ロンドンのカムデンを出自とするラッパーのファースト・アルバム。強烈なベースと音数を絞ったリズムが映えるサウンドは、グライム、レゲエ、UKドリルといった要素が巧みなモザイク画のように混じり合っている。歌詞の面ではジャマイカで生まれ育った父親に捧げた“Good Girl”や、終身刑に服している友人がテーマの“Burna Boy”など、個人的な事柄を扱ったものが多い。それらのトピックを通して歪な社会構造に批判的な眼差しを向けているのも本作の特徴だ。ノヴェリストを迎えた“Racists”では人種差別についてラップし、“Can't Breathe Either”は警察の横暴を題材にしている。みずからの生活だけでなく、生活の背景にある社会も視野に入れた深い批評眼は絶品。