サキタハヂメ

道頓堀の人情喜劇を彩る、バラエティーに富んだ劇中曲集

 朝ドラ、お好きですか? 僕は好きです。すっかり毎朝のルーティンに組み込まれている感じなのですが、会社勤めだと丁度通勤時間にあたるのでなかなか見られないかも知れません。

 そんな朝ドラ、現在放映されているのは松竹新喜劇から映画、テレビで活躍した女優、浪花千栄子をモデルにした「おちょやん」。物語の主な舞台は華やかな歌舞音曲の世界です。

 さて、ドラマのストーリーや演出が面白いかは人気に大きく関わってくるのはもちろんですが、実はサウンドトラックも大きな影響を与えています。これまでを振り返ると音楽担当も数々のドラマで活躍する実力のある作家さん達が関わっています。

サキタハヂメ 『連続テレビ小説 おちょやん オリジナル・サウンドトラック』 VAP(2021)

 ここで今回の「おちょやん」の音楽に注目(注耳?)してみましょう。先に書いたとおり舞台は舞台や映画の世界。ま、華のエンタメ界ともいえますね。それだけに伝統的な芝居小屋の幕開けを連想させるものからラグタイムにロック。果てにはクレズマーまで飛び出すなど実に多彩です。なかでも(おそらく)朝ドラ史上最低のダメ親父演じるトータス松本の登場で使われる“くずヲヤヂ”での〈程よく歪んだギター〉+〈ミュート・トランペット〉+〈ミュージック・ソー〉のアンサンブルは絶品。トータス松本の(役柄の)ダメっぷりを何倍にも増幅していると言えるでしょう。そんな音楽を担当するのがサキタハヂメ。洋式ノコギリを奏でるミュージック・ソー演奏家として活躍していますが、すでにいくつものドラマや映像作品の音楽を担当しています。さらにウェブサイトを見てみると、沢山の創作楽器によるアンサンブルなど、とても面白い活動を展開していることがわかります。サキタのアイデンティティーでもあるミュージック・ソーもここぞ!といったシーンで効果的に登場して、視聴者の気持ちをまた盛り上げてくれます。

 最近では朝や昼に見逃しても見遁し配信で楽しめる朝ドラ。ちょっと音楽に注目してゆっくり楽しんでみるのはいかがでしょう。