(左から)小銭喜剛(ドラムス)、平沢あくび(シンセサイザー)、岩下優介(ヴォーカル)、イザキタツル(ベース)
 

ニガミ17才が11月17日(火)にリリースする3枚目のミニ・アルバム『ニガミ17才o』は何から何まで挑戦的だ。まず音。これまでのニガミサウンドはおろか、既存のどのバンド・サウンドとも似ても似つかない実験的な音を出している。それもそのはず、レコーディングには33日間という長期間をかけ、さらにレコーディングした楽曲を自分たちで切り刻んで編集し、まったく新しい異質な楽曲に作り替えるという手法をとった。そして歌詞。〈日本語に聴こえない日本語詞〉が多数登場しては脳内に強烈な〈響きの違和感〉をもたらすだけでなく、歌詞があるのにそれを歌ってすらいない曲まで登場する。『ニガミ17才o』は、いわば日本語と音による壮大な実験とその実験結果の集大成なのだ。

さて、この不思議なバンドはどこを目指し、どこへ向かうのか。岩下優介、平沢あくび、イザキタツル、小銭喜剛の4人に話を訊く。

 

ニガミ17才 『ニガミ17才o』 苦味興行/EXXENTRIC RECORDS(2020)

半分サボり、半分言い訳

――お久しぶりです。『ニガミ17才b』(2018年)の時以来、2年半ぶりのインタビューです。その前回のインタビュー中に、〈『ニガミ17才a』(2017年)のレコーディングの最終日には『b』の話をしていた〉という話が出たので、インタビューの最後に、〈じゃあ『b』のレコーディングの最終日に、次回作の『c』の話は出たんですか?〉って訊いたんですよ。覚えてますか?

平沢あくび「覚えてますよ。〈いい質問ですね〉って言って終わって。〈あ、酒井さん(インタビュアー)、次回作『c』だと思ってるよ〉って思いましたもん(笑)」

岩下優介「そうそう。〈『c』出すと思ってらあ〉ってね(笑)」

――(笑)。結果『c』じゃなくて『o』だったわけですが、実際に『b』の終わりから次回作は作っていたんですか?

岩下「『o』は作ってはいないけど、〈次出す作品は『o』〉っていうのは決まってました」

あくび「血液型にして4部作を完結させる、というのは『a』を出した時から決まってました」

※本作『ニガミ17才o』の完全数量限定盤に、YouTube配信企画「ニガミ17じかん」の模様を収録したDVD「ニガミ17才ab」が付属し、『a』『b』『o』『ab』の4部作が揃う。

――なぜ血液型なんですか?

あくび「4部作になりそうなのがちょうどよくて。a、b、c、d、e、f、gってどんどん続いていくと途中でタイトルを付けたくなった時に付けにくいし、『a』を出した当時、3~4年後のヴィジョンを考えた時に、4部作くらいで完結できるのがいいと思ったんですよね。その時は、『o』と『ab』は同時リリースにして、『o』は完全新作、『ab』は『a』と『b』を録り直したものにする、みたいなアイデアもあったんですけどね」

――なるほど。そして『b』からは2年半ぶりのリリースになりました。もちろんその間にたくさんのライブやツアー、メディア露出もありましたが、リリースはなぜ2年半空いたんですか?

岩下「ライブもやってたし、バラエティー番組も出てたし……でも、世の中の動きも慌ただしくなかったですか?」

――世の中もそうですけど、ニガミを取り巻く世の中が特に慌ただしかったんですかね。あくびさんのモデル業とかもあって。

岩下「まあでも……結局はサボりですよね(笑)」

――サボってたんかい(笑)。

岩下「サボってたというか、曲作りのテンションじゃなかったんじゃないかな」

イザキタツル「確かに重きを置いてたのはライブだったよね」

岩下「そう。だから世間に『b』をもっとしがんでほしかった。結果的に『b』を持っていろんなところへツアーも回れたし、ライブをやるたび曲の出来も良くなっていくし。だから半分サボりの、半分言い訳……って感じですかね(笑)」

――曲作り自体はずっとやってたんですか?

岩下「ずっとやってましたね」

あくび「期限を設けて、〈この月までに1曲〉〈だから、ここまでに合計何曲〉みたいなプランを何回も立てて。立てては守られず、立てては守られずでしたけど(笑)。で、あれよあれよという間に2年経ったという(笑)」

――その締め切りを守らないのは岩さん?

岩下「(苦笑)。そこは俺の責任というかさ!」

あくび「(爆笑)。まあ、仮に岩さんが締め切りを守らなかったとしても、それに対してケツを叩かなかった私たちにも責任があるので(笑)。誰も〈間に合いますか?〉とか言わなかったし、〈まだ出来ないな~〉くらいの気持ちでいたし。それは気持ちがライブに向かっていたのもあるし、いろんなバラエティー番組に呼んでもらえたこともあって2019年に『b』がもっともっと広まっていったからっていうのもありますね。ここで新作を出して『b』が聴かれなくなっちゃうのも違うな~みたいな」

岩下「僕らは、〈最新作を出すまでが最新〉だと思ってるんですよ。だから、新しいものを出すのがちょっと怖かったってのもあるよね。まあ怖くはないけど(笑)」

――それだけ『b』が良く出来たってことですよね。

岩下「当時はそうですね、『b』がすごく良かった。嘘つきバービーの時は自分のアルバムを聴くことはなかったんですが、ニガミは聴ける、むしろどんどん聴きたいくらいで」

――それは前回のインタビューでも言ってましたね。

岩下「それは今も変わってないですね」

――『b』が良かったことで、次の『o』へのハードルは高くなりました?

岩下「でも常に最高を更新していくっていうのは僕らの本分やから、当たり前のことなんですよ。『ドラゴンボール』で敵の戦闘力がインフレしていくじゃないけど、最高っていうのはどんどん上がっていくものなんでしょうね」