ニガミ17才が11月20日から29日にかけて、「ニガミ17才 単独LIVE -2019-『不定期大演奏会』」を東名阪で開催。20日に東京・恵比寿LIQUIDROOMで行われた東京会場公演の模様をリポートする。

この日のチケットは早々にソールドアウト。平沢あくび(キーボード)セレクトによるBGMが流れるなか、会場にはあふれんばかりのニガジュウシスト(※ファンの通称)が詰めかけていた。ファッション・ブランドSPINNSとバンドがコラボしたスカジャンを着ている人や、平沢そっくりの髪形や服装の女子もいて、彼女はすっかりファッション・リーダーでもあることがうかがえる。

舞台が暗転するとメンバー4人が登場。まるで普段、自宅で作業しているかのように岩下優介(ヴォーカル、ギター)がiMacの前に座ると、平沢、イザキタツル(ベース)、小銭喜剛(ドラムス)が岩下を取り囲んで楽器を構え、そのまま“テクノロジーの鬼”からライヴがスタートする。かつて岩下はインタヴューで、バンドの当初の設定について〈ニガミちゃんっていう女の子がいて、彼女の頭の中にある細胞の4つがわれわれ……みたいなテーマだった〉と語っていて、このステージ上での構図は、まるで岩下の頭の中を覗き見ているようにも思える。曲の後半、音が盛り上がると岩下が一言「ニガミ17才です」と言い、メンバーがいつもの立ち位置に戻ると同時に、岩下の脳内が恵比寿LIQUIDROOM全体へと広がっていく。

「ライヴハウスへようこそ」と岩下が言うと歓声が沸き起こり、そのまま“化けるレコード”へ。曲中で岩下が「オン・ヴォーカル、平沢あくび」「オン・ベース、イザキタツル」とメンバーを紹介すると、歌う平沢をペンライトで照らしたり、イザキのベース・ソロを横から覗きこんだりしてニヤニヤ。小銭は曲中に「ウオー!」と叫び、岩下は「東京!」とオーディエンスを煽り、平沢は「1、2、3、4!」と声をかける。そしてイザキは表情ひとつ変えずにベースをうねらせ、四者四様でフロアを盛り上げていく。曲はそのまま“ゴーゴーエアロバイク”へ。上着を脱いで平沢が、岩下より「オン・エアロビクスインストラクター、平沢あくび」と紹介されると、また歓声が。岩下と平沢による絶妙なコンビネーションの掛け声は、まるで本物のエアロビクスインストラクターのようで、観客は否が応にもリズムに乗せられていく。そのまま音は大きくなりながら混沌さを増していき、岩下がバスドラムからジャンプして曲が終わる。

間髪入れずに岩下が「ねこ、にゃん」と言うと、それだけでまたしても大きな歓声が。“ねこ子”のシンプルなリズムが始まると、平沢はねこの手袋を着用し、そのまま曲に合わせて舞台を自由に歩いていく。間奏で「オン・スコッティカシミヤ、平沢あくび」と今日3度目の紹介をされると、“ねこ子”恒例のティッシュ・ソロ(※曲に合わせてティッシュをばら撒く)を披露する。

簡単な挨拶を済ませた後は、でんぱ組.incへの提供曲“生でんぱ”をセルフ・カヴァー。でんぱ組.incらしさを一切排除し、まるでオリジナル曲であるかのような不可思議なニガミワールドへ観客を誘っていく。まるで阿波踊りのようにウネウネと踊りながら岩下が歌いきると、次はゾンビをテーマにした人力ダンス・トラック“もつれ”へ。何度も歌われる〈踊れない〉という言葉で観客を踊らせていく岩下。そのまま本日4度目、「2019最も噛まれたい女ゾンビナンバー1、平沢あくび」と岩下が平沢を紹介すると、二人はユニゾンでゾンビの世界観を歌い上げていく。

MCで、“生でんぱ”が〈ブラック・ミュージックを基調としている〉と紹介されていることに対して「伝わってない」と不満を漏らし笑いを取る岩下。そのまま、岩下があまり好きじゃないと言う〈かわいそう〉というワードをタイトルにした“あの娘かわいそうに”。イザキと小銭のどっしりと重めのリズムに乗せて、岩下が歌詞の〈あなたと〉を連呼するパフォーマンスで場内を沸かす。

「1234123」と叫んで始まった7拍子の“湯きり少女とイクツかの妄想”では変拍子のリズムで遊び尽くし、平沢のヴォーカルから始まる“町の変態”では一見淡々と、しかし情感たっぷりに平沢の学生時代の思い出を歌い上げていく。曲の終わりが近付くにつれ徐々にカーテンが閉まっていき、足早に9曲をパフォーマンスした〈第1部〉がここで終了する。

