東京と大阪のOL2人をテレパシーで繋ぎ、自身のことを〈深海魚的ディープなマニアックサウンドから童謡レベルのポピュラリティーまで振り幅日本一を自称する遠距離テレパシーユニット〉と表現する印象派。彼女たちのことを知ったのは津野米咲(赤い公園)が猛プッシュしていたのがきっかけだ。一度聴いてみれば、超強烈なインパクトを残すバキバキなデジタル・ロックあり、胸がしんみり・ほっこりするようなバラードあり、ちょっとバグっためちゃくちゃな歌詞や曲もありと、その振り幅の広さに驚かされるが、どの曲もキャッチーすぎるメロディーが印象に残る曲ばかり。まさに〈印象派〉な2人組だ。

そんな2人が、2018年から現在までに発表していた曲に新曲を加え、3年ぶり5作目のアルバム『スプートニク』を配信限定で発表。〈ザ・印象派〉な路線を更新した“WANNA”や、ほろっと泣ける“魔法”、ビートルズ風の“行列”など、今まで以上に作風の幅は広がったものの、7曲すべてがキラーチューン。久しぶりのリリースとなったのはコロナ禍以外にもさまざまな理由があったようで、miuとmicaをテレパシー(メール)で繋ぎ、インタビューを実施。各曲の制作過程を時系列に沿って訊いていく。

印象派 『スプートニク』 SPACE SHOWER MUSIC/DARKSIDE OF THE VOLCANIC GIRLS(2021)

『スプートニク』のティーザー映像

 

美味しいものに目がない女の子2人組

――印象派というユニットを初めて知る方も多いと思うので、どんなお2人がどんな役割分担をしているどんなユニットなのかを改めて教えていただけますでしょうか。

miu「メンバーは、キーボード/ヴォーカルのmicaとギター/ヴォーカルのmiuです。結成当初はおうちに2人で引きこもって音源を制作したりして遊んだりしていましたが、今はディレクター兼ベースの前田さん(前田栄達)、ギターのテッシー(手島誠二)と、ドラムのジョニーさん(戸渡ジョニー)とほぼバンドで活動してます。もはや印象派はバンドだと思ってます」

mica「たしかに今の印象派はバンドだね。始めた当初は、タイプの違う2人のツイン・ヴォーカル・ユニットって感じでした」

――2017年12月24日に大阪・梅田Shangri-Laで初のワンマン・ライブ〈印象派展 [one-man] Rhythm Prison〉が開催されまして、その時の〈お土産CD〉に収録されていたのが、本作収録曲“ダーリンナイツ(TRUE)”のデモ・ヴァージョン“ダーリンナイツ(2017Mix)”などでした。この曲は、あれから今作までに大幅に進化していますが、“ダーリンナイツ”はいつごろからある、どんな曲なのでしょうか? そして(TRUE)の意味は?

miu「〈お土産CD〉のことまで知っていただけてるなんて感激! “ダーリンナイツ”はアルバムのなかで最も古い作品で、今回のアルバムの為にリミックスしてあります。手の届かない恋に溺れて、伸ばした前髪で隠しながら目に涙を浮かべている友達の姿を見て、浮かんだ曲です。(TRUE)の意味は(2017Mix)が未完成な部分があったので、本物がやっと完成したよってことと、〈真実の愛〉的な意味もこめて(照)」

mica「“ダーリンナイツ”は印象派のなかでも、一番恋愛感情をストレートにぶつけてる曲じゃないかなあ。〈ダーリン〉とか今まで言ったことなさすぎて、歌うのちょっと恥ずかしかったです」

『スプートニク』収録曲“ダーリンナイツ(TRUE)”
 

――そして、〈印象派展 [one-man] Rhythm Prison〉のワンマンの東京公演(渋谷WWW)が2018年2月20日に開催される予定でしたが、miuさんのインフルエンザにより一度延期されて、同じ年の5月22日に振替公演が行われました。この時も〈お土産CD〉が付いてきて、“常温じゃない関係”と“行列”が収録されていました。ビートルズ・ライクな“行列”は今作にも収録されていましすが、いつごろ出来た、どんな曲なのでしょうか?

miu「その節はご迷惑をおかけしました! 印象派の曲で“玲乃と松子”(2016年、会場のみの限定販売のEP『LOVELETTER FROM KAMATA ep』収録)という、趣味は合わないけど、気の合う女の子2人組のことを歌ってる曲があるのですが、今回の“行列”はその続編のイメージで、玲乃と松子が美味しい行列店にわくわくしながら並んでいる曲です。当時は当たり前の幸せを思い浮かべたつもりが、コロナの今は非日常の光景になってしまいました。玲乃と松子はレノンとマッカートニーであり、どこかmicaちゃんと私を重ねた部分もあります。深く読み取れもするし、なんてことない日常(だった)のヒトコマとも言えるお気に入りの曲です」

『スプートニク』収録曲“行列”
 

mica「miuと私の唯一の共通点は、美味しいものに目がないというところ。特に遠方にライブに行く時は、その土地の人気店に行けるのが楽しみすぎて、そこを最優先に行動予定時間を決めたりするくらい。そんな2人が楽しみに行列店に並ぶのを想像しながら歌いました。そんな光景が非日常になってしまった今この曲を歌うと、少し切なくなります」