガンダムじゃ面白くない?

岩下「なんでしょうね……普通のガンダムじゃ面白くないわけじゃないんです。タツルボーイの組んだパーツも、4人で組んだものも良かったんです。でもね……」

タツル「さらにカッコよくなるって思ったんじゃない? 普通に組むっていう作業をよりうまくしていくんじゃなくて、本当に少年がプラモデルを改造していくような感覚で実験をするように作ったものがよりカッコよくなるって。だって俺らもそれを見ててカッコいいと思ったし」

――その実験をするきっかけは何かあったんですか? 『b』のインタビューではスペシャ(スペースシャワーTV)を見てその時のモードが決まるって言ってましたけど。

岩下「僕自体、例えば曲の途中でバツッと切れるような曲が好きで、エンジニアさんが〈こういう曲を聴いたら好きかもしれませんよ〉って言っていろんな曲を聴かせてくれて、そういうのがハマったのかもしれないですね。ただバンドが自分自身でカットアップするなんてあんまりないから、それはニガミの武器になるんじゃね?とは思いました」

――結局レコーディングは33日間もしていたそうで、しかも結構ギリギリまで。

あくび「でしたね。でも余裕はあったほうですよね」

岩下「時間は余ってないけど、見直す時間とかはあったからね」

あくび「〈ニガミ17じかん〉が6月28日で、8月のラジオ体操が終わるまでに曲が出来てなかったですもんね」

※平沢あくびは毎年8月に毎日早朝ラジオ体操の配信を行っている。今年の8月で5年目。

岩下「うん」

あくび「9月とか10月でいっきに出来て」

――その頃にはタツルさんもパーツを作ってた?

タツル「俺は〈17じかん〉が終わった後に、これから制作に入るのに精神的なプレッシャーもあるだろうし、イワに一人で全部を担わせるのはヤバいなと思っていて、何か力になれることをしなきゃというのもあったので、ちょこちょこトラックやパーツパーツを作ってました」

岩下「もちろん1曲も出来てなかったというのは形になっていなかっただけで、こういう歌を歌いたいとか細かな構想はありました。だから1か月で全部作ったわけじゃないですよ。組み上がるまでのスパンが短かったんですよね」

――結果的に、〈ニガミ17じかん〉の時に締め切りが設けられたのはよかったですか?

岩下「めちゃくちゃよかったです。4人全員で作ろうという発想になったし、締め切りがなかったらもっと部品作りに時間をかけすぎていたと思うし」

――でも〈2020年バズるアーティスト〉第2位なので、年内にリリースされてよかったですよ(笑)。

一同「(笑)」

岩下「リリースしないでバズらないじゃ意味分かんないもんね(笑)」

※今年1月放送の日本テレビ系「バズリズム02」で、ニガミ17才は〈今年コレがバズるぞ!ベスト10〉の2位だった。

――この曲たちを、ライブではどう再現します?

岩下「もちろん作品の通りにやるところはやるし、生ならではのアレンジにするところもあるし、どういうふうにアプローチするか話し合うのもまた楽しいんですよ。〈ここはサンプラーで行こう〉〈ここは生で行こう〉みたいな。でもさっき使った違和感という言葉を借りるなら、違和感がある作品を聴き込んだお客さんが〈こういうことをやるんだろうな〉って思ってライブに来るわけじゃないですか。それを生で表現することで、お客さんにさらなる違和感を与えられたらいいなとは思ってます」