しばしの休憩ののち、〈ちくちく、ちくちく〉の声とともに〈第2部〉がスタート。全員が衣装替えをし、狭いお立ち台に4人が乗って“A”をパフォーマンス。岩下が矢継ぎ早にラップをしながらメンバーをそれぞれ紹介していく。そのまま「不定期大演奏会第2部へようこそ!」の掛け声と同時に“おいしい水”が始まり、4人はこの日一番のド派手パフォーマンス。オーディエンスはこれに応えるように〈お湯~! お湯~!〉という歌詞に合わせて手を伸ばしたり、サビで手を振ったりと大忙し。音の洪水はそのままヒット・ナンバー“ただし、BGM”へ。〈ばばあ〉が踊る楽曲は、回るミラーボールとともに恵比寿LIQUIDROOMを異様なダンスホールへと変えていく。

本編ラストは、曲中で〈この曲は18分やります〉と紹介のあった“かわきもの”。本来5拍子のこの曲は、ライヴでは曲中に5拍子と4拍子とを入れ替えてみせたり、演歌調など他ジャンルを織り交ぜたりするのがお馴染みだが、今回は〈青春パンク〉と〈ボサノヴァ〉、そして〈オシャレヒップホップ〉のちゃんぽんにチャレンジ。岩下の指示に従い、イザキのベースと小銭のドラムスが拍子や曲調を縦横無尽に変えていく。曲にノリながら岩下は「このように音楽はどのジャンルもカッコいい。音楽って素晴らしい」「どのライヴハウスも楽しいから、(東京・東高円寺)UFO CLUBとかも行ってみよう」「これからも音楽をよろしくお願いします」と冗談交じりに客席に訴えかけていく。轟音に包まれながら盛り上がりも最高潮になったところで、後ろを向いて「ありがとう」と一言だけ言い、そのまま舞台を去っていく岩下。演奏が終わり、平沢が「第2部でした~」と言うと残る3人も舞台を去っていく。

 

鳴りやまないアンコールに応えて4人が三たび登場すると「常連さんには周知の事実ですが、アンコールはみんなで作ります」と岩下。しかし「ちょっと盛り上がりすぎなので一回クールダウンしましょう。バンドマンあるあるで新曲をやると盛り下がるんですよね」と続けると、いきなり未発表の新曲をパフォーマンス。岩下と平沢がサンプラーを駆使して摩訶不思議なサウンドを鳴らしつつも、ニガミらしいダンサブルさとオシャレさも忘れていない新機軸の楽曲だ。ちなみに、この曲は来年1月にMVが公開される予定だそうだ。

「さあ盛り下がったところでやりますか」と改めて岩下が言うと、客席には歌詞の書かれたホワイトボードを、メンバーには同じ内容の書かれた紙をそれぞれ見せ、それらを元にみんなで作り上げるメドレーについて説明をしていく。“おいしい水”“化けるレコード”“ただし、BGM”“ゴーゴーエアロバイク”“ねこ子”などの曲を何度も行き来しながら、途中〈Twitter上での合唱〉〈上手側・下手側・関係者席に分かれてのフー!〉などを行うメドレーのルールを説明。観客と同様にその場で指示を聞かされた平沢、イザキ、小銭は頭を抱えながらも、超難解なメドレーがスタートする。盛り上がりと〈???〉が行ったり来たりしながら、途中、感極まった小銭が「LIQUIDROOMでワンマンできるようになりました~!」と叫んだり、岩下がイザキにピッタリの職業として「オン・ブライダルアドバイザー、イザキタツル」と紹介してベール・ソロへと導いたりしながら、メドレーは無事に進行していき、最後は大盛り上がりのまま観客全員と記念撮影をしてゴール。長き長き不定期大演奏会は、こうして幕を閉じたのであった。


ニガミ17才 単独LIVE -2019-『不定期大演奏会』
2019年11月20日(水)東京・恵比寿LIQUIDROOM
セットリスト
1. テクノロジーの鬼
2. 化けるレコード
3. ゴーゴーエアロバイク
4. ねこ子
5. 生でんぱ
6. もつれ
7. あの娘かわいそうに
8. 湯きり少女とイクツかの妄想
9. 町の変態
~第1部終了~
10. A
11. おいしい水
12. ただし、BGM
13. かわきもの
~Encore~
14. 新曲
15. メドレー


LIVE INFORMATION
ニガミ17才全国対バンツアー 「ニガミ17才と。-2020-」
ゲストバンドを迎えた全国ツアーが2月から全国10会場で開催決定!
2020年2月15日(土)石川・金沢vanvan V4
2020年2月20日(木)大阪・心斎橋ANIMA
2020年2月24日(月)北海道・札幌SPiCE
2020年2月26日(水)宮城・仙台MACANA
2020年3月2日(月)広島・SECOND CRUTCH
2020年3月3日(火)愛知・池下CLUB UPSET
2020年3月7日(土)沖縄・那覇Output
2020年3月11日(水)高松・TOONICE
2020年3月13日(金)福岡・DRUM SON
2020年3月16日(月)東京・渋谷WWW-X
チケット発売日や対バンは後日順次発